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1992/10/26 朝日新聞朝刊
クリントン氏とガリ総長の共通の知恵袋(国連物語:22)
今夏、米国のある研究機関誌に掲載された外交政策に関する論文が、国連関係者の注目を集めた。
「実際的な国際主義−米国と集団安全保障」。注目されたのは、ガリ事務総長が今年6月に提出した国連の改革案「平和への課題」と、構想が酷似していたためだ。「ガリ報告の草案と同じ筆者ではないか」。そんな憶測が駆けめぐった。
マンハッタンの法律事務所で、筆者に会った。コロンビア大のリチャード・ガードナー教授。「私が草案を書いたと言われるのは心外」と話すが、ガリ報告の作成過程で議論に参画し、その結果教授の構想がかなり採用されたことは認める。「ガリ事務総長とは、彼がカイロ大の教授だった時代からの学者仲間。つきあいは30年になります」
ガードナー教授は論文の中で、「予防外交」と「平和創設」活動の意義を強調している。さらに、国連憲章第43条に基づく交渉で「国連緊急展開部隊」を作り、紛争が起きる前に国境沿いに部隊を事前展開し、侵略があった場合には武力による「平和実施」を行うよう提唱した。「地域機関との連携」を含め、提言の骨子は、ガリ報告にほぼ正確に反映されている。
もう一つ、ガードナー教授の論文が注目された理由がある。同教授が、民主党の大統領候補クリントン氏の外交顧問であるからだ。
民主党のケネディ、ジョンソン政権時代に国務次官補代理、カーター政権時代にイタリア大使を務めた。学者と外交官の両方に幅広い人脈をもち、国連政策での発言には重みがある。
今年4月、ニューヨークの外交政策協議会で行った講演で、クリントン候補は、「日本とドイツを常任理事国に」と提唱した。この提案は、緊急展開部隊と並んでガードナー教授が進言し、同候補が政策に採用した。
「安保理の構成は、いずれ提起されるべき問題だ。もし日本が常任理事国になろうとするなら、多くの国は、日本が緊急展開部隊を提供することを期待するだろう。責任なしに力を持つことはできない。責任と力はいつも一つだ」
ガリ事務総長とクリントン候補。2人の有力人物を結ぶ知恵袋のガードナー教授はそう語る。
大統領選投票日まで、あと8日。優勢を伝えられるクリントン候補が当選すれば、米国の国連政策には大きな変化が起きそうだ。安保理の構成と緊急展開部隊。その2つは、1つのコインの両面として、日本に示される可能性がある。
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