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1992/01/01 朝日新聞朝刊
国連中心主義に「日本色」出す時 国連特集(新年特集・第3部)
世界の新秩序づくりにたいする国連の役割への期待が高まる中で、日本政府もすっかりホコリをかぶっていた「国連中心主義」の看板を再び掲げだした。しかし、かつてもそうだったが、これほど分かりにくい言葉も珍しい。国連の一員として、どんな国連運営を目指し、どんな部分を尊重してゆくのか。「国連中心主義」に豊かな内容を盛り込むには、政府にそれなりの腹構えと外交力が求められよう。
(調査研究室 村上栄忠)
宮沢首相は昨秋、政権担当後初めての国会所信表明で「国連に対する最大限の貢献」を約束。安保理常任理事国を中心とする「大国主義」を排する国連改革への意欲も見せた。ただ国連協力の具体策となると、国連平和維持活動(PKO)協力法案の成立に意欲を燃やすにとどまった。「新しい世界平和の秩序を構築する時代の始まり」という認識を、カンバスに描くのはこれからなのである。
これまでのわが国の「国連中心主義」は、諸外国から額面通りに評価されてはいない。元外務省幹部によれば、その実態をあからさまにしたのが、かつての中国代表権問題での対応だ。1971年の中国加盟まで、西側主要国が続々と中国支持に転換しても、日本は米国と最後まで台湾の議席維持に奔走した。同時に中国が国連から排除されていることが、いわば国連中心主義として日中正常化を将来の問題と主張する根拠にされた。
そして中国の加盟後、米国の後を追って対中復交に動いた。「国連中心主義」が、国連の望ましい運営を考えることよりも、対米関係と国内タカ派への配慮を優先する隠れみのに利用されたわけだ。
「国連中心主義」が唱えられだすのは、日本が国連に加盟した翌年の1957年、岸政権が「自由主義諸国との協調」「アジアの一員としての立場堅持」と並ぶ日本外交の3本柱に位置付けてからだ。しかし、被爆国の体験を訴えての軍縮推進、東西・南北対立の調整役などの独自姿勢で国連から好感を持たれたのは、数年間しか続かなかった。
それを裏書きするように、外交青書は61年から国連の限界説や力の均衡論を強調。69年には、「日米関係は他のいかなる国との関係より重要」と訴え、74年にはついに「国連中心主義」の表現も消えた。以後「国連中心主義」は、首相や外相が国連総会に出席して演説する際の「空疎なまくら言葉」(元国連大使)に過ぎなくなった。
それは、米ソ対立の激化に加えて、アジア・アフリカグループと非同盟諸国の結束にソ連が乗ずる形で、国連総会が富の再分配や中東・南部アフリカ問題などで、西側先進国を追い詰め、糾弾する場となり、米国が国連離れをしていく過程と符合する。
その中で、国連における日本の存在は「票と援助を取引してポストにばかり執着するアジアの異端者」(元国連事務局幹部)と映るようになった。米ソ冷戦が激化した80年代前半には「米国の世界戦略を制約しない」(外務省幹部)方針が徹底した。それはここ数年、東西関係が協調に動いた過渡期に「対米心中路線」と皮肉られる事態さえもたらした。
88年の国連総会で、国際平和と安全強化の包括交渉決議に反対したのは、日米イスラエルの3国だけ。90年、インド洋平和地帯化決議にはアジア諸国がそろって賛成する中を、米英仏の核保有国と並んで反対。同年の南大西洋の平和地帯化決議では、前年棄権したカナダが賛成に回ったため、米国だけの反対に日本一国が棄権で義理立てする図式になった。
これが近年「国際貢献」を掲げてきた日本の国際舞台での行動であり、そこに、崩壊する冷戦構造にしがみつくだけで、新秩序への取り組みを怠ってきた日本外交の自主性のなさが象徴されている。
もっとも73年の国連大学設置――本部の東京誘致、賢人会議による国連行財政改革の提言(86年)、90年代を「国連防災の10年」とした決議など、日本がイニシアチブを発揮してきた一面もある。米国が86年から国連への財政支出を大幅に削減した中で、日本が積極的に負担を受け入れてきたことは好感を持たれた。
首相発言などに「国連中心主義」が復活したのは、一昨年秋の国連平和協力法案の国会審議からだ。国連をにしきのみ旗にした湾岸戦争後、米国が国連再評価方針に変わってから「今や国連中心主義に中身を入れる時」(丹波実外務省国連局長)とボルテージも上がる。ただ、その中身になると、7度目の安保理入りを機に「国連運営の風通しを良くしたい」という以外は、PKOへの積極的参加を考えるにとどまっている。
