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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/04/12 朝日新聞朝刊
式典に暗雲 イ・イ戦争収拾に力なく(国連・40年の光と影:1)
〇停戦へ相次ぎ決議
 クルト・ワルトハイム氏はその朝、いつものように六台ある高層用エレベーターの一つに乗って国連本部三十八階の事務総長執務室に直行した。
 ユーゴ人のスポークスマンが三階から、世界の主な出来事を伝える外電を持って上がってくる。現場はどこであれ、大事件は即刻、国連に持ち込まれる。総長は各地のニュースに敏感でなければ務まらない。
 八〇年九月二十二日。第四代事務総長だった彼は、外電を手にすぐ行動を起こした。四、五月ごろから国境周辺で散発的な戦いが続いていたイラン・イラク戦争が「本格的戦闘に発展」と、電文にあった。
 まず、イラン、イラク両代表部に電話を入れる。「外電が伝えるところによると、武力行使が拡大された由、まことに遺憾である」としたあとで、「両国に調停受け入れの意向があれば、私が工作を開始する用意がある」むね、本国大統領への打診を頼んだ。もっとも、イラン代理大使の所在がつかめたのは夜半になってからで、イラクとの連絡が先になった。
 ワルトハイム氏は他方、安保理のスリム当番議長=チュニジア=に書簡を送り、緊急安保理の開催を要請した。
 これを受けて、安保理は二十八日、停戦決議(決議四七九)を満場一致で採択。だが、イラクは受諾の意向を示したものの、イランは拒否。「イラクがイランの領土を侵攻したのに、停戦だけを求めて、イラク軍の撤退を要求していないのは理不尽」(ラジャイ・ホラサニ・イラン国連大使)と反発した。
 それから四年半。国連は何をしたのか。安保理による決議採択は、四七九のほかに五一四(八二年七月十二日)、五二二(同年十月四日)、五四〇(八三年十月三十一日)、五五二(八四年六月一日)と計五回にわたる。安保理議長声明が七回。三十七回総会でも停戦と撤退の決議(八二年十月二十二日)をしている。
〇強制力がなく限界
 八二年一月にワルトハイム氏の後を継いだペレス・デクエヤル事務総長は(1)イラクの化学兵器使用に関する調査団の派遣(八四年三月)(2)住民居住地域への攻撃中止要請(同年六月)(3)捕虜の現地調査、の三つを総長独自の判断で実施した。パルメ特使(現スウェーデン首相)も五回、現地に飛んでいる。
 こうした努力にもかかわらず、戦争収拾のメドは立たず、この三月からは都市攻撃も再開された。これまでの死者はイラン側に十万人、イラク側に五万―六万人といわれている。
 「国連は手をこまぬいて戦火拡大を眺めているのか」との批判が高まるゆえんだが、「国連は世界政府でないのだから、強制的に和平に同意させるわけにはいかない。国連の限界といえばいえるが、それが現状なのだ」とオトゥンヌ・ウガンダ国連大使はいう。
 「非同盟諸国会議やイスラム諸国会議、湾岸諸国などの調停がことごとく不調に終わる中で、デクエヤル総長の努力は評価されていいのではないか」(国連・志村尚子特別政治局員)という声も高い。
〇本気出さぬ加盟国
 だが、「この戦争には複雑な要因がいろいろあるにせよ、国連、とくに安保理の対応には明らかに手落ちがあった」と、米国のラック国連協会長。「最初の停戦決議でもイラクに撤退を求めず、化学兵器使用の非難にしても、イラクを名指していない。このあいまいさがイランをして国連に背を向けさせることになった」と。
 この戦争に関する限り、米ソは安保理で拒否権を一度も行使していない。
 「それなのに、安保理も総会もさっぱり動かないのは、イラン、イラクとも非同盟諸国の一員だからだ。国連加盟国の一大派閥“非同盟”は、大国やグループに属さない国のことには積極的に動くが、“兄弟げんか”の仲裁は本気でしようとしない。米ソも高みの見物。どちらかが軍事的にはっきり有利になるまで、戦闘は続くのではないか。この戦争は国連が内包する弱さ、とくに安保理の力の低下を露呈した事件といえよう」
 こういうのはコロンビア大のラギー教授(国際関係論)だ。
 イ・イ戦争は、このままの状態が続けば、第四十回国連総会の会期中に開戦以来六年目に入る。創設四十年を祝う国連の上に広がる暗雲といえまいか。
(ニューヨーク=久保田特派員)
 
 
 
 
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