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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/02/03 朝日新聞朝刊
道のり険しい国連改革(96世界の潮流)
 
 安保理改革、財政改革、開発問題、平和問題、国連諸機関の見直し――。国連総会のもとに設けられた五つの作業部会が、一月中旬から本格的に動き始めた。創設五十周年を契機に、国連の機能強化に向けて包括的に見直そうという試みだ。冷戦後の新たな国際秩序を形づくる意味合いもある。日本の安保理常任理事国入りの行方も、作業部会での議論にかかっている。いずれも、九月初めの今総会会期末までに結論を出すことを目標としているが、安保理改革をはじめ各国の利害がからむため、合意までの道のりは険しい。
(ニューヨーク=佐藤和雄)
○財政危機 分担率見直しで攻防、PKO活動にも影響
 「良いニュースです。加盟国からの分担金支払いがありました」。ガリ事務総長のスポークスマンはこのところ、毎日のように記者会見で分担金支払い状況を取り上げ、メディアの関心を高めようとしている。加盟国からの分担金で成り立つ国連財政が、米国を始めとする主要国の未払いによって、大きく揺らいでいるからだ。
 平和維持活動(PKO)や戦争犯罪法廷を除く活動にあてられる通常予算の未払い額は、昨年末の時点で五億六千四百万ドル。加盟国が支払うべき額の約半分にものぼっている。
 国連事務局は、通常予算の収入不足を、PKO予算からの流用で補ったり、支払いの繰り延べでやり繰りしている。PKO予算からの流用は年末で約二億ドルにのぼり、物資や要員を提供している国への支払いが滞るという影響が出ている。
 途上国側の不満は強く、昨年暮れの総会では、PKOに要員を派遣している途上国から、事務局がPKO予算を勝手に流用できなくする決議案を出す動きもあった。「国連不信」を背景にした財政危機は、中心的活動であるPKO編成を難しくしつつあり、さらに国連への不信を強めるという悪循環をもたらす危険性も出ている。
 構造的とも言える財政危機をどう乗り越えるかが、財政改革作業部会でのテーマ。具体的には(1)未払いと滞納に対する罰則や、積極的に支払う国への特典などの支払い促進策(2)現行の分担率の見直し(3)国連税や債券の発行など独自収入策、が議論されている。
 このうち、独自収入策については、「加盟国が事務局へのコントロールを失う」との理由から米国など先進国が反発しており、実現性は乏しい。支払い促進策については、期間内に分担額を満額払った国には、金額を割引し、未払いについては、未払い金額について市場金利を課すという案が欧州などから出ている。
 複数年にわたる滞納に対しては、「滞納国」からは国連職員を採用しないとか、物資の調達を制限するなどの罰則が提案されている。これには国連本部を抱え、物資調達額の大きい米国が反対しており、加盟国全体の合意を前提としている財政改革では採用されるかどうか微妙だ。
 加盟国の利害に、より直接結び付くのが分担率の見直しだ。欧州連合(EU)の提案は、「能力に応じた支払い」を重視した具体的な数字を示しており、途上国などの負担が減る一方、日本の分担率は一九九七年で、現在決まっている一五・六五%から一七・七七%に跳ね上がる。
 日本は具体的な数字は示していないが、「能力に応じた支払い」だけでなく「責任に応じた支払い」という考えを導入するよう主張し、安保理常任理事国のPKO分担金の上乗せなどを求めている。
○開発・平和 手法で南北対立、原案の具体化が焦点
 「開発のための課題」作業部会は、国連の今後の包括的な開発戦略を論議している。一月上旬には報告書の原案が示されており、形のうえでは五つの作業部会の中で最も進んでいる。しかし、実際の議論は、途上国の発展段階に応じた開発手法が必要とする先進国側と、これを「途上国に対する分断策」とみる途上国側の間で対立が続いている。
 原案の段階では、日本政府が求めていた識字率など具体的な「開発指標」(数値目標)の導入は盛り込まれていない。さらに米国などが強く主張している開発関連機関の見直しも抽象的な表現にとどまっており、こうした問題をどこまで具体化できるかが焦点だ。