国連関係者らは冷戦が終わった今こそ、より深刻化した南北問題、飢餓、難民、環境破壊など「地球規模の宿題」に取り組む時機だと強調している。日本への期待が高まったのも、そうした平和的生存権の問題に、日本が果たし得る役割に注目してのことだという。
一方では、加盟国の中に国連の大国主導化への懸念が急速につのっている。日本に対しても、大国主導の秩序づくりを担おうとするとともに、当面実現性の乏しい安保理常任理事国入りばかりをうかがう「ステータス・シーカー(地位を求める人)」像を強めることへの警戒心があることを自省すべきだろう。
○国籍別の国連職員数の望ましい配分と現況(左が現況、右が望ましい人数)
| 米国 |
385 |
384 |
| ソ連 |
161 |
161 |
| ドイツ |
123 |
148 |
| フランス |
109 |
101 |
| 英国 |
88 |
80 |
| 日本 |
88 |
179 |
| フィリピン |
65 |
10 |
| カナダ |
53 |
53 |
| イタリア |
52 |
68 |
| 中国 |
42 |
48 |
| インド |
41 |
34 |
| オランダ |
35 |
32 |
| オーストラリア |
31 |
31 |
| エチオピア |
29 |
8 |
| スペイン |
28 |
37 |
| チリ |
28 |
8 |
| ブラジル |
27 |
32 |
| タイ |
27 |
10 |
| メキシコ |
27 |
23 |
| スウェーデン |
24 |
25 |
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国連本体の職員のうち、分担率と人口を基準にした地理的配分の原則が適用される専門職以上の職員。表の望ましい人数は、同基準による範囲の中位数。
○主要拠出国の国民ひとり当たりのユニセフへの拠出(1990年:米ドル)
| スウェーデン |
14.50 |
| ノルウェー |
12.23 |
| フィンランド |
9.34 |
| デンマーク |
8.64 |
| スイス |
4.69 |
| オランダ |
3.50 |
| カナダ |
2.02 |
| イタリア |
1.11 |
| クウェート |
1.10 |
| オーストラリア |
0.60 |
| 西ドイツ |
0.56 |
| ベルギー |
0.55 |
| オーストリア |
0.45 |
| フランス |
0.45 |
| 英国 |
0.37 |
| 米国 |
0.37 |
| スペイン |
0.31 |
| 日本 |
0.29 |
|
国連本体及び傘下の諸機関の活動は、各国の分担金と自発的な拠出金で賄われる。日本はどちらについても米国に次いで2位。
自発的拠出金に関する北欧勢の貢献度の高さは、政府、民間を合わせた国民ひとり当たりの拠出額で見るといっそう際立つ。ユニセフを例にとると、スウェーデンは日本の50倍。
○主要国の国連に対する資金協力実績<分担金+拠出金>(1990年分、単位千米ドル)
| 米国 |
1272070 |
| 日本 |
701586 |
| 西ドイツ |
408798 |
| スウェーデン |
400608 |
| オランダ |
303511 |
| ソ連 |
299219 |
| 英国 |
280248 |
| ノルウェー |
272869 |
| フランス |
270496 |
| イタリア |
266308 |
| デンマーク |
222850 |
| フィンランド |
202850 |
| カナダ |
189909 |
| 中国 |
34585 |
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○主要国の通常分担率の推移(単位:パーセント)
| 西暦 |
米国 |
日本 |
ソ連 |
独 |
仏 |
英 |
中国 |
| 46 |
39.9 |
|
6.6 |
|
6.3 |
12.0 |
6.3 |
| 57 |
33.3 |
2.0 |
14.0 |
|
5.7 |
7.8 |
5.1 |
| 68 |
