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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/10/07 朝日新聞朝刊
国連活動阻む財政危機 PKOにも影響(95世界の潮流)
 
 創設五十周年を迎えた国連が、財政危機によって根本から揺さぶられている。九月十九日から始まった国連総会でも、「財政危機」という言葉が加盟国の代表らの口にのぼらない日はない。ガリ事務総長の頭の中は今、「財政のことだけでいっぱい」(事務局幹部)という。中心的活動である国連平和維持活動(PKO)にも影響を与えている。財政危機は、単に経費節減や事務合理化によって乗り切れるというものではなく、冷戦後の国連の活動をどのように位置付けるかという問題と表裏一体だ。国連に批判的意見の強い米国なども含め、加盟国が協力して新たな国連像を描かないと、この問題の抜本的解決はない。
(ニューヨーク=佐藤和雄)
○分担金未払い、予算払底 PKO費借用、しのぐ
 「今年八月で通常予算の財源がなくなってしまった。それを補うためにPKO予算から一億二千三百万ドルを借りている」。四日、国連で行財政問題を審議する第五委員会に出席したガリ事務総長は、財政危機の現状を訴えた。
 加盟国が分担金を払わないため、国連運営の通常予算が払底し、特別会計にあたるPKO予算から便宜的に借りざるをえなくなっている。PKO予算の方が潤沢にあるからではない。要員を派遣したり物資を調達した国への支払いを遅らせることでしのごうという手法だ。
 加盟国の専門家が事務局の予算案を査定する行財政問題諮問委員会のあるメンバーは「とてもまともな状態ではない」。国連事務局幹部も「通常予算はすでに破たんしている」と、異常事態を認める。
 財政危機は、「分担金の未払い問題」と言い換えてもよい。未払い額は、九月十五日の時点で総額約三十五億ドル。通常予算が八億四千七百五十万ドル、PKO予算が二十七億ドルだ。八月末までに通常予算の分担金を満額払った国は、加盟百八十五カ国のうち、三分の一の六十四カ国にすぎない。
 事務局の試算によると、現在の状態が続けば、PKO予算からの「借金」は十月末で二億ドル、十一月末には三億ドルへと雪だるま式にふくらむ。
 国連事務局は、未払いを続けている加盟国を督促するとともに、九月半ばに緊急対策として経費節減策を打ち出した。九月十二日、第五委員会に出席した行財政担当のコナー事務次長は、「事務総長は、経費節約のために緊急対策を取ることを決めた」と述べ、(1)新たな職員採用の凍結(2)残業、出張の厳しい制限(3)備品、設備の購入の停止(4)納入業者への支払い猶予、などの対策を説明した。
 国連本部のあるニューヨーク勤務の職員にこれまで月二回支払われていた給与を、月末の一回にするというものもある。月なかばに給与に充てられる一千五百万ドルをほかに回し、資金繰りを少しでも楽にしようという趣旨だ。
 職員の中からは「クレジットの支払い計画が狂ってしまう」という悲鳴も出ている。また、出張制限で、予定された会議や職員の派遣が中止になっており、財政危機によって国連の足腰は極めて弱くなっている。
 コナー氏とともに、国連の行財政問題の責任者である高須幸雄財務官(事務次長補)は、「十一月ごろまでは、これで何とかしのごうというもの。その時点で大口の分担金が見込めなければ、もっと大胆な方法を打ち出さなければならない」という。
○膨らむ対旧ユーゴ支出 「二重基準」と他地域不満
 財政危機は、国連の平和・安全保障活動の中心であるPKOに深刻な影を落としている。
 九月下旬、国連本部を訪れた河野洋平外相と会談したガリ事務総長が、まず切り出したのがその問題だった。「旧ユーゴスラビアのPKO活動だけで毎日五百万ドルを支出している。このため、他の地域での活動ができず、財政を圧迫しているだけでなく『道義的問題』となっている」
 旧ユーゴへの財政負担が大きいことから、リベリアやタジキスタンのPKOへの要員追加などが安保理で認められにくい状況になっていることを説明したうえで、こう付け加えた。「アフリカ諸国からは『国連はダブルスタンダード(二重基準)だ』との批判が出ている」
 ガリ事務総長の言葉には、国連が欧米で起きている問題には積極的に対応し、アフリカなどでの悲劇には目をつむっている現実へのいらだちが込められている。
