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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/02/16 朝日新聞朝刊
試練の「国連中心主義」 軍事強化説く事務総長来日(潮流・底流)
 
 国連のガリ事務総長が十五日来日した。昨年六月の報告書「平和への課題」で、ガリ氏は「国連憲章の偉大な目標を達成する機会が回復された」と書き「平和執行部隊(PEU)」の必要性を説いた。宮沢喜一首相との間で、国連の威信をかけたカンボジア和平の行方や「時代」に応じた軍事機能の強化について、意欲的な意見交換をすることになるだろう。日本外交の「国連中心主義」は、「ガリ構想」に象徴される国連の変化に、どう対応していくのだろうか。
(根本清樹)
●成果あがらぬPKO 「正邪」認定できる第7章復権したが
 「国連強化」のキーワードは「国連憲章第七章」である。このなかの第四二条は「平和への脅威」「平和の破壊」や「侵略行為」を、最終的には軍事行動で押さえ付けることができると定めている。第三九条は、国際社会にとって「悪」はだれなのかを認定する権限を、国連に与えている。ガリ氏はこれを、戦前の国際連盟規約にはなかった国連の「神髄」ととらえる。
 冷戦の下で「第七章」が実質的な空文だった時代が、長く続いた。東西対立を背景に起きた紛争に対して、安保理理事国の一致した行動がとりにくかったためだ。世界各地で今展開されている国連平和維持活動(PKO)は、いわば、その穴を埋めるために生み出されたものだが、ここでも国連は基本的に「中立」。「正邪」の決定権も「制裁」を加える権限もない。
 事態は、確かに変わった。冷戦秩序の崩壊を狙ったようにして起きた一九九〇年の湾岸危機に際して、安全保障理事会はソ連が共同提案国になって「第七章」に基づく対イラク武力行使容認を決議し、多国籍軍の行動に法的根拠を与えた。国連の軍事措置容認は五〇年の朝鮮戦争以来。これを機に「第七章」が息を吹き返した。
 昨年十二月、ソマリアへの多国籍軍派遣を決めた安保理決議は、「第七章」に基づく「あらゆる手段」を承認した。八月のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に関する武力行使容認決議も同様だ。ガリ氏が提唱したPEUも、第四〇条によって「正当化される」となっている。
 「米ソによる秩序」に代わる「国連による平和」。言葉は美しい。しかし、「第七章」を旗印に掲げるガリ氏の背後には、PKO活動が日本国内で華々しくけん伝されてきたほどには成果をあげられず、現実にはPEU構想をめぐっても関係国のさまざまな思惑が絡む。
●焦り見せる積極論者 首相「PEU構想の議論には参加するが」
 「国連」のありかたは、今国会の論議の焦点の一つである。ポル・ポト派の武装解除・総選挙参加拒否やプノンペン政権軍の軍事攻勢で不透明さを増すカンボジアPKO、自衛隊の撤収問題、そして「平和の課題」。ガリ氏はその真っただ中に乗り込んできた。
 宮沢首相は十五日の衆院予算委員会で、PEU構想をめぐる国連の議論には「参画するが、支持するかどうかは結論いかんだ」と語った。国連の機能強化を国際的に検討することは必要だ。しかし、海外での武力行使を目的にした自衛隊の派遣は、憲法を守る立場から、決して容認できないという判断が、宮沢氏のきわめて慎重な姿勢ににじんでいる。実際、PEUがもし現実のものとなれば、武力行使が武力行使を呼ぶ可能性がある。
 だが、政府・自民党内には渡辺美智雄副総理・外相に代表される積極論がある。現行法での平和維持軍(PKF)への参加凍結が「世界からの一周遅れ」だとすれば、現実にPEUが誕生し「第七章」が本格的に機能し始めたときには、いわば「二周以上」の遅れになるという論法である。日本の「国際貢献」に対する基本姿勢を、国連や諸外国に疑わせるような消極的態度はとるべきでないというのだ。
 積極論には、日本政府の年来の願望である安保理常任理事国入りと「旧敵国条項」廃止という憲章の改正問題が、複雑に絡んでいる。渡辺外相は「日本の国連予算の分担率は、一位の米国に次ぎ、常任理事国の英仏の合計より多い。憲章が日本とドイツに差別待遇あるべし、と書いてあるのは時代に合わない」という。新しい任務を帯びた国連で、日本の発言力を高めるには、軍事面でもそれなりの「貢献」をするのは当然という認識だ。
●非軍事の貢献を訴え 国連の変革望む事務総長に政府期待
 ガリ氏は訪日前に行った朝日新聞記者とのインタビューで、日本の貢献への熱い思いを述べた。日本に改憲を促す考えはないし、PKFへの参加が安保理常任理事国入りの条件にはならないとも語ったが、ガリ氏の気持ちが、日本にとって可能なあらゆる面での「参加」の拡大にあることは間違いなさそうだ。
 日本の国情を必ずしもよく知らないガリ氏の発言は、首相官邸や外務省内に不快感さえ生んだが、その一方で、日本政府は、ガリ氏の「国連改革」の主張に期待を寄せてもいる。
 米外交誌「フォーリン・アフェアーズ」に寄稿した最近の論文のなかで、ガリ氏は、従来の国連の様子をこう描写した。「各国代表はレトリックを多用し、立場を優位にしたり、国威を発揚するために、あらゆる権謀術数を繰り広げてきた」し、国連には「いまだに『中世的』な時代遅れの部分も存在する」。国連のこうした「文化」と「機構」を変革していかなければならないというのだ。
 確かに「国連は米国の持ち物か」といった批判が加盟諸国にくすぶっているし、南北問題への取り組みをはじめ、国連が世界の秩序の変化に十分対応していないという声もある。財政難は深刻だ。
 国連の機構改革といっても、五つの常任理事国(P5)はいずれも第二次世界大戦の戦勝国。米新政権が日独を常任理事国にすることに前向きな姿勢を示しているとはいえ、P5が拒否権をはじめとする「既得権」を、そう簡単に手放すことはあるまいとの見方は根強い。だが、加盟国の多数を占める発展途上国から、国連の「民主化」を求める声は強まっており、政府は国際世論の熟成を慎重に待つ姿勢だ。
 政府は、ガリ氏との意見交換で、非軍事分野を前面に出した「包括的な国連強化」について、改めて訴えたいとしている。環境、人口、貧困といった地球規模の課題への取り組みが、広い意味での「紛争予防」になるという日本独自の発想からだ。
 もっとも、現実に各地の紛争対応に追われ「PKO疲れ」さえ指摘されるいまの国連が、どれだけの優先順位で耳を貸すのかは微妙なところだ。
◆国連憲章第七章(平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動)
第三九条
 安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第四十一条及び第四十二条に従っていかなる措置をとるかを決定する。
第四〇条
 事態の悪化を防ぐため、第三十九条の規定により勧告をし、又は措置を決定する前に、安全保障理事会は、必要又は望ましいと認める暫定措置に従うように関係当事者に要請することができる。(中略)安全保障理事会は、関係当事者がこの暫定措置に従わなかったときは、そのことに妥当な考慮を払わなければならない。
第四二条
 安全保障理事会は、第四十一条(経済制裁など)に定める措置では不十分であろうと認め、又は不十分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。(後略)
 
 
 
 
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