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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/01/29 朝日新聞朝刊
「新時代」の国連を協議 31日、安保理首脳会議(92世界の鼓動)
 
 国連安全保障理事会(常任理事国5カ国、非常任理事国10カ国)の首脳会議が31日ニューヨークの国連本部で開かれる。国連史上初めてのこの会議では、平和維持・紛争防止のための国連の役割の強化、軍備管理などが主要議題になると見られ、これらを内容とする宣言(議長声明)が採択される見通しだ。この時期に安保理首脳会議が開催される意義は、ソ連が消滅するという国際情勢の歴史的展開を受け、東西冷戦終結後の世界について主要国が協議するという点にある。ソ連の常任理事国の議席を継承したロシアにとっては、事実上初の多国間外交の場だ。会議とは別に米国―ロシア、日本―ロシア、中国―ロシアなど様々な組み合わせで予定される2国間首脳会談も、注目される。
 安保理首脳会議をめぐって、安保理の機能と機構についての論議が国連の内外に巻き起こっている。冷戦後の国連の活動と世界の新秩序にも密接に関連するからである。論議の背景には首脳会議参加国を安保理メンバーに限ってしまい、他の151カ国をカヤの外に置いてよいのか、との反発がある。ドイツ、ブラジル、エジプト、ナイジェリアなど将来の安保理の常任理事国入りの候補と目される大国、地域中堅国、非同盟、第三世界諸国の間に特に反発が強い。
 その底流には、安保理の機構をめぐる現状の根本的な問題が横たわっている。
 第2次大戦の終了直前に戦勝国の手でできた国連の中枢である安保理は、5大戦勝国が常任理事国として拒否権という絶大な特権を持ち、その構図は発足以来ずっと変わらない。
 冷戦の解消で、安保理が本来の機能を回復したとされる。だが、「常任理事国の一致で決まってしまう第2次大戦直後に戻っただけ」との見方も少なくない。
 半世紀近い間に加盟国は当初の51から現在の166に増えた。第三世界諸国の興隆、敗戦国(敵国)だったドイツ、イタリア、日本の国力増大で状況は大きく変わった。
 公式、非公式に機構の改革案はいくつも出ている。イタリアのデミケリス外相やインドのソランキ外相は、常任、非常任の理事国定数の拡大を提案している。イタリアには英、仏を外して欧州共同体(EC=当然ドイツ、イタリアを含む)と日本を常任理事国にしたらよいとの案もある。
 拒否権を持たない常任理事国の新設、あるいは否決には現在のように1国ではなく2国の拒否権行使を必要とする制度に改める、などの提案もある。
 ただし、現在の常任理事国5カ国は現状変更には反対だ。ネコの首にどうやって鈴をつけるか、の問題に似てくるのである。
(ニューヨーク=川上洋一)
○エリツィン大統領、開かれた外交の印象付け狙う
 今回の安保理首脳会議出席は、エリツィン・ロシア大統領にとって、国際舞台へのデビューになる。この機会をとらえ、大統領は、ロシアがめざすのが民主国家であり、大幅な核軍縮と市場経済の確立を求めていることを強調、ソ連に代わった新生ロシアの開かれた外交を印象付けようと努めるだろう。
 今回ニューヨーク訪問に同行するロシア科学アカデミー米国・カナダ研究所のココシン副所長は、「ロシアは大幅な核兵器の削減をめざしている。戦術核の完全廃棄を支持するし、米との間の戦略兵器削減条約(START)以上の戦略核の削減を求めている」と述べた。削減と廃棄のプロセスを米とだけでなく、ほかの核保有国との間でも強化するよう望んでいると強調した。安保理常任理事国は核保有国であり、首脳会議は、エリツィン大統領にとって、対立の枠組みを解消させ、核軍縮での協力を訴える絶好の場になる。
 ロシアの国際通貨基金(IMF)加盟を進めるためにも、エリツィン大統領は、主要7カ国蔵相・中央銀行総裁会議(G7)メンバーの米、英、日などとの会談で、経済改革について理解を得るのに努めよう。
(モスクワ=島田博)
○「かやの外」 いらだつ独
