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私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/05/17 朝日新聞朝刊
森首相の適格性を疑う 「神の国」発言(社説)
 
 森喜朗首相の口から耳を疑うような言葉が飛び出した。
 「日本は天皇を中心とする神の国であることを、国民にしっかり承知していただく」
 国民主権に基づいて国会で選ばれた首相が、自らその根本原理を否定するような発言を行った。事態は深刻かつ重大である。
 批判の声に対し首相は、「(天皇中心は)日本の悠久の歴史と伝統文化という意味で申し上げており、戦後の主権在民と何ら矛盾しない」と反論した。「全部をきちっと聞いていただければわかる」とも述べた。
 神道政治連盟国会議員懇談会の結成三十周年を祝う会で行われた発言をどう解釈しても、首相がいうような意味は読み取れない。「昭和の日」の制定や天皇在位十年の祝賀行事と結びつけた文脈からみて、何をしっかり承知していただくか、は明らかである。
 神道政治連盟は神社本庁の政治団体だ。議員懇談会はその支持を受ける自民党議員らで構成されている。首相は結成当初からのメンバーであり、懇談会の綿貫民輔会長は旧小渕派会長だ。もともとの身内意識に加え、旧小渕派の支持や、総選挙での神社本庁からの支援を期待する気分があったのだろう。
 首相は弁が立つ。選挙遊説などでは、その場の状況に合わせ、巧みにリップサービスするのを得意としてきた。多少の脱線は許されると考えているのではないか。
 だが、いかなる事情があろうとも、首相として越えてはならない一線がある。それは、国の基本的なルール、原則にかかわる事柄だ。そこを不用意に踏み外せば、日本の国際的な信用を損ねることにもなる。
 戦前の日本では、天皇と神が結びつけられ、神聖な天皇を中心とする国家が国民を統治していた。それが、軍部による独走を許す素地となり、多くの国民が犠牲になった。アジアの人々にも惨禍をもたらした。
 その反省から戦後の日本は、天皇と政治の関係を断ち切り、国民主権を確立することで再生のスタートを切った。政教分離の原則が掲げられたのも、国家神道による弊害を繰り返すまいとしたからだ。
 この歴史の流れと、国民主権の価値の重さを自覚すれば、「天皇を中心とする神の国」などという発想がそう簡単に出てくるはずはあるまい。その分別がつかないとしたら、首相としての適格性が問われよう。
 同様の懸念を感じるのは、首相が最近、「教育勅語の中には、悪いところもあったし、いいところもあった」などと発言していることだ。親孝行や兄弟が仲良くすることを説いたくだりが、後者に当たるという。
 親孝行をしたり、兄弟が仲良くしたりするのを否定する人はいない。教育改革の必要性も、だれしも認めるところだ。かといって、その解決の手だてを、皇国史観と密接不可分だった教育勅語に求めるのは、いかにも時代錯誤の考え方だといわざるを得ない。
 注目されるのは、公明党の対応だ。支持母体の創価学会には、戦前の天皇制の下で弾圧を受けた歴史がある。どこまで厳しい態度を貫くか見守りたい。
 
 
 
 
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