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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/06/24 朝日新聞朝刊
国連半世紀、憲章に転機 安保理改組「同床異夢」(95世界の潮流)
 
 走りながら考える――。今の国連には、こんな表現がぴったりだ。国連平和維持活動(PKO)のあり方、安保理の構成、財政立て直し、さらには多くの専門機関のぜい肉落としなど、「改革」「見直し」といった言葉が飛び交っている。一九四五年六月二十六日、米国サンフランシスコに集まった連合国五十カ国の代表は、国際連合憲章に署名した。だが、人間も五十歳になれば、「ドック」での健診が欠かせない。百八十五カ国に膨れ上がった加盟国は、どこも改革の必要性は認めているが、その具体論になると、それぞれの利害がぶつかり合い、思うようには進まない。理想と現実とをどう調整するかが、改めて問われている。
(ニューヨーク=北山憲治)
○PKOも試行錯誤
 「このままだと、孫の代になっても話はまとまらないだろう」。メキシコのオレア国連大使はため息をついた。米国、英国、フランス、ロシア、中国の五常任理事国と十の非常任理事国で構成する安保理を、創設当時の四倍近くに加盟国が増えた国連の現状に沿って見直そう、という安保理改組作業のことだ。
 メキシコは最近、(1)日本とドイツを拒否権なしの準常任理事国とし、二年ごとに交代で安保理メンバーとする(2)非常任理事国の枠を四カ国増やし、安保理を全体で二十カ国に拡大する、と新たに提案した。しかし、日独がいい顔をしなかった。地域大国の一つとして常任理事国のいすを目指すブラジルも反発。同案は、同じ中南米でブラジルだけが特別な地位を得るのを阻む高等戦術、と国連関係者の多くは受け止めた。
 これは、一例に過ぎない。インドの常任理入りにはパキスタンが、ナイジェリアには周辺アフリカ諸国が、というように、各地域で反対やねたみがある。イタリアは、常任、非常任とは別に新たに「準常任」という枠を設け、日独などとともに自分も加わることを狙っている。
 これに、もっと大きな先進国側と途上国側の思惑の違いがぶつかり合う。欧米などは既得権は維持しつつ、財政負担の少ない「効率的な国連」を夢見る。一方、途上国側は自分たちの数に見合った「民主的な国連」を思い描く。拒否権の取り扱いだけでなく、国連機関の見直しなどでもこの違いは浮かび上がる。
 つまり、「国連改革」という一つのことばの裏側には、異なったさまざまな思惑が同居しているのだ。ある国連職員は「同床異夢だ」と表現する。
 作業部会は、秋の国連創設五十周年記念総会を控えた九月中旬までに報告書を提出するが、「安保理の拡大」だけに合意した昨年の報告書から果たしてどれだけ前進できるのか。同部会の副議長、タイのピブソングラム大使は「手間ひまをかけるほど田畑は美しくなる、ということわざがタイにはある」と、作業の長期化を示唆する。
 一方、PKOも試行錯誤を繰り返している。武力による平和づくりにまで踏み込んだ「平和執行部隊」がソマリアで挫折した後、ガリ事務総長は昨秋、「経済、社会開発の促進が国連の最大の使命だ」と、「路線転換」を示唆した。だが、最近のボスニア・ヘルツェゴビナへの緊急対応部隊の投入などが示す通り、PKOは再び新たな領域を模索している。
 気になるのは、これが完全な欧米主導で行われたことだ。国連がやったのは、同部隊の身分を安保理で事後承認し、「PKO」のレッテルを張ったことぐらいだ。欧米主要国と常任理事国が重なり合う現状では当然かもしれないが、最も緊急かつ大切なことは国連以外の場でまず決まることを、他の加盟国は改めて思い知らされた。
 セルビア人勢力を空爆するよう国連に繰り返し圧力をかけ、その結果、状況が悪化しても、PKO予算の追加負担には応じようとしない「身勝手な米国」に対する批判はある。だが、そんな米国がイエスといわなければ何も決まらないのも今の国連の現実だ。
○加盟増に伴い4条項を改正 「旧敵国条項」を削除へ
 国連の目的と機構を定めた国連憲章は、前文と百十一条の本文からなる。改正にはまず、総会が三分の二以上の多数で採択し、その後五常任理事国のすべてを含む加盟国の三分の二以上が批准することが必要だ。
 憲章改正は、一九六〇年―七〇年代に四つの条項について行われている。六五年発効の改正では安全保障理事会の理事国が十一カ国から十五カ国に、経済社会理事会の理事国が十八カ国から二十七カ国に増えた。旧植民地の独立で加盟国が増え、途上国の拡大要求にこたえたものだ。経済社会理事会の理事国数は、七三年発効の改正で五十四カ国に増えた。
 国連創設五十周年に向けた改革論議のうち、憲章改正にかかわるものは、主として安保理改革だ。