 統一後ことあるごとに「より大きな国際的責任」を強調してきたドイツにとってメージャー英首相が提唱した安保理サミットの開催は寝耳に水だった。安保理メンバーではないドイツに参加資格はないものの、「事前に相談をしないのはEC共通外交の精神に反する」と、英国側に抗議した。英国がドイツをのけものにしたのは、独走を始めたドイツ外交に対する英国の「意趣返し」との見方もある。
 コール首相は、常任理事国入り問題について、繰り返し「ドイツは自ら求めない」としているが、今後、国連での地位向上を求める声が高まることは予想される。
(ボン=高木新)
○安保理決議の舞台裏 「全会一致」を求め 米・英・仏が“根回し”
 公開の議場で激しく敵陣営を非難し、審議がしばしば中断した冷戦当時とは違って、今の安保理は、ほとんどが舞台裏で作業を進めている。意思決定の過程を最近の「対リビア決議」(1月21日)を例に追って見ると――。
 提案国の米、英、仏は昨年暮れから決議案の準備に入った。年明けを待ったのは、今月から英国が持ち回りの議長国になるためだ。招集の時期や審議進行の手順など議長の裁量権限は極めて大きい。
 3カ国は今月初め、まず日本代表部に打診、日本は同意を伝えた。ベルギー、オーストリアからも賛同が得られた。ついでロシア連邦、中国、ハンガリー、最後に非同盟諸国に接触があった。米国が中心となって作成した3カ国草案を常任理事国で固め、非同盟に諮る、というかつての手順にも変化の兆しが見える。
 非同盟は、容疑者引き渡しを求める異例の決議案に当初、消極姿勢を示した。しかし、総じて、リビアへの同情は薄く、16日には大勢が決した。しかし3カ国は「全会一致」を求め、働きかけを続けた。決議に重みが必要なためだ。
 20日、非公式協議が開かれた。実際の討議はこの場で行われるが、非公開。記録もとらない。
 理事国でない国はこの会議室の控えの間で知人を見付け、立ち話で結果を聞く。理事国かどうかで、情報入手には格段の違いがある。その外の廊下に報道陣が待ち受けている。公式協議は翌日に設定された。各国が本国に案文を送り、最終的な決定を仰ぐためだ。
 21日、安保理議場で公式協議。リビアにも反論の場が与えられたが、表決は15カ国の全会一致だった。
(ニューヨーク=外岡秀俊)
○サフランチャク国連事務次長に聞く
 安保理は過去5回、重要な節目で外相級会議を開いた。出席者をさらに格上げした今回の首脳会議は、安保理の歴史上でも初の試みだ。なぜ、どのような目的で首脳会議を開くのか。政治・安保理局担当のサフランチャク国連事務次長に聞いた。
(ニューヨーク=外岡秀俊)
 ――なぜこの時期に開催するのか。その意義は。
 「開く理由は、この数年続いた中・東欧、旧ソ連の平和革命。その変化は根源的なもので、影響は欧州にとどまらない。旧ソ連が核大国であり、常任理事国でもあったからだ。会議の意義は、その画期的な変化に照らし、国連の役割と現在の状況をどう再評価するか、安保理の場で取り上げることにある」
 ――議題は。
 「国連の役割についての一般的評価や核不拡散、軍縮、国連機能の強化などの問題が話し合われるだろう。議論はなく、議長声明という形で安保理の意思を表明することになるだろう」
 ――冷戦終結が安保理に与えた影響は。
 「冷戦当時、安保理は常任理事国の拒否権によって機能を損なわれてきた。冷戦終結によって、安保理は能動的に決定を下すようになった。最も重要なのは、イラクによるクウェート侵攻を終わらせたことだ。以前は会議場で激しい討論をしたり、レトリックや非難の応酬をするのが一般的だったが、今は舞台裏で交渉に交渉を重ね、合意を得るという方式になった」
 ―― 一方で、現在の安保理の構成は、必ずしも加盟国全体の意思を反映していない、という不満や批判も出ているが。
 「安保理を拡大する構想で問題なのは、結論を出すのにさらに多くの時間を費やす恐れがあることだ。議論すれども決定できず、ということにならないか。もう一つは、どこか特定の国が常任理事国になると、他の地域大国も同じ座を求めるということだ」
 
