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1992/10/19 朝日新聞朝刊
懐に響くドルの力 出身国により泣き笑い(国連物語:16)
今年5月、国連事務局の職員報に、派手な見出しが躍った。「公式報告! われわれの給与は、世界で最低水準だ」
国際機関の手取り給与を比較した行政委員会の調査によると、国連本部職員に比べ、経済協力開発機構(OECD)は最高1.5倍、欧州共同体(EC)は1.3倍になるという。
実際にはどうか。勤続6年の日本人職員Nさん(41)に、先月の給与明細表を見せてもらった。額面は7733ドル。税金相当額、年金、保険料が引かれ、手取りは4566ドル。円換算すると、月収約55万7000円になる。ボーナスはないが、これに別枠の教育費補助を加え、年収はざっと770万円だ。
Nさんは妻と9歳の子供の3人家族。4年前にマンハッタンにアパートを購入し、給与の4割はローンや維持費に消える。交際費や交通費は出ない。
2年に1度、帰国するたびに、Nさんは憂うつになる。85年9月のプラザ合意前まで、1ドルは240円台。給与は円換算で、当時の半分まで目減りした。将来帰国を考えれば、老後の蓄えは十分ではない。
日本人だけではない。西欧諸国は軒並み、ドル建て給与の目減りに泣いた。
「ノーブルメア原則」という言葉がある。国連職員の給与は、「加盟国公務員の最高水準並み」という原則だ。加盟国で給与が最も高いのは常に米国。米国公務員の1割5分増の給与が、国連職員に支払われる。ドルの力がそのまま、職員の懐に響く仕組みだ。
だが、圧倒的にドルが強い途上国出身者にとっては夢のような高給だ。毎年、代表部から国連に転ずる外交官は後を絶たない。
出身国により給与の実感は違うが、勤務条件は厳しくない。専門職には個室が与えられ、遅刻や早退に気を使う必要もない。「雰囲気は自由業に近い。猛烈に働く人もいるが、ぬるま湯につかっていても昇進に響かない。国際公務員としての自覚があるかどうかが差になって出る」とNさん。
国連では、きびきびと働く女性が目立つ。給与に差別がなく、最近は優遇策で昇進にも有利になった。「日本で女性は、これだけの給与はもらえない。世界の動きを多面的に追えるのは魅力」と、人口部専門官の小野敬子さん(34)は目を輝かせる。
日本人職員は定員枠を大幅に下回る88人。最近女性が増え続け、今は38人。ここでもじわり、男性優位が崩れつつある。
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