国連行革に取り組むガリ事務総長の命令一下で、3つあった経済社会関係の事務次長ポストが1つに統合された。イスを失うことになったブランカ事務次長(当時)の事務方の多くは、その朝、ボスのジュネーブ転任を知り、オフィスの即時撤収に追われた。
6月にブラジルで開催された国連地球サミットを契機に、南側諸国の間で、南北問題の政治的優先順位を高めようとする機運が強まった。だが財政難を抱える国連は、20年前の「国連人間環境会議」後、国連環境計画(UNEP)を新設したようには、大幅増員できない。
むしろ、事務次長ポストの統合に代表されるように、環境・開発を担当する経済社会部門の行革を断行してきた。南側諸国内では「軍事的安全保障部門より、経済社会部門削減に傾いている」との不満がくすぶるが、ガリ事務総長は手をゆるめる気配はない。
ガリ事務総長には、もうひとつ宿題がある。地球サミットで合意した行動計画「アジェンダ21」の実施を見守る「持続可能な開発委員会」(CSD)設置だ。10月末にも報告書を作成する予定だが、主要国の意見対立が解けてない。
事務局の設置場所では、ジュネーブを推すフランスが、アフリカの仏語圏に支持を呼びかけているが、日本は「CSDは、ニューヨークにある経済社会理事会の事務局が支援すべきで、ジュネーブに持っていけば組織の重複になる」との立場。地球サミットの開催地・ブラジルは、「組織の大きなニューヨークでは、サミットの成果であるCSDが埋没してしまう」と懸念する。一方米国は、環境保護局がジュネーブ設置を支持、国務省内で意見が分かれているという。
国連抜きには、解決の糸口さえつかめない地球環境問題。だが地球サミット熱が鎮まるにつれ、今の国連には、問題をすべて背負い込めるほどの器量がないことも、はっきりしてきた。
そんな国連の「限界」を意識したのだろうか。地球サミットの事務局長をつとめたモーリス・ストロング氏は最近、国連開発計画(UNDP)の事務局長顧問職を快諾する一方で、地球サミットの合意事項の実行に目を光らせるスーパーNGO(非政府組織)、「地球評議会」の組織委員長を引き受けた。
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。