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私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/01/15 朝日新聞朝刊
各種力学の中で 国民主権と接点課題(政治の中の天皇:8)
 
 論争避け象徴定着探る
 「日本国憲法を守り、という天皇陛下のお言葉のくだりを耳にした時、はっとしました」。9日午前、自民党本部の一室で「即位後朝見の儀」の模様をテレビで見ていた幹部はこんな感想をもらした。自民党は政策綱領で「時代の変遷に即して現行憲法の改正を検討」とうたう「改憲政党」だ。「故陛下があまり触れられることのなかった憲法にあえて言及されたのは、時代の変化と陛下のお気持ちだろう」と複雑な表情だった。
 新天皇陛下のお言葉は「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い、国運の一層の進展と世界の平和、人類の福祉の増進を切に希望してやみません」というものだった。
○TV放送にも配慮
 お言葉の中に憲法のくだりを入れたことについて宮内庁幹部は「新天皇のこれまでのご発言やご発想から推測して作った」と説明する。朝見の儀には約110人の婦人が出席した。故陛下のときは女性は招かれなかった。今回、宮内庁はひとりでも多くの女性に出席してもらおうと「服装は悩まないで下さい。一般的な礼服でもいいですよ」と働きかけたほど。テレビ放送にも力を入れ全国に流れるよう配慮した。新天皇陛下の登場をいかによく印象づけようとしたか政府の努力がうかがえる。
 近年、各種世論調査で国民は新憲法下の天皇制に高い支持率を示している。1986年(昭和61年)3月実施の朝日新聞世論調査では「天皇は今と同じ象徴でよい」と答えた人が84%にのぼった。「天皇制は廃止する方がよい」は9%。「天皇の権威を高める方がよい」は4%だった。象徴天皇制定着の数値がある一方、国民のさめた反応もあって、自民党内の一部には現状に対する不満や危機感がくすぶり続けている。
○将来に不安の声も
 一昨年9月22日午後5時41分、大相撲で全勝の小錦と1敗の大乃国という注目の対戦が始まろうとした時、NHKは中継を中断し、故陛下の手術について発表する記者会見の模様を放映した。直ちに「なぜ中断するのか」という抗議電話が殺到。NHKの調べによると、問い合わせも含め全国で約2300件になった。故陛下のご逝去に伴い各テレビ局が終日、陛下や皇室に関する特別番組を流し続けた8、9の両日、レンタルビデオ店が繁盛するという現象も起きた。こうした反応が、右派勢力を刺激してもいる。天皇制の将来に不安を抱く声が早くから出ていた。
 86年秋、自民党右派議員の1人、故玉置和郎・元総務庁長官が中曽根首相(当時)のもとを訪れ「皇室敬愛意識の高揚のために」と題するリポートを提出した。リポートは「天皇は何かと問われても象徴といった通りいっぺんの回答しかなしえないのが現在の若者の意識状況だ」「ともすれば新天皇の時代への不安を表明する向きもある」と指摘し「皇位継承をめぐる一連の儀式を通じて、皇太子殿下を偉大なる天皇ならしめるであろう」と、儀式による権威づけを提唱している。
 9日朝、自民党の右派議員で作る国家基本問題同志会(亀井静香座長)が「一部左翼からのイデオロギー論争にとらわれず、政府は大喪の礼を古式伝統にのっとって国家行事として行うべきだ」と政府・自民党幹部に申し入れたのもその流れだ。
○意味づけに触れず
 朝見の儀のお言葉について政府首脳らは、竹下首相が式直後に「お言葉は閣議決定したものでございますから、その通りでございます」と述べたように、意味づけなどについては触れたがらない。「護憲」「改憲」といった形の政治論争に巻き込まれるのを避け、反応をみながら、象徴天皇定着へ布石を打っていく構えのようだ。
 一方、野党側は共産党を除いて、象徴天皇制が国民の間で定着しているとみている。「即位後朝見の儀」のお言葉に「憲法を守る」という表現が入ったことを評価した。社会党は「大喪の礼」などの国事行為としての儀式が政教分離で行われることを要求、さらに「天皇の政治利用」を警戒する。共産党は天皇制廃止を綱領で打ち出しているが、憲法に定められた国事行為の範囲を超えて「天皇が国政に関与している」との見方から、憲法の順守をより強く主張、今後も厳しいチェックをしていく方針だ。
 こうした様々な政治力学の中で、「平成」がスタートした。即位にあたって強調された「日本国憲法」は国民主権を前文で宣言するとともに1章で象徴天皇制を規定している。その兼ね合いは、平成の時代も主要な争点として論議され続けることになりそうだ。(おわり)
 
《メモ》「おことば」と憲法
 故陛下は国会の開会式で「おことば」を述べられているが、最近は憲法に触れる表現はなくなっている。憲法の言葉が出てくるのは1968年(昭和43年)12月の60臨時国会開会式が最後。「全国民が相協力して、憲法の理想とする民主主義の本義を守り、民生の安定と経済の発展とに不断の努力を続けていることは、深く多とするところであります」としている。
 
 
 
 
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