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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/05/11 朝日新聞朝刊
事務総長に聞く(国連・40年の光と影:21)
 
 【ニューヨーク支局】今秋創設40周年を祝う国連は、いま内外に無数といってよいほどの難問を抱えている。国連の存在や活動に過度の期待をかけるのは危険であるにしても、国連がこれ以上弱体化してゆくことは、世界平和にとって明らかにマイナスであろう。長期連載「国連――40年の光と影」を終わるのを機会に、朝日新聞社は国連の最高責任者であるデクエヤル事務総長と会見し、国連をめぐる当面の諸問題について見解を聞いた。同事務総長は、日本の国連に対する貢献に感謝していることを強調したあと、質問に答えて1時間近く、その悩み、希望、意欲などを率直に語った。(聞き手は、訪米中の松山論説主幹と久保田ニューヨーク支局長)
○復権への道 大国は“初心”に帰れ
 ――国連は発足以来、トラブルに悩まされ続けている。もはや希望の象徴というより、失望と幻滅の象徴となった感がある。どうすれば、国連の力と権威を取り戻すことが出来るようになると思うか。
 「非常に大事な質問なのだが、実はそれは、私に聞くよりは、ワシントンやモスクワやパリ、ロンドンに行って聞くべきことなのだ。みんな、国連が国際的条約によって出来た機関である、ということを忘れてしまっている。国連は、世界政府ではなく、平和のために結んだ同盟なのである。ところが、同じ条約なのに、北大西洋条約機構(NATO)やワルシャワ条約機構だと、みんな団結しているのに、国連だと約束を守らない。国連を強化するには、どこよりも米ソなど大国に行って『いったい君たちは何をしてるのか』と、問いたださねばならない」
 ――3年前、あなたは国連事務総長としてはじめて広島を訪問されたが、それによって核軍縮や軍備管理問題に対する考え方に多少の変化が生まれたか。
 「広島訪問で、私の核軍拡競争反対の信念はいよいよ固まった。国連は、核軍縮を最優先事項とみて、これを促進するための対話を進めようと考えている。同時に、ますます発達する通常兵器についても、軍縮を促進する必要が高まっていると思う」
 ――われわれは、軍縮会議はジュネーブやニューヨークでやるより、広島でやった方が成果が上がるのではないか、という主張をしているが。
 「それは初めて聞く意見だが、たいへんよい提案だと思う。ジュネーブのように美しい環境の中でやるよりも、広島の方が議論に力が入るに違いない」
○日本に期待 補給や医療で協力仰ぎたい
 ――国連の平和維持活動に日本がもっと積極的に協力してはどうかとの声が年々強くなっている。だが、日本は憲法9条などによって自衛隊の海外派兵は禁じられている。
 「日本が憲法の制約で兵士の派遣が難しいことは当方も承知している。日本には平和維持活動を財政面で支援してほしいし、輸送、補給、医療の分野での協力も仰ぎたい」
 「私がここで強調したいのは、フィンランド、スウェーデン、オーストリアといった中立国が補給面だけでなく、兵士を送ってくれているということだ。国連軍は、平和維持を目的としており、戦闘部隊ではない。スイスなどは輸送機を提供してくれてもいる」
 ――日本は国連に対し、財政的には米国に次いで大きな寄与をしている。国連憲章改正を必要とする安保理常任理事国入りは、少なくとも当面実現が難しいとしても、もう少し国連で活躍の場が与えられてもよいのではないか、といった国内世論がある。
 「日本は56年に加盟を果たして以来、過去29年間に5回、安保理メンバーに選ばれている。他国と比較すると、決して少ない回数とはいえない。日本がアジア代表として将来もしばしば安保理に加わるためには日本政府が外交工作を推進するべきではないか」
 ――憲章53、107条に、第2次大戦の敗戦国である日本や西独を差別していると見られる“敵国条項”がある。この条項は日本にとって不必要な侮辱と受け取れる。もしも米ソにこんな条項があったりしたら、彼らは国連にはとどまっていまい。
 「憲章草案は戦勝国によってつくられたもので、国連はいまだにこの概念から完全に抜け切れてはいない。日本が平和愛好国であることは周知の事実だし、かつての軍国主義時代の行為に、現在の日本の責任があるわけではない。それは、ナポレオン戦争の責任がいまのフランスにないのと同じだ」(笑い)
 「だが、憲章の改定には、それがわずか1項目であっても安保理常任理事国すべての同意が必要で、憲章をいじるのは極めて難しい。この件で、日本が忍耐強い態度をとっていることに私は感謝している」
 ――アフリカの飢餓救済では日本がイニシアチブをとって成功したと思うが。
 「日本政府と日本国民の協力は特筆すべきものだ。援助もさることながら、“アフリカ宣言”の採択に当たって、ニューヨークの日本代表部の動きは光った。アフリカ支援以後、日本の国連における地盤はいっそう強固になったと信じる」
