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私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/06/09 朝日新聞朝刊
皇室に新しい風を(社説)
 
 キース・ジャレットというピアニストがいる。独特の演奏家である。クラシック音楽のような端正なピアニズムと、ジャズの神髄であるダイナミックな即興演奏で、ジャンルを超えたファンが多い。
 きょう「結婚の儀」をあげる雅子さんも、好きな音楽家にラフマニノフらとともに彼の名前をあげている。皇太子ご夫妻の新居から、キースのピアノが流れてくる。まさに新しい世代の夫婦ではないか。
 また、音楽の伝統を尊重しながらも、自由闊達(かったつ)な演奏をするキースのスタイルは、これからの皇室でのお二人の生き方にもつながるのではないか。
 ともに、一九六〇年代の生まれである。祖父にあたる昭和天皇の激動の一生、父にあたる現天皇の戦中から戦後へかけての青春を考えると、たいへん恵まれた世代だといえよう。そののびやかさをなくさないで新家庭を築いてほしいと思う。
 三十四年前におこなわれた「結婚の儀」をほぼ踏襲して、きょうの儀式は進められる。しかし、まわりの状況は、当時とはかなり異なっている。当然ながらさまざまに時代を反映している。
 まず、あのときほどの国民的熱狂は見られない。戦後の荒廃から立ち直り、急激な上昇カーブを描いていく昭和三十年代とは違う、いまの日本社会のある種の落ち着きを反映しているといえよう。
 雅子さんが働く女性だったこと、しかも外交官であったことも大きな違いだ。雅子さんの結婚への決断にたいしては、主に女性の立場から賛否両論、議論が沸いた。民間出身ということで、国民こぞって拍手を送ったころとは、国民の皇室観も、女性観も、職業観も確実に変化し、多様化してきたことの表れである。
 「ミッチーブーム」を加速したのは、ちょうどテレビの普及期と重なったことだった。しかし、いまや活字から映像まで、メディア飽和状態である。かつてのような新しいメディアにたいする好奇心は、つくり手にも受け手にももはやない。むしろ惰性で、似たような報道ばかり、といった上滑りのおそれがある。これは、私たちが自戒すべき点である。
 憲法に規定された「象徴天皇制」は、各種世論調査などを見ても、ほぼ八〇%以上の支持をうけ、ごく安定している。
 しかし、その中身はどうかといえば、主権者である国民と皇室との現実の関係のなかでつくられていくものである。これまでも時代を反映してきたし、今後も変化していくのは避けられまい。
 その意味で、二十一世紀の皇室をになう皇太子ご夫妻の役割は大きい。
 少し心配な点がある。この数カ月間で、雅子さんの振る舞いに変化が出てきたことだ。以前の闊達さが薄れ、遠慮がちになってきたように見受けられる。のびやかで、明るい雅子さんの魅力がおさえられているのではないか。
 ささいなことのようだが、国民と皇室との距離を象徴することである。新しい世代の一人として、ぜひ自然にその魅力を発揮してもらいたい。
 お二人は恵まれた時代に育った。しかし、この現代が平穏で、やすやすと生きられる時代であるとはとても思えない。日本をとりまく国際環境もそうだし、日本の民主主義の成熟もいまだしの感が強い。
 国民と皇室のありかたもまた、成熟への過程にあるといえよう。私たちも、ご夫妻とともに、そのありかたを考えていかねばなるまい。
 
 
 
 
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