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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/06/28 朝日新聞朝刊
「希望」に現実の壁厚く 国連憲章誕生50周年(時時刻刻)
 
 国際連合憲章の調印五十周年を祝って米サンフランシスコで二十六日行われた記念式典は、「反国連」のテロを警戒する厳重な警備に囲まれて進められた。五十年前、連合国の代表が「国際協調」を訴えたオペラハウスの演壇で、クリントン米大統領は、国内で高まる孤立主義を批判することに演説の多くをさいた。冷戦後、国連への期待が高まったが、ソマリアでは平和執行部隊が失敗し、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争でも国連保護軍(UNPROFOR)が行き詰まっている。本来の主役であるブトロス・ガリ事務総長の影は薄かった。
(サンフランシスコ=上治信悟、杉本宏)
■テロを厳戒
 「調印式の会場は『ホープ』(希望)と理想主義の雰囲気に満ちていました」。記念式典に功労者として招かれたベティ・テスレンコさん(七二)は、五十年前を振り返った。テスレンコさんは国連憲章が調印された会場で速記者として働いていた。
 憲章を討議するためにやってきた連合国の代表には軍人もいた、という。戦争に疲れていた欧州の代表は灯火管制のないサンフランシスコの夜景、通りの雑踏に平和を実感した。市民は彼らを温かく迎え、サインをねだった。
 半世紀後の二十六日。記念式典の出席者は金属探知機を通り、持ち物を細かく調べられた。会場周辺の通りは、ほぼ全面通行止めになった。千人以上の警官やSPが市内のあちこちに動員され、一般市民は式典会場から約百メートル以内には近づけなかった。
 サンフランシスコ市警は四月に起きたオクラホマ州の米連邦政府ビル爆破事件後、警備を一層強化した。犯人との関係がとりざたされている武装民兵が、米連邦政府批判とともに「国連嫌い」を公言してはばからないためだ。
 米国民の間には「国連離れ」が強まっている。米タイムズミラー社が今月実施した世論調査によると、「米国は国連と緊密に協力すべきだ」と思っている米国人は一九九一年の湾岸戦争直後に比べて一七ポイント減って六二%。逆に、「協力すべきでない」は一三ポイント増えて三〇%に達した。
 こうした国民感情を意識して、式典の最後に登場したクリントン大統領はオクラホマの事件や日本のサリン事件に触れ、一国だけでは解決しにくいテロ対策を「国連の新しい課題の中で真っ先に取り組むべきものだ」と訴え、「国連に背を向けることは何の解決にもならない」と力説した。
■新提言なく
 ガリ事務総長も足並みをそろえた。式典後、別の場所で開かれた昼食会で五十周年に関する基調演説を行い、「遠くの問題は関係ないという声が強まっている」と懸念を表明し、「国連は各国が協力するための唯一の機構だ」と国連への協力を要請した。
 二十五日には、南アフリカのツツ大主教ら十一人のノーベル平和賞受賞者が国連の強化に向けて共同声明を発表し、平和な世界を実現するために「武器の生産と輸出を減らすことから始めよう」と呼びかけた。
 しかし、二十六日のガリ事務総長の演説には、国連が抱える課題への新しい提言はなかった。九二年六月に安全保障理事会への報告書「平和への課題」を提出し、「平和創造」の一環として軍事力の行使を打ち出したころの勢いは、今のガリ事務総長には感じられない。
 サンフランシスコ会議に出席していなかったポーランドを含め五十一カ国で発足した国連は、現在百八十五カ国に達し、世界中のほとんどの国が加盟している。
 冷戦後、国連の活性化を図った大国は「平和への課題」にそってソマリアとボスニアに軍隊を派遣した。多数の犠牲者を出したソマリアから撤退した現在、国連で最も大きな関心が持たれているのはボスニア問題だが、複雑な民族対立に有効に対処できない。
 式典に先立って会見したガリ事務総長は、国連保護軍の役割に触れ、「紛争当事者に平和への意思がない限り、国連は和平を達成できない。これが現実だ」と限界を率直に語った。
 記念式典の会場には、ボスニアの少女がいた。ズラータ・フィリポビッチさん(一四)。戦下につづった日記が出版され、「サラエボのアンネ・フランク」と呼ばれる。二年前に脱出し、現在難民として住んでいるパリから招待されてサンフランシスコにやってきた。
 「国連に何を期待しますか」と聞くと、彼女は即座に「戦争を止めてほしい」と「ホープ」という言葉を使い、英語で答えた。しかし、今の国連には彼女の願いを実現する能力はない。
 
 
 
 
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