 ――人権や婦人問題での日本の活躍をどう評価するか。
 「人権擁護は、国連活動の柱の1つだ。国連がこんごも全力をあげて取り組まねばならない。日本が地味ながらまじめな支援を続けてくれていることを承知している」
 ――日本語を国連の公用語の1つに加える案はどうか。日本人は外国語を苦手としている。もしも日本語が国連の公用語になったら、日本の政治家や役人や学者にとって国連がずっと身近なものになるかもしれない。
 「それも総会が決定すべきことだが、コストの面などから価値ある方策とも思えない。日本の代表が総会や安保理で日本語で演説したとしても、他の言葉に通訳しなければならないし、文書も英語かフランス語に訳す必要がある。その手間も大変だし、翻訳に誤りも生じる。アラブのある大使が英語で演説したので不思議に思ったら、アラビア語から英語への誤訳を避けるためだったという。通訳を信用していないのだ」(笑い)
○米国の役割 他の国より重い責任、ユネスコ脱退考え直せ
 ――レーガン政権下で米国の国連離れはとくに顕著になっているように思う。ユネスコからの脱退がそのよい例だ。米国のこうした態度が国連のイメージ低下や権威の失墜につながっているのではないか。また、米国の温かい支持なくして国連はやってゆけると思うか。
 「国連そのものに関する限り米国が他国より非協力的とはいえない。だが、米国は国連に対して特別の責任を負っていることを理解してほしい。国際連合という構想は実は米国のアイデアであり、米政府は発足当時から他のどの国より国連に深くかかわり合ってきた」
 ――米国のユネスコ脱退について。
 「ユネスコについては、事務総長としては加盟国の決定をとやかくいうことはできない。しかし、私個人の意見としては、米国の脱退に反対だ。間違っている。組織がおかしいといって脱退することは、国連の普遍主義を損なうことになる。ユネスコの行政が悪いというなら、内部にとどまって、内部から改革を手がけるべきだ」
 ――ソ連をはじめ、共産圏、イスラエル、南アフリカ共和国、米国などの分担金、平和維持活動費の滞納金が4億ドルにものぼり、国連財政をひっ迫させている。とくに、滞納総額の半分を占めるソ連の態度が問題ではないか。
 「(ソ連が自らの判断に基づいて)分担金や国連軍の活動費の一部の支払いに応じないことを遺憾に思っているし、私はソ連の態度には同意できない」
 ――国連憲章には、滞納金が分担金の2年分の額を超えると、総会での投票権を失う、とある。このままの状態が続くと、ソ連は来年の総会には投票権をなくすことになるが・・・
 「その決定は私ではなく総会が行うことだ」
 ――今日、第三世界の声を重視する必要のあるのはいうまでもないが、第三世界の中には、自分たちの仲間のことになると、正義とか理屈を忘れて仲間をかばう傾向があり、これが時に先進国の反感をよんでいるように思える。
 「先進国が第三世界の言動にいらだっているのはよくわかる。たしかに、第三世界の中には、先進国の援助意欲に水をさすような振る舞いをする国もないわけではない。しかし、彼らは欧米諸国と違って、伝統のない新興国なのだ。植民地からぬけ出してやっと政府をつくったばかりのアフリカや中南米諸国に、いきなり大人の振る舞いを期待しないでほしい」
○組織の改革 支出の抑制へ全力を尽くす
 ――あなたは国連の行政改革の必要性を強調し、事務局や加盟国に協力を呼びかけているが、成果はどうか。国連に緊縮を要求する点では米ソは同じ立場に立っている。
 「私は事務総長として国連の支出を抑制することに全力をあげている。来年度の国連予算も0.4%増と、ほぼゼロ成長に抑えたいと思っている。しかし総会から予算を増やせとの横ヤリがすぐ入るから困る」
 ――国連事務総長の仕事は「世界で最も不可能な仕事」といわれるが。
 「たしかに困難な仕事ではあるが、『不可能』という言い方は間違っていよう。事務総長の仕事は、平和のためにたえず加盟国の相互理解を促進することである。『平和』というのは単に『戦争がない』という状態ではない。平和とは、経済、社会問題を解決することである。戦争は、先進国でなく途上国に起こっている。世界中の国の経済的、社会的水準を上げなければ、真の平和は来ない」
 ――あなたの事務総長としての任期は来年末で切れるが、再選を求める意向は?
 「私から再選を狙うような動きは絶対にしない」
 ――ということは、態度を決めていないということか。
 「そうではない。現職の事務総長は再選のための意思表示など決してすべきでないというのが私の信条だ。そうすることによって総長としての中立性と独立性を失ってしまう。総長は安保理常任理事国の支持を求めたりすべきでない。(笑いながら)私の任期が切れたら、だれか新しい勇気のある人がこの仕事を継いでくれることを期待する」(おわり)
 
 
 
 
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