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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/09/11 朝日新聞朝刊
安保理で何をするのか 「戦後50年 明日を求めて」(社説)
 
 「国連における義務として、国際紛争の場合の、国連軍への協力の問題がある。しかし、これについての日本の態度ははっきりしている。・・・軍事的協力はことわることができるのである」
 これは、日本が安全保障理事会の常任理事国となる場合の条件をめぐる、最近の政府・与党の見解ではない。
 一九五六年十二月、日本は鳩山内閣のもとで、八十番目の加盟国として国連入りを果たした。国をあげて国際社会への復帰にわく中で、吉田茂元首相が新聞に寄せた談話の一部である。
 当時と今日では、国際情勢はもちろん、国連の状況や日本を取り巻く環境など、あらゆる条件が異なる。けれども、日本の針路と国際社会の一員としての責任をどう調和させるかは、いつの時代も変わらぬ命題であることを、この談話は示している。
○国連は国際社会の「鏡」
 日本の戦後五十年にあたる来年、二つの大戦への反省から生まれた国連も創設五十周年という節目を迎える。
 この半世紀、日本は敗戦の荒廃から平和国家として立ち直り、米国に次ぐ経済大国になった。世界一の援助国ともなった。
 一方、戦勝五十一カ国で出発した国連はといえば、東西の冷戦や朝鮮戦争、ベトナム戦争などの試練をくぐり抜けて、いまや加盟百八十四カ国を数える巨大機構にまで膨れあがった。
 国連は「国際社会を映しだす鏡」だといわれる。
 米ソが世界を二分して角突き合わせた冷戦たけなわの時代、安保理は有効に機能しなかった。どんな地域で起こる紛争にも冷戦が影を落とし、五つの常任理事国がもつ拒否権の応酬で、安保理としての意思決定ができなかったからだ。
 国連加盟を果たした翌年、日本が安保理の非常任理事国に立候補して当選したのはそんな時代だった。ときの松平康東国連大使は安保理での第一声として、「拒否権の過度の行使を抑える手段と方法」の研究や、「交渉その他の平和的手段による解決」を呼びかけている。
 国連加盟と前後してアジア・アフリカ(AA)グループの一員に迎えられ、世界の孤児でなくなったことを喜んでいた日本の視角がどのあたりにあったかを示す。
 いま、冷戦は終わり、国際社会の姿は大きく変わった。国連の役割、期待される機能も様変わりしつつある。
○紛争の根源に目を
 米国とロシアの協調で、安保理での意思決定が円滑に進むようになった。唯一の軍事超大国となった米国が、一国で世界の警察官としての重荷を背負うより、国連を活用し、日欧などとの協調で問題解決を図ろうという姿勢に転じたことも、重要な要素といえる。
 そんな時期に登場したブトロス・ガリ事務総長は、大国の力を背景に、頻発する地域紛争に積極介入するのと並行して、国連改革に乗り出した。日本やドイツの常任理事国入りがとりざたされている安保理改組問題は、その中核をなすものだ。
 だが、国連改革は、単に安保理のメンバーを増やす、といった問題にはとどまらない。まして、日本が常任理事国になるかどうかだけの問題ではない。加盟国の八割をしめる南の諸国が求める国連の民主化、経済社会理事会の強化なども課題だ。
 ロンドン大学のロナルド・ドーア教授は、国連がここ二年ほどの間にソマリアや旧ユーゴスラビアで苦い経験を積み、「その意欲と、これを実現するために加盟国が提供する人的・資金的資源とのギャップがはっきりしてきた」と指摘している。
 それは、最近の国連路線への懐疑といってもいい。遠回しにみえても、国連はあくまで紛争の一方の当事者になるのを避け、伝統的な平和維持活動(PKO)や和平の仲介、紛争や社会不安のもととなる貧困や格差の問題に、もっと目を向けるべきではないか、というのである。
 そうした中で、自民、社会、新党さきがけの連立与党三党が九日、河野洋平副総理・外相が今月下旬に行う国連演説の内容について合意事項をまとめた。
 (1)環境や貧困、人権などの地球的課題や冷戦後の国際情勢に的確に対処するため、抜本的な国連改革のイニシアチブをとる(2)被爆体験や非核三原則をもつ国として核、通常兵器の軍縮、軍備管理に努力する(3)憲法の理念に基づいて、武力行使を目的とする軍事行動には参加できないことを明確にする、といった内容だ。
 妥当な主張だと思う。問題は実行である。だれの目にも明らかな形でこれを貫けるならば、安保理問題についての国民の不安はいくらか解消されよう。
 大事なことは、日本が常任理事国としてなにに取り組みたいのか、それによって増す影響力をどう生かし、どういう国連にしたいのか、ということである。
 世界が抱える難題に大量破壊兵器の拡散、途上国への武器拡散がある。実は、核クラブでもある現在の五常任理事国こそ、そうした問題の一番の震源地なのだ。
 日本がそこに加わることに意義があるとするならば、核兵器や武器輸出について、五カ国とは対極にある国家がその一員となり、安保理の判断や行動に、冷戦後にふさわしい新しい「血」を注ぎ込むことだろう。それができるかどうかが、いままさに問われている。
 村山富市首相のさきの歴訪を機に、東南アジアの首脳らから常任理事国入り支持の発言が続いた。だが、過去の歴史が最も微妙に尾を引く韓国や中国の沈黙も、しっかり見すえておかなければならない。
○日本の持ち味を生かせ
 最近の外交誌で、シンガポール外務省の局長が、日本ならではの持ち味を国連や国際社会で活用すべきだ、と指摘している。先任の常任理事国との協調にきゅうきゅうとするような日本となるならば、「アジアの支持」をも裏切ることになろう。
 吉田元首相は、冒頭に引用した談話で、「戦争に賛成したものは少数」だったのに「いつの間にか戦争になってしまった」のは、なにより「言うべきことをはっきり言わない」政治家の責任だ、と語る。
 その上で、こう主張している。「国の政策を明らかにして、その線にそってハッキリした態度をとり、それで国連をひきいるだけの気概を持たなければならない」
 常任理事国になって、自らの国としての針路を貫けるかどうか。それは、日常の政治や外交に、それを支えていく信念と力があるかどうかという問題に返ってくる。
 十一日にはガリ事務総長が来日する。外相の国連演説と併せ、日本からのメッセージを発信する好機ととらえたい。
 
 
 
 
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