31.6 |
3.8 |
14.6 |
|
6.0 |
6.6 |
4.0 |
| 71 |
31.5 |
5.4 |
14.2 |
|
6.0 |
5.9 |
4.0 |
| 74 |
25.0 |
7.2 |
13.0 |
7.1 |
5.9 |
5.3 |
5.5 |
| 77 |
25.0 |
8.7 |
11.3 |
7.7 |
5.7 |
4.4 |
5.5 |
| 78 |
25.0 |
8.6 |
11.6 |
7.7 |
5.8 |
4.5 |
5.5 |
| 80 |
25.0 |
9.6 |
11.1 |
8.3 |
6.3 |
4.5 |
1.5 |
| 83 |
25.0 |
10.3 |
10.5 |
8.5 |
6.5 |
4.7 |
0.9 |
| 86 |
25.0 |
10.8 |
10.2 |
8.3 |
6.4 |
4.9 |
0.8 |
| 91 |
25.0 |
11.4 |
10.0 |
8.1 |
6.3 |
4.9 |
0.8 |
| 92 |
25.0 |
12.5 |
9.1 |
8.9 |
6.0 |
5.0 |
0.8 |
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国連本体の通常予算(人件費・会議費・施設管理費など)は現在年間約10億ドル。各加盟国の分担率は、25%−0.01%の範囲内で、国民所得を基準に決められ、通常3年間は変更されない。
(注1)それぞれ1国として扱われているウクライナとベラルーシは含まない。92年以降はロシアなど3共和国による「独立国家共同体」協定以前に決定されたもの。バルト3国分は除く。(注2)92年以降は統一ドイツ、それ以前は西ドイツ。 =国連資料から
○PKOでも、できる非軍事貢献 中村一也さん
鉛筆を握るのも初めてという有権者がほとんどで、政党の表示も各党のシンボルマークだった。仲間の奥さんのなかには、夫が地雷の事故や武力衝突に巻き込まれるのでは、と心配した人もいたが、そうした危険な目には遭わずにすんだ。指揮系統や計画に、一部不備はあったが、国連の“全力投球”を実感した。あれほどの大事業の達成は、国連ならではだ。1つの国の誕生をお手伝いした貴重な経験は生涯記憶に残るだろう。日本は非軍事面で今後もPKOに参加できると思う。
=山梨県職員。89年、「国連ナミビア独立支援グループ」に選挙監視要員として参加
○国連活動への応募増やす政策望む 斉藤千佳さん
ユニセフは、栄養状態が悪化した子どもの生命をビタミン剤配給や予防注射で守ってきた。ロケット弾の落下音が怖かった。戦争の最大の犠牲者は子どもら弱者だと感じた。国連の存在は弱者の救いになっている。日本は外圧に屈して自衛隊を出動させることなく、紛争の平和的解決に努めてほしい。また国連への人的貢献が少ないが、国連活動の経験を帰国後いかせる仕組みができれば応募者はふえると思う。
=91年7月まで戦火のアフガニスタンでユニセフの活動に従事
○環境面で日本への期待大 中村恭一さん
核戦争の脅威が遠のいた感じの世界だが、ますます増大する人口と環境悪化の脅威には世界が一体となって取り組むほかない。人口と環境の問題は時間との競争に入っているというのが世界の認識だ。この分野では、世界が一致して日本のリーダーシップと、経済力を含む貢献に期待している。日本にとっては世界の尊敬を得るチャンスが目の前にある。が、同時に失望させる危険もある。一般の国民がどれだけ国連の活動を理解し、より強力な貢献を政府に求めるかが、ますます重要になる。
=国連人口基金事務局次長特別補佐官
○独創的なアイデアや対応必要 吉田康彦さん
日本は第2位の分担金拠出国なのに影が薄い。日本人は国際機関を絶対視してしまう。政府も米、英、仏などが持つ「自分たちが国連を動かしている」という主役・当事者意識を欠く。受け身の対応ではなく、独自のアイデアを出し、積極的に参画すべきだ。国連憲章改正では、死文化した旧敵国条項だけを問題にせずに全体の見直しのなかで主張すべきだ。日本が拠出額の威力で安保理常任理事国になれば、先進国の国連支配を強めてしまう。むしろ有力な途上国を加えるべきだろう。
=国際原子力機関前広報部長
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