【ジュネーブ30日=柳沢特派員】「余りにも活動が細分化されている」「各機関の協力はお粗末」「意味のない資料や出版物の洪水」・・・国連40周年を機に、国連が抱えるさまざまな問題が論議される中で30日、国連内部の特別査察チームが恐ろしく厳しい現状分析を公表した。
報告は、思い切った改革が必要な分野として開発途上国への援助体制をあげ、また経済問題への対応の弱さには「経済安保理事会」といった新しい国際機関を考えるべき時期ではないかと述べている。しかし、調査のもう1つの焦点であった平和と安全保障問題については、「安保理は不十分だが、結局これ以上のものはない」としている。
報告はまず現状分析として国連の欠陥を▽活動が過度に細分化されている▽各機関の協力の欠如▽資料や印刷物の凡庸さ▽多過ぎる職員及び資格付けのレベルの低さ▽職員の研修や職能開発政策の欠如▽決議作成における言葉だけのやりとりと現実感覚の不足▽事業のやり方と結果の判定の弱さ――など、歯に衣(きぬ)着せず列挙。これら欠陥は「単なる運営の誤りではなく、国連というシステムの構造そのものに根ざしている」と指摘している。
その主な原因は▽システムとして国連が運営できるのは、難民救済や技術問題などわずかしかない▽平和、開発、世界会議などの分野での活動が、すべて交渉によるため各国の意見がまとまらない、と述べている。
報告はこれらを踏まえたうえで、大幅な改革を提言しているが、特に早急な対応が必要なものとして、開発援助計画を挙げ、「国連を通して開発援助への出資は、政府開発援助(ODA)全体のわずか6.5%にすぎないのに、これらが30以上の機関に分散されて被援助国に届いている」と各機関の協力と計画の統合を主張。
また、交渉の場としての国連について報告は、植民地解放を人口、環境問題など多くの点での貢献を認めながらも、現在のシステムが特に経済の分野で機能していない主な理由は、経済大国がそっぽを向いているからだとし、大国が受け入れられるような交渉の場を世界レベルでつくる必要を強調。国連経済社会理事会(ECOSOC)、国連貿易開発会議(UNCTAD)に代わる限られた国(23カ国程度)による理事会の設置を提唱している。
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