日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/12/19 朝日新聞朝刊
新しい国連の顔と日本の課題(社説)
 
 国連の第七代事務総長に、十七日、ガーナ出身のコフィ・アナン氏が任命された。来年から五年間、二十一世紀にわたって国連を率いる重責である。
 安全保障理事会の選考では、米国が拒否権を発動して現職のブトロス・ガリ氏を引き降ろし、反発したフランスが対立候補を推すなど、大国の利害むきだしの駆け引きに終始した。こんごの選考では、少なくとも候補者が構想を競い、常任理事国の拒否権を制限するなどの改革が必要だ。
 だが、こうした経緯を、アナン氏への評価と混同してはなるまい。
 国連事務総長には三つの顔がある。第一は、一万四千人の職員を率いる行政官としての顔だ。国連に三十年以上勤務したアナン氏は、実務の手堅さには定評がある。初の生え抜き事務総長として、改革への手腕が期待されるゆえんだ。
 二つ目は、外交官としての顔である。大国の利害が衝突するときは、事務総長の調停や仲介が紛争抑止に重要な役割を果たす。この点でも、アナン氏は湾岸戦争やボスニア紛争で地道に実績を重ねてきた。
 三つ目は、政策立案者としての顔だ。将来の国連の理念を示し、加盟国の利害をさばき、束ねる指導者としての顔ともいえる。これこそ、アナン氏の資質が未知数な分野であり、問われる課題といえる。
 受諾にあたってアナン氏は、「私の最優先課題は、加盟国と共に、国連の目標を再定義することにある」と述べ、まず加盟国の信頼回復に全力を注ぐ決意を示した。
 ガリ氏の五年間は、冷戦後の「国連再生」への期待が大きく膨らみ、しぼむ過程でもあった。一時は十六地域に六万人以上の要員を展開した国連平和維持活動(PKO)は、財政難から行き詰まった。提唱したガリ氏自身、「平和執行活動」がいまの国連の能力を超えていると認めたように、武力行使の限界も明らかになった。
 貧困など紛争の芽を摘み、予防外交によって衝突を回避するのが最も現実的だ、というのが「ガリ時代」の総括だろう。
 だが、紛争が現に起きた場合、国連はどのような基準で、どこまで介入すべきか、いまだに指針は定まらない。大国も介入をためらい、人々が飢えや殺戮(さつりく)に直面するとき、国連は何をなすべきか、何ができるのか。その重い問いが、沈滞する国連に突き付けられている。
 アナン氏の課題は、十八日に国連加盟四十周年を迎えた日本の課題でもある。
 四十年前の国連総会で、重光葵(まもる)外相は憲法前文を引用しつつ、「東西のかけ橋」となって平和を希求する決意を宣言した。しかし、その後の「国連中心外交」で、日本がその初心を貫いてきたとは言いがたい。冷戦期には米国という大樹に寄り添い、冷戦後も理念や構想の発信より、「発言権」や地位の確保に力を注いできた。
 武力行使の限界が明らかになった今こそ、国連で果たすべき日本の役割は増している。東西に代わって南北の対立が顕在化しつつあるいま、米国追随から一歩踏み出して、もう一度、南北の「かけ橋」の自覚を新たにすべき時期が来ている。
 たとえば、出口の見えないアフリカの貧困をどう解決するのか。ガリ氏が残したアフリカ開発の特別計画を、構想倒れに終わらせてはなるまい。アフリカ出身の事務総長が続くうちに、日本が率先して取り組むべき課題のひとつだろう。
 一月から、日本は八度目の安保理非常任の座に就く。新事務総長と並んで、その真価を問われる日々が始まる。
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。








サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
85位
(28,647成果物中)

成果物アクセス数
133,730

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年3月25日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【北朝鮮について】
2.私はこう考える【中国について】
3.私はこう考える【ダム建設について】
4.私はこう考える【死刑廃止について】
5.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
6.私はこう考える【天皇制について】
7.私はこう考える【自衛隊について】
8.私はこう考える【憲法改正について】
9.私はこう考える【教育問題について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から