●首脳会議の出席者
【常任理事国】
 ブッシュ米、ミッテラン仏、エリツィン・ロシア各大統領、メージャー英、李・中国各首相
【非常任理事国】
 ボルハ・エクアドル、ペレス・ベネズエラ、ムガベ・ジンバブエ各大統領、宮沢・日本、フラニツキ・オーストリア、マルテンス・ベルギー、ベイガ・カボベルデ、ラオ・インド各首相、ハッサン2世・モロッコ国王、イエセンスキー・ハンガリー外相
 
●常任理事国の拒否権行使総回数(91年10月31日現在)
 米    69回
 旧ソ連 116回
 英    30回
 仏    18回
 中国    3回
 
●非常任理事国選出回数(選出4回以上)
 7回 日本
 6回 インド、ブラジル
 5回 アルゼンチン、コロンビア、カナダ
 4回 エジプト、パキスタン、ポーランド、ユーゴスラビア、パナマ、ベネズエラ、オーストラリア、ベルギー、イタリア、オランダ
◇世界の紛争と安保理
★朝鮮戦争(1950−53年)
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の韓国に対する武力攻撃に関し、安保理は、国連加盟国に対して米国の指揮下に兵力を派遣するよう勧告、16カ国が国連軍として参戦した。当時ソ連は安保理をボイコット中で、拒否権を行使できなかった。
★スエズ動乱(第2次中東戦争、1956年)
 スエズ運河の国有化を宣言したエジプトをイスラエル軍が攻撃。米ソの圧力に加え、国連総会で休戦と第1次国連緊急軍の創設が決まるなどの結果、イスラエルと同国側から参戦していた英仏は停戦、撤退に応じた。
★キューバ危機(1962年)
 米国がキューバからのソ連製ミサイル撤去を要求して海上封鎖。米ソの要請で緊急安保理が開かれたが、両国は真っ向から対立。ソ連が譲歩し、核戦争の危機は回避された。
★ベトナム戦争(1965−75年)
 常任理事国の米国が当事者であるうえ、中越、中ソの対立、仏がベトナムの旧宗主国だった事情が絡んで、安保理はこの戦争にまったく手が出せなかった。
南アのアパルトヘイト(人種隔離)政策
 総会では国連創設以来、毎年審議されているが、安保理でも南ア当局が多数の黒人を虐殺した1960年のシャープビル事件以降、審議。77年、対南ア武器禁輸決議を採択。
★中東紛争
 安保理は多数の決議を採択。1967年の第3次中東戦争に対応した決議242(イスラエルの占領地からの撤退、中東地域各国の主権・領土保全の尊重などが骨子)は、その後の和平交渉の基礎として位置付けられる。
★カンボジア和平
 1990年安保理は包括和平案を提示。紛争当事者4派でつくる最高国民評議会がこれに修正を加え、91年のパリ国際会議で最終合意。安保理では停戦と武装解除の監視、新政権発足に向けた総選挙の運営などを担当する国連暫定行政機構の設置も決まった。
★湾岸戦争
 1990年8月のイラクによるクウェート侵攻に対して、安保理は即時・無条件撤退を求める決議、経済制裁決議、国連設定の期限までに撤退しない場合の武力行使容認決議など、約4カ月間に12回の決議を矢継ぎ早に採択。冷戦終了後の時代を反映した。
 
 
 
 
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