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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1997/05/01 朝日新聞朝刊
安保理改革5岐路の攻防 「常任理5増」の議長案提示
 
 日本の常任理事国入りがからむ国連安全保障理事会の改革は、実現へ大きく踏み出すのか、停滞を続けるのか、の岐路にある。ラザリ総会議長(マレーシア国連大使)による三月の包括的改革決議案提示は、国連作業部会での論議開始から四年目を迎え、「そろそろ決着を」という陣営の意向を代表していた。議長案は、新たに常任理事国に入る五カ国を来年二月末までに選挙で決める、と具体的日程と手続きを盛り込んだ点が画期的だった。これに対し、常任理事国の拡大に反対する国々の動きも活性化し、改革推進派との間で綱引きが続いている。議長案を軸にした政治交渉入りのめどは立たず、九月半ばの今会期末までの決着は極めて難しい情勢だ。
(ニューヨーク支局=佐藤和雄)
●目標は85%
 安保理改革作業部会の議長を兼ねるラザリ議長は四月二十一日、非政府団体主催の会合で「どの国も喜ぶ魔法の改革案というものはあり得ない。一九六五年の(非常任理事国数を増やした)改正では加盟国のうち八五%が支持した。その程度の支持が得られれば、承認されたと十分見なすことができる」と述べた。
 一部の国々との妥協は不可能であり、多数決での決着しかあり得ない、との判断を示す発言だ。現在の加盟国数は百八十五だから、「三十カ国弱の反対はやむを得ない」という勘定だ。
 この判断に立って、ラザリ議長は議長案提示前の一月から百六十五カ国の大使と個別に協議し、加盟国の大勢を探ってきた。全加盟国が加わる作業部会で積極的に発言する国は三割ほどしかない。「声なき大多数」と呼ばれてきた残りの国々の意見を初めてすくい上げた意味は大きい。「国連加盟国の大多数が感じていることを、正直に反映した色彩が強い」(小和田恒国連大使)の評価があるように、加盟国の意見の最大公約数をまとめた実績が議長案に一定の正統性を持たせる理由となっている。
 議長案のもう一つの特色は、加盟国の大半を占める途上国の大勢をにらみながら、常任理事国の主張も可能な限り入れようとした点にある。国連憲章の改正には、三分の二の加盟国による採択と、すべての常任理事国を含む三分の二の批准が必要となるからだ。
 焦点の一つ、拒否権の改廃について議長案は、常任理事国に自制を求める程度にとどめている。途上国から拒否権廃止を求める声が強いなか、常任理事国は拒否権改廃に反対する方針を鮮明にしているからだ。
 ただ、米国や日本も、議長案全体に完全に賛同しているわけではない。公表はされていないが、日本は安保理改革についての考え方をまとめた「日本提案」をつくり、各国へ働きかけている。ここでの理事国数は二十一カ国まで。米国と共同歩調を取っている。安保理の効率性に絡む問題だけに、決着に向けた政治交渉では、議席数の問題は深刻な対立点となりうる。
 それでも、日米や英国が前回の作業部会で議長による決議案の提示を基本的に評価したのは、提示が低迷している作業部会の論議の歩みを進め、決着に向けての動きを促す起爆剤になるとみているからだ。
●国益が前に
 議長案提示から十九日後、論議の後退につながる大きな揺り戻しが起きた。ニューデリーでの非同盟諸国の閣僚会議が、安保理改革に関する特別宣言に「安保理改革のための努力はいかなる押し付けられた時間的枠組みにも従うべきではない」と明記した。
 宣言の「時間的枠組み」が、来年二月の新常任理事国選挙など議長案に示された日程を意味するのは確かだ。国連加盟国の大方は「議長案へのけん制」(小和田氏)と受けとめている。
 宣言は、エジプト、インドネシアといった非同盟諸国陣営の有力国が中心となってまとめた。この背景には、新常任理事国選挙へ一気に進むと、「地域大国でありながら選挙で敗れれば、安保理改革で何の利益を受けないままに終わる、との恐れがあるからだ」(日本政府高官)という。
 議長案が加盟国の多数意見を可能な限り反映したものであるにもかかわらず、「予想以上に批判を招いた」(同)のは、新常任理事国の選定によって、冷戦後の国際社会で新しい政治地位が確立されるという思いを各国が持っているためだ。特に「国際社会で一定の実力がありながら、議長案では常任理事国になれない」グループは危機感を抱いている。
 有力候補とみられるドイツ、インド、ブラジルの常任理事国入りをそれぞれ阻止しようとするイタリア、パキスタン、メキシコの強硬反対派に加え、カナダ、スペイン、韓国はその典型だ。韓国国連代表部の高官は「韓国の本音は、南北朝鮮統一後に常任理事国の論議をしたい、ということだ」と明かす。
 改革をめぐる議論は、改革像が具体的になるほどに、自国の将来の利益を守ろうとする主張が強まる傾向にある。裏返せば、「常任理事国を増やすことが、安保理の機能強化につながり、いずれの加盟国にとっても利益になる」という確信を、実はそれぞれの国が持っていないことを示しているように見える。
○ラザリ議長案のポイント
  現状 改革後
常任理事国 米ロ英仏中の5カ国 先進国から2カ国、途上国から3カ国を加え計10カ国
非常任理事国 10カ国 4カ国を加え、計14カ国に
拒否権 実質的な案件に限る 新常任理事国は拒否権なし現常任理事国については平和への脅威や侵略行為への措置に限定するよう要請
 
 
 
 
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