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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/05/09 朝日新聞朝刊
複雑な立場(国連・40年の光と影:19)
 
 「国連は生き物」というのが、明石康・事務次長の持論である。
 「国連憲章の中でも、43条の特別協定に基づく国連軍の条項は死文化し、代わって警察的役割を担う国連平和維持軍が、戦闘能力を持たないながら停戦や選挙の監視に役立っている。53条の“敵国条項”についても、いまやほとんど語る人はいない」
 「その反対に、事務総長の権限を定めた97―99条は、当初考えられた以上に、非常に弾力的に解釈されて総長に活躍の場を与えている」
 「73条の非自治地域に関する宣言が植民地解放にこれほど大きな役割を果たすとは、国連生みの親ルーズベルトやチャーチルも考えていなかったに違いない。そういう意味では国連は年々移り変わっており、生き物としてとらえることができる」
○留学中にスカウト
 国連の危機が叫ばれて久しい。現象面ばかり見ていると、国連はいつも危機的状態にある。しかし、危機と危機の間に一貫した流れがあり、国連はこのすう勢をたどりながら現在に至っている。波の頂点をとらえれば国連はバラ色であり、底辺を見れば灰色に映る。だが、どちらも実態を反映していないことは明らかだ。
 「国連をもう少し長い尺度と広い視野で見てほしい」――明石次長は「国連は生き物」という表現でこう訴えたいのではないか。
 1956年夏、フルブライト留学生としてバージニア大に留学中、国際学生セミナーで行った講演「極東の政治情勢」が国連幹部に評価されて、「近く日本も加盟することだし」とスカウトされた。翌57年に事務局入りして61年には職員組合委員長。74年から6年間、日本国連代表部に“出向”し、参事官、公使、大使を歴任した。
 この経歴で明らかなように、彼の強みは国連に内と外から、かかわってきたことである。
 「日本の国連における立場は複雑だ。西側先進国の中で米国に次ぐ存在としての経済大国・日本と、欧米世界の外で工業化を遂げた唯一の有色人種の国としての日本。こういった二重性からくる宿命的役割がある」
 米国が国連にいらだちを高め、第三世界に背を向けようとしているときに、日本が、経済力を背景に、有色人種に対するより深い関心と理解を示す。この成功例がアフリカの飢餓問題での積極外交。逆に変な大国意識を表に出すと反発を買う。
 「日本の支持基盤は国連内部に広がっていることは確かだが、例えばサミットなど西側先進国の会合に強い関心を示し、中小国とのつきあいを忘れると、彼らからすぐそっぽを向かれる。われわれはこの点に敏感でなければならない」
○人材もっと送ろう
 国連事務局では、通常予算の分担率、人口などを基礎に国別職員数の「望ましい範囲」(上下限)を設定している。日本は83年で173人(下限)―234人(上限)。ところが実際は100人少々で、下限にすら相当不足している。とくに幹部職員となると、30人近い事務次長の1人に明石氏がいるだけで、事務次長補は、総長特使としてカンボジア問題調停にあたる功刀達朗氏ら2人。
 「もっと優秀な人材を送り込めればそれに越したことはない。だが金をたくさん出しているからといって、押しつけがましく人をはめ込むのはよくない。官庁や企業が大学に留学生を送るような形で、国連に短期間派遣してくるのもどうかと思う。数もさることながら、一番求められているのは質である」
 この辺は、日本人というより高級国際公務員としての自覚がなせる発言か。
○局長候補に上がる
 目配り、気配りの人である。米ソ両大国の代表部に示す温かさを、アジア、アフリカ小国の代表にも忘れない。むしろ、中小国の立場をより大切にしているといえるかもしれない。これも日本人としての複雑な立場を認識してのこと。東大時代の恩師、中屋健一氏(同大名誉教授)から「秋田生まれのお前の英語はイイゴだ」とからかわれたというが、英語の語彙(ごい)の豊富さと弁舌には定評がある。
 ムボウ・ユネスコ事務局長の後任の1人にニューヨーク・タイムズ紙などから名を挙げられているが、「将来のことはまだ何も」と薄くなった頭髪に手をやって照れる。
 昼夜を問わず国連のことを考え続ける数少ない国連男である。
(ニューヨーク=久保田特派員)
 
 
 
 
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