 九月中旬、ガリ事務総長は、ボスニア・ヘルツェゴビナ問題について、米国主導の和平交渉の成功、失敗にかかわらず、ボスニアの国連保護軍(UNPROFOR)を撤退させ、北大西洋条約機構(NATO)主体の多国籍軍と入れ替えるよう安保理に勧告した。その理由のひとつには、PKO分担金未払い問題が挙げられている。
 国連がPKO要員を派遣したり、物資を調達している加盟国に対し、その費用の支払いを遅らせていることへの不満も強まっている。
 通常予算がPKO予算から借金している額も三億ドルを超えると、PKOの活動自体が危うくなるという。すでに、高須財務官のもとには、要員派遣をしている発展途上国などから「早く払ってくれ。さもないと、PKOから手を引かざるをえない」との申し出が連日のように来ている。
 ソマリア、ボスニア問題で見せたPKO活動の限界に、深刻な財政問題が加わる。
 「旧ユーゴの後は大型のPKOはもう出せなくなるのではないか」(国連外交筋)との声が強まりつつある。
○負担果たさぬ米に批判 冷戦後の役割、論議必要
 加盟国の分担金未払いが財政危機を起こしている最大の要因だが、その中でも米国の未払いの比重が極めて大きい。通常予算、PKO予算をあわせて九月十五日時点で約十五億ドル。未払い額全体の四割強を占めている。
 通常予算だけに限ると、米国は一九九五年の分担金を、十月から始まる新年度の予算で支払うことにしているために、もともと最短でも支払いが九カ月遅れる仕組みになっている。今年は、予算審議が大幅に遅れていることもあり、「いつ分担金が入るのか米国側は明言していない」(国連事務局幹部)という状態だ。
 二日の総会で演説に立ったインドネシアのアラタス外相は「国連史上最も厳しい財政危機が、創設五十周年に暗い影を投げかけている。ある主要国が負担義務を果たしていないことは、国連憲章に反するだけでなく、国連を破産の瀬戸際に追いやっている」と、米国を厳しく批判した。
 欧州諸国の演説でも財政危機を招いている米国に対する批判の声は強い。九月下旬、分担金一%以上を支払う十四カ国だけで、財政危機打開のための非公式協議が開かれた。その場でも、米国の未払いは多くの国から「ヤリ玉」にあげられたという。
 一方、米国は九月二十二日、オルブライト国連大使が事務局の機構整理、国連機関の統合など十項目の行財政改革案を発表した。
 国連への支出について、議会や米国民から理解を得るためには、国連を効率的にする努力が不可欠という考えからだ。こうした行革案をアピールしなければならないほど、米国議会の「国連不信」は強いと言える。
 財政問題は「米国問題」とも言えるが、国連内では「結局は、冷戦後の国連の役割についてビジョンが定まっていないことが大きい」との見方が強い。日本政府の国連担当者も「今後は、安保理など国連改革と結び付けて議論しないと解決しないのではないか」とみている。
<国連財政>
 国連の予算は、二年ごとの「通常予算」と、国連平和維持活動(PKO)にあてられる「PKO予算」の二つに分かれる。
 通常予算は、事務職員の給与などに使われるもので、一九九四―九五年予算は、約二十五億八千万ドル。九六―九七年予算は、今年の総会で承認される。通常予算の主な収入源は、加盟国の分担金。加盟国は、その支払い能力に応じて予算の分担率が決められており、最高で二五%、最低で〇・〇一%。
 PKO予算は、活動ごとに決定されており、九四年で約三十五億ドル。九五年では三十一億ドル規模の見込み。PKO予算の分担金は、通常予算の分担率がもとになるが、発展途上国は軽減され、安保理常任理事国はこの途上国の割引分を加えた分を支払う。
<国連の通常予算分担率>
(1995年、数字は%)
米国 25
日本 14
ドイツ 8.9
フランス 6.3
ロシア 5.7
英国 5.3
イタリア 4.8
カナダ 3.1
スペイン 2.2
その他 24.7
<分担金未払いの主な国>
(9月15日現在)
米国 15億5200万ドル
ロシア 5億8500万ドル
ウクライナ 2億3600万ドル
日本 1億8400万ドル
フランス 9400万ドル
イタリア 8800万ドル
英国 7900万ドル
ドイツ 6400万ドル
 
 
 
 
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