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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/04/16 朝日新聞朝刊
米ソの逆転 拒否権の主役交代(国連・40年の光と影:3)
○いきなり米国批判
 握手をしながら、こちらは戸惑いを隠せなかった。
 安保理で、ジーン・カークパトリック米国連大使(当時)と渡り合っていた時の厳しい表情はどこにもない。大企業の会長といった、ゆったりとした風情をたたえてほほ笑んでいる。一瞬、別人かと思ったくらいである。
 ソ連のオレグ・トロヤノフスキー国連大使(65)とは、国連本部から二キロほど北の高級住宅地にある同国代表部で会った。
 “四十歳”になる国連の感想を求めると、いきなり米国批判が返ってきた。きびしい内容だが、口調は穏やか。
 「米国のリチェンシュタイン前次席大使が“国連が米国を気に入らないのなら、どこかよその国に出ていけばいい”と、一年半ほど前に言ったことがある。あれは耳ざわりな言葉だった。彼に限らず、米当局者から最近、国連批判がしきりに出ているが、米国はじめ西側諸国は国連ができた四五年から五〇年代にかけては、国連こそ国際協力の模範としてほめちぎっていた。えらい違いようではないか」
 ――原因はどこにあるのか。
 「あのころの国連は、実質的にあらゆる分野で米国の意向通りに動いていた。総会に決議案を上程すれば、圧倒的多数で自動的に可決された。だから、米国は総会を民主的で重要な機構と考え、拒否権がある安保理を悪と見なしていた。ソ連の拒否権で思うようにならなかったからだ。いまは逆で、米国は総会を数の暴力の場と非難し、安保理でしきりに拒否権を行使する。レーガン政権下で米国は多分、十八回ほど拒否権を使っているが、ソ連は一回だけ」
 ――初期のころ、少数派の悲哀を味わったソ連が国連から脱退するのではないかと言われたことがあった。いま、米国の一部に、国連脱退論がある。四十年間に米ソの立場が逆転したわけですね。
 「こちらの態度は同じなのだが、結果的にはそういえるかも知れない」
 ――昔と今とを比較して、国連そのものはどう変わったでしょう。
 「現在の方が良くなっている。冷戦時代の四、五〇年代には国連はいまより“防御的”で、守り一辺倒だった。最近では、ローデシアに経済制裁を加え、ジンバブエ誕生にひと役買った。レバノンからのイスラエル軍撤退でも五〇八、五〇九の二つの重要な決議を採択した」
 ――でも、イラン・イラク戦争の場合でも明らかなように、立派な決議を通しても、行動につながらない。
 「確かに、国連の最大の欠点は決議のしっぱなしが多いということだろう。だから、総会や安保理で採択された重要な決議の履行を妨げている国に、決議に従うよう圧力をかけることが必要だと思う」
○行使の仕方に異論
 ――決議案を葬り去る拒否権を廃止すべしとの声もある。
 「いや、拒否権は、最近の行使の仕方には異論があるが、国連には欠かせないものとわれわれは考えている。たとえば、安保理が米国に、不利な決議を採択したとして、米国が拒否権を使えなかったとしたら、彼らは国連を出て行くかもしれない。そうしたら国連はどうなるのか。不幸なことかもしれないが、国連にとって拒否権は必要なのである」
 ――総会の機能について
 「安保理では第七章に従って制裁措置がとれるが、総会の決議には強制力はない。しかし、あらゆる加盟国に発言の機会を与えているから、ここの決議は世界の世論の反映となる。三十九回総会で、宇宙の非軍事化を求める決議が賛成150、反対ゼロ、棄権1(米国)で採択されたが、これは国際世論の動向を示すもので、米国がこの件で世界中からいかに孤立しているかを数字で表したともいえる」
○途上国対策に腐心
 ソ連は総会から毎年、アフガニスタン問題で非難決議をつきつけられている。大韓航空(KAL)機事件でも総攻撃を受けた。しかし「ソ連が米国に対抗して、ときに大きな影響力を発揮するのは、米国連代表部員が政治任命で短期間でくるくる代わるのに、ソ連は長期計画のもとに優れた人材を長い間、多数送り込んで途上国の国連活動に力を貸しているからだ」と、西側外交官。
 在任八年四カ月――トロヤノフスキー大使は、ソ連の国連戦略の司令塔である。
(ニューヨーク=久保田特派員)
 
 
 
 
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