27階には行政・管理担当の米国のソーンバーグ氏。レーガン、ブッシュ両政権で司法長官を務め、上院議員選に落選して国連にきた。31階には、これも米国のリード氏。「国連創設50周年記念行事担当」という仕事より、人に会う度に自分の名前入りのペンをプレゼントすることで知られる。ともにブッシュ大統領が押し込んだといわれている。
37階の政治局担当には、ソ連の外務次官だったペトロフスキー氏がいた。イズベスチヤ紙のコンドラショフ評論員によると「ロシア外務省では彼のポストがなかったので、国連で仕事をみつけた」。同じ階には英国のグールディングPKO担当。別棟12階には経済社会開発局担当の中国人ジイ氏。「ガリ氏が総長に立候補した時、中国がいち早く支持した論功人事」と見られている。そう、常任理事国ばかりだ。フランスも、ジイ氏とポストを争ったといわれるブランカ氏が結局、同じ次長職だがジュネーブの欧州本部事務局長になった。
日本は、次長にも次長補にも就いていない。「影響力あるポストに日本人がいないと日本人職員は昇進が遅くなる。我々だけでなく、日本外務省も損をする」と、日本人職員は言う。
国連で「人事はカフェテリアで」という言葉を聞く。根回しがモノをいうという意味だ。とくに幹部人事には各国の力が表れる。先進国はたいがい政府が送り込む。北欧などは、自国出身の職員を何年か外務省に入れハクをつけてから送り返す。自国の職員に国連の給与とは別に特別手当を出している国もある。ガリ氏は年次報告のなかで「出身国から補助金を受け取るのは受け入れ難い」と非難したが、効き目は薄い。「中立」が建前の国連だが、自国の職員がいれば有利だからだ。国連は生き馬の目を抜く所なのだ。
9月15日午後、瀬崎克己国連大使が転任のため帰国した。国連日本人職員の面倒見がよく慕われた人で、ニューヨーク・ケネディ空港には国連職員4人が見送った。大使は「がんばれよ」と言い残した。
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