 この改革は、国連総会が設置を決めた作業部会で話し合われている。加盟国が自由に参加でき、九月半ばまでに報告書を出すことになっている。日独を常任理事国に加えることへの反対はほとんどないが、第三世界の国を常任理事国に加えるか、非常任理事国の数をどうするか、まだまとまっておらず、報告書の中身も固まっていない。
 安保理改革のほかに、日独伊など第二次大戦の敗戦国への武力行使などを容認した「旧敵国条項」の削除も議論されている。国連の憲章特別委員会は今年三月、その削除を今秋の第五十回総会に勧告することを決めており、総会で採択されることは確実だ。
(ニューヨーク=上治信悟)
<国連の歩み>
1945年   6月26日、サンフランシスコで国連憲章調印(50カ国)
10月24日に発効。原加盟51カ国
50年 6月 朝鮮戦争勃発。米国主導の国連軍が介入
52. 6 日本、加盟申請。ソ連の拒否権行使で否決
56. 12 日本が加盟
60.   「アフリカの年」。17カ国が独立。加盟100カ国に
71. 10 中国、常任理事国入り。台湾追放
90. 8 イラク、クウェート侵攻
11 安保理、対イラク武力容認決議、多国籍軍が展開へ
91. 12 ソ連崩壊。国連での地位をロシアが継承
92. 1 ガリ事務総長就任(第6代)=似顔
2 旧ユーゴスラビア紛争で国連保護軍設置
3 国連カンボジア暫定行政機構発足。日本はPKOに自衛隊を初めて派遣
93. 5 第2次国連ソマリア活動開始。武力で強制措置をとれる初の平和執行部隊に
94. 1 安保理改革の作業部会が初会合
9 日本、総会で安保理常任理事国入りの意思を表明
12 総会で日独伊などを対象にした憲章の「旧敵国条項」削除に向けた決議を採択
12 パラオの加盟で185カ国に
95. 1 ガリ事務総長、平和執行を断念
●設立時の理念、今も健在
 コロンビア大上級研究員 ロバート・イマーマン氏に聞く
 国連がこれまでに果たした役割をどう評価し、これからどのような課題に取り組むべきか。憲章改正の問題や日本のかかわり方も含めて、米国の国連研究の第一人者にきいた。
(ニューヨーク=上治信悟)
《普遍性》
 国連は、第二次大戦をともに戦った連合国が、戦後も協力を続けるという考え方に基づいてできた。しかし、すぐに冷戦が始まり、うまくいかなくなった。
 それでも、安全保障理事会で論議を戦わせたりすることで、紛争が地域外に拡大することを防いできた。中東紛争や、インドとパキスタンの紛争がそうだ。
 第二に、経済、社会問題について、最低水準を設定し、国際的な合意を得ることに役立ってきた。第三に旧植民地の独立を助けてきた。国連開発計画(UNDP)や国連児童基金(UNICEF)などの機関がなければ、冷戦下での独立国への移行はもっと困難だっただろう。
 今、振り返ってみても、国連憲章は驚くべき文書だ。社会の発展、人権などについて語っているが、いずれも現在の世界が直面している問題だ。
《改正のポイント》
 しかし、安保理と経済社会理事会に関しては憲章の改正が必要だ。安保理には日独と途上国を含む数カ国を(常任理事国に)加えるべきだ。ただ、日独以外の国については合意が難しく、改正には十年かかるのではないか。経済社会理事会は経済と社会の二つの理事会に分割すべきかもしれない。今のままでは大きすぎて、非効率だ。これからの国連は、平和維持に現実的な仕組みを持つべきだ。調停者、平和の創造者として、国連事務総長の役割も強化しなくてはならない。
《加盟国の責任》
 国連は加盟国の意思で動く一つのメカニズムであり、システムだ。加盟国から離れた独立体ではない。だから、米国人が「国連はボスニアで何をしているんだ」というのには腹が立つ。米国は(ボスニアに関する)国連決議に賛成している。国連のしていることに、米国も責任がある。
 「日本はどんな貢献ができるのか」「国連は日本に何を求めているか」というのもばかげた質問だ。日本は国連の一部であり、第二の分担金拠出国として、国連が日本に求めることを自ら決めることができる。
 日本が常任理事国になりたいのなら、日本政府は安保理や憲章改正についても立場を明らかにすべきだ。そして、日本国内の論議をもっと高めるべきだ。第二の経済大国が世界秩序の形成に役立てなければ、ほかにどの国ができるのか。日本はこれまで武器管理や軍縮の面では秩序を作ろうとしてきたが、世界のあり方と日本の役割という大きな絵が描けていない。
 
 在日米大使館に通算十五年間、国連米代表部に通算七年間勤務し、一九八九年、国連代表部の政治担当公使からコロンビア大学に移る。多国間外交、日米関係、日本外交史が専門。六十二歳。
 
 
 
 
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