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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1988/08/11 朝日新聞朝刊
平和の立役者・国連“破産”寸前(時々刻々)
国連のイ・イ停戦監視費、膨大
 イラン・イラク戦争の停戦日が決まり、世界中がわいた日、最大の立役者である国連のデクエヤル事務総長はこう嘆いた。「国連の平和を求める動きが歩みを速めたまさにこの時、破産の危機が国連を閉鎖に追い込もうとしている」。米国を中心とする分担金の未払いにより国連の台所は火の車である。これに加えて、停戦監視団の費用などが財政を圧迫、この秋には国連の金庫が空になるという。各地の地域紛争が国連の働きなどで一挙に展望が開け、「国連のルネサンス(再生)」が語られながら、その平和の重みが国連にのしかかっている。
(ニューヨーク=横井正彦特派員)
 
《いらだち》
 9日、イラン、イラク両国に派遣する国連停戦監視団(UNIIMOG)の設立が安保理で決議された後、デクエヤル事務総長が記者団の前に姿を見せた。この停戦監視団の派遣費用をどうするのか、と1人の記者が尋ねた。
 「とてもいい質問だ。君はアメリカ人だろう。君の国の政府に、この平和への努力に全面的に参加するよういいたまえ」
 穏やかな調子ではあったが、温厚な外交官として知られた事務総長にしては、かなりきつい皮肉である。
 現在、6億5000万ドルに及ぶ国連分担金未払いのうち、7割を占めるのが米国である。85年以来、国連が「米国を批判する勢力に占拠され、非効率であり、スパイの温床になっている」として、分担金の一部の支払いを拒んできた。
 米議会は昨年の分担金の2億1400万ドルのうち1億4400万ドルの払い込みだけを認めた。しかも実際に払い込まれたのは1億ドルだけで、残りは米国が要求する改革案が実行されたと大統領が認定した後、と条件を付けている。
 事務総長は先月、職員の15%削減など改革は果たしたとレーガン大統領に直訴したが、まだ不十分だと退けられた。分担金の支払いは国連憲章に明記された加盟国の義務である。それを施しのように振る舞っていると西側同盟国の間でも評判が悪い。事務総長のいらだちも理解できる。
 
《ジレンマ》
 9日、第1陣が出発した停戦監視団にかかる費用は人員の輸送など当初の設営費用だけで4700万ドル、駐留予定の6カ月間では7400万ドルが必要になると見込まれている。来週にも緊急総会を開き、分担金比率に従って加盟国に割り当てるが、通常予算の分担金さえ払われていない現在、いつ払い込まれるか、あてはない。
 4月に国連の仲介でアフガニスタンからのソ連軍撤退が決まり、いまイラン・イラク戦争が終結に向かっている。加えて、キプロス、西サハラ、アンゴラ、ナミビアなどの紛争も国連の直接、間接的な働きで解決へのめどが立ち始めている。
 事務総長が8日、トロントで開かれた全米法律家協会の年次総会に送った声明によると、これらの紛争がすべて解決した場合、現在、2億3000万ドル余りの国連の平和維持費が15億ドルから20億ドルにはね上がるという。通常予算の2、3倍にあたるこれらの費用をまかなう財源は、国連にはない。
 ある国連事務局職員がいっている。「だれもが紛争が解決したと握手を求めに来る。だが、その平和を守っていこう、と声をかけると、背中を見せて去って行く」
 
《日本にも期待》
 展望がないわけではない。アフガニスタン、イラン・イラク戦争の調停の成功で、米議会内部でも、国連の効用を見直す動きが出てきた。だが、この日、政府高官は停戦監視団の費用について「停戦で利益を受ける国、すなわちアラブの産油国と輸入国が第1に負担すべきであり、その方向でこれらの国に働きかけている」と語った。明らかに最大の原油輸入国、日本を意識した発言である。
 日本はすでに分担金全額を払い込んでおり、平和維持費として2000万ドルを拠出、うち1000万ドルが停戦監視団の費用にあてられた。国連の記者会見では連日、この「日本の貢献」が強調されているが、米国の新聞では「防衛をただ乗りしている日本には、最大限の負担の義務がある」(クリスチャン・サイエンス・モニター紙への寄稿)などの論調がなお目立つ。
 こうした米国の態度は、長年、非難決議を突き付けられてきた国連への反発と、「国際政治は米ソ間の力学で決定される。今回の停戦も、その結果が国連の場を借りて現れただけ」という国連の効用への深い懐疑論に根差している。それだけに、すぐには改まる見込みは少ないが、国連事務局幹部は「イラン、イラク両国が一緒の舞台に上がる場は、国連をおいてなかった」と反論している。
 8年間に及んだイラン・イラク戦争では数千億ドルが浪費されたと推計されている。戦争がとてつもない無駄遣いであることは疑いない。
 だが、ウォルターズ米国連大使が議会の公聴会でこういっている。
 「平和もまた、決して安く買えるものではないのだ」
 
 
 
 
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