 「平和のための課題」作業部会は、国際社会の平和と安全を維持する手法として、(1)安保理決議による制裁(2)関係機関との調整(3)予防外交と平和創出(4)紛争終了後の平和建設、という四つのテーマを取り上げ、小グループに分かれて議論している。国連の平和維持機能を高めるうえで、それぞれ注目されている問題だが、具体策を検討する段階にまで至っていない。
○安保理問題 常任理入りは多難 日独、今期は無理の見方
 ドイツの常任理事国入りを阻止するため、常任理事国議席の増加そのものに反対するイタリア。それぞれの地域の代表となる常任理事国選びで意見が割れる途上国側。安保理改革をめぐる議論は、先進国、途上国ともに、改革を事実上先送りしようとする「消極派」が少なくない。
 さらに、日本政府などが調整能力を期待する米国は、米議会が主に国連の財政改革に関心をもっていることから、「大統領選のある今年は少なくとも安保理改革をまとめようという意欲は乏しい」(国連外交筋)とみられる。
 一日の作業部会で、日独は「次期総会会期中までに最終合意文書の採択」を提案したが、今年九月までの今総会会期中に結論を出すことは事実上不可能、と判断したことを示している。
 作業部会での議論はこれで四年目。「国連創設五十周年」という契機をもつ今総会で、これまでと同様の結果しか出なければ、「安保理改革議論が急速にしぼみ、うやむやになってしまう可能性がある」(同)状況だ。「期限設定」の提案には、そうした日本政府の危機感も反映されている。
 改革の内容については、安保理の議席を現在の十五から二十台前半まで増やすという意見が大勢となりつつある。しかし、増やす議席の内訳については(1)常任理事国だけ(2)常任、非常任ともに(3)新たな類型の非常任、などと分かれている。さらに、先進国、途上国をそれぞれにどうあてるか、意見は様々だ。
 一日の作業部会では、日本政府が示したような「議論のたたき台となる『交渉文書』を作成し、具体的な内容を交渉する段階に移すべきだ」との意見が、フランス、インド、オーストラリアなど「積極派」の国々から出た。
 今後の議論では、(1)最終合意文書採択の期限の設定(2)交渉文書をつくる起草委員会の設置、という合意づくりに向けた「手順」がまず焦点となる。総会に提出される最終合意文書(案)の採択期限が合意されれば、安保理改革は実現に大きく踏み出す可能性が出てくる。
<安保理改革の経緯>
1992年 12月 総会が「安保理議席の公平配分と拡大」に関する決議を採択し、93年6月末までに加盟国の意見提出を求める。
93年 7月 日本政府が「安保理でなしうる限りの責任を果たす用意がある」「理事国数を最大20前後まで拡大する」「95年をめどに結論をだすべきだ」との意見書を提出。
12月 総会が安保理改革を議論するための作業部会設立の決議を採択。
94年 3月 作業部会で波多野国連大使(当時)が「新たな政治的経済的グローバルパワーを常任理事国に加えるべきだ」「実効的機能を維持しつつ、非常任理事国の数を増やす」との考えを表明。
6月 作業部会で小和田国連大使が「安保理常任理事国としても、なしうる限りの責任を果たしていきたい」と述べ、常任理事国入りを目指す考えを明言。
9月 作業部会が報告書をまとめる。「理事国数は拡大されるべきだとの点では一致したが、範囲と性格についてはさらに議論が必要」として、具体的内容は先送りに。
9月 河野副総理・外相(当時)が総会で「多くの国々の賛同を得て、安保理常任理事国として責任を果たす用意があることを表明する」と演説。条件付きながら、常任理事国への積極姿勢を表明。
95年 2月 作業部会で小和田大使が「途上国を常任理事国に加えるという意見にも配慮する用意がある」と途上国の常任理事国入りを容認する考えを示す。また「国連創設50周年をひとつのめどに議論を収れんすべきだ」と述べる。
9月 作業部会が「安保理の能力と実効性をさらに強化し、代表性を向上させ、作業効率を改善させるような方法で安保理を拡大し、作業方法を見直すことで合意があった」と報告。安保理拡大の内容はまたも先送りに。
10月 国連創設50周年記念総会が、安保理拡大の必要性を示した記念宣言を採択。
96年 2月 作業部会が議論を再開。
 
 
 
 
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