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私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/10/23 朝日新聞朝刊
大嘗祭が静かな論争 国家行事? 天皇家の公的行事?(時時刻刻)
 
 来年秋に予定されている天皇の即位の礼や大嘗祭(だいじょうさい)の性格づけをめぐる政府部内の検討が進んでいる。問題となっているのは、宗教色が強いとされる大嘗祭と、国家と宗教の分離をうたった憲法の関係をどう位置づけるかという点。それによって、1990年度(平成2年度)政府予算案のどの費用で賄うかが決まってくる。野党側は戦前の国家神道のあり方への反省から、政教分離が貫かれるか注視している半面、天皇制の根幹にかかわるこの問題をあまりこじらせたくないとの思惑もみえる。政府・自民党は天皇の就任儀礼で国論が2分される事態を極力、避けようとしており、論争は“静かに”進行中だ。
○慎重な答弁に終始
 衆院予算委員会が始まった11日、社会党の山口鶴男書記長が大嘗祭問題に触れた。「神式でない大嘗祭は考えられない。国家行事として行うべきでない。皇室の伝統的、宗教的な私的行事とするのが、憲法に沿う道である」
 16日には、自民党の伊吹文明氏が質問。「日本の伝統を忘れては、近代国家のアイデンティティーを失ってしまう」「国事行為とするのは難しいといわれるが、少なくとも皇室の公的な行事ではないか」
 山口氏は、大嘗祭は「天皇家の私的行事」ととらえ、伊吹氏は少なくとも「天皇家の公的行事」と位置づけようとする。海部首相は「憲法の趣旨に沿って、皇室の伝統を考えて」と繰り返し、具体的な点は「即位の礼準備委員会」(委員長・森山真弓官房長官)で慎重に検討中、とかわした。
 「即位の礼」は、天皇の就任を内外に宣言する儀式で、皇室典範にも定められており、これを国事行為とすることには、まず異存は出ていない。しかし、即位の礼の後行われる大嘗祭を「国事行為」あるいは「天皇家の公的行事」とすると、その内容が宗教的色彩の濃いことから憲法の政教分離原則に照らし疑問が生じ、護憲団体やキリスト教団体などからの反発は必至。かといって「私的行事」とした場合には、神社本庁や天皇制擁護に行動的な団体が納得しない。「準備委員会」もまず有識者の意見を聴くことにしており、大嘗祭の性格づけには慎重に構える。
 結論を出すタイムリミットは来年度予算編成の12月下旬。国事行為とすれば総理府予算、天皇家の公的行事なら宮内庁予算の宮廷費、私的行事なら内廷費に計上することになる。
○大喪の礼が前例に
 11日早朝、国会近くのホテルで自民党の皇室問題議員懇話会(座長・小渕恵三元官房長官、31人)が、即位の礼に向けての初会合を開き、政府の多田首席内閣参事官らと意見交換した。大嘗祭を明確に「国事行為であるべきだ」としたのは板垣正参院議員ら2人。メンバーの大半は「個人的には、大嘗祭は国事行為としたいが、百歩譲っても皇室の公的行事とすべきだ」という線だ。自民党内の意見とりまとめ役のグループにしては穏やかな空気に、板垣氏は「はなからあきらめているのかな」。
 自民党内のタカ派グループ「国家基本問題同志会」は今年2月の大喪の際、宗教色の強い皇室行事である「葬場殿の儀」を国事行為に含めるよう当時の竹下首相に直談判に及んだ。が、今回、亀井静香座長は「大嘗祭は皇室の公的行事として宮廷費でやればよい。国論を2分する事態となるのは避けるべきだ」とトーンダウン。
 こうした流れに沿えば、政府の結論は「即位の礼は国事行為、大嘗祭は皇室の公的行事」となるようだ。昭和天皇の大喪の際、結局、大喪の礼は国事行為、葬場殿の儀は皇室の公的行事と区分けされたことも有力な前例となろう。
○野党にも重い課題
 野党にとって、大嘗祭への対応は憲法に対する基本姿勢が問われるだけでなく、その位置付け次第で出欠も左右される。19日午後、国会内で開かれた公明党の政審全体会議の冒頭、矢追秀彦副委員長は「大嘗祭を国事行為とすることは現行憲法に抵触し、反対だ。皇室の公的行事とすることにも疑問があるので、十分検討してもらいたい」と発言した。
 民社党は10月末に対応策をまとめる予定。「大嘗祭は特定宗教の布教を目的とするものではない」(政審事務局)との立場で、皇室の公的行事とすることに異論なさそう。むしろ「社会党はどうするのか。国民意識とずれてしまうのでは」と、社会党の出方に関心を向けている。
 その社会党は、象徴天皇制を認めているものの、大嘗祭を皇室の公的行事とすることは政教分離原則から違憲との見方。皇室の私的行事として内廷費を充てることにも「神たらしめるような趣旨の行事なら、疑問が残る」と山花貞夫副書記長。共産党は、「大嘗祭は神道の中核的な呪術的儀式である」として、やはり内廷費を支出することにも大きな問題があるとしている。
 社会党は、この問題を担当する山花氏がパチンコ献金問題の処理に追われていることもあって、政府側への申し入れ、水面下の折衝なども進めていない。「皇室の公的行事」とする線が強まる中、憲法との整合性をどうつけるのか、野党にとっても重い課題だ。
<大嘗祭>
 天皇が即位の礼後、初めて収穫された新穀で作った御食御酒(みけみき)を天神地祇(てんしんちぎ)に供えるとともに、自ら食し夜を明かして豊年を祈る祭祀(さいし)。悠紀殿(ゆきでん)、主基殿(すきでん)と呼ばれる特設の大嘗宮をつくる。この儀式は、天皇代々に伝えられる秘儀とされる。旧皇室典範では条文化されていたが、現皇室典範では削除されている。
 
 
 
 
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