日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/01/14 朝日新聞朝刊
様々な野党の目 歴史の違い映す対応(政治の中の天皇:7)
 
 「人間天皇のご逝去を悼む」の大見出しが躍る社会党機関紙「社会新報」が配達された10日、党本部には「なぜ天皇の戦争責任を追及しないのか」という批判や「なぜ『崩御』という言葉を使わないのか」といった疑問まで、さまざまな声が寄せられた。
○「戦争責任」使わず
 「反戦・平和」の党として、故陛下の戦争責任を無視できないが、一方で、象徴天皇制の定着が進んでいる現実もある。戦前・戦後と2つの顔を持った故陛下への評価をどう調和できるのか。そこに苦慮した社会党は、一昨年秋以来、党内のプロジェクトチームで議論を重ね、(1)象徴天皇制は支持する(2)政教分離の原則は貫く(3)天皇の政治利用や過剰な礼賛には反対する、などの基本点を確認した。
 7日の土井委員長の声明も、「謹話」にはせず、国民にわかりやすく「お悼みの言葉」とした。ただ、戦争責任については「(昭和という)時代に刻まれた誤りの歴史は内外に大きな犠牲をしいた」と間接的な表現にとどめ、社会新報の社説で「天皇の大権とその威を借りた軍部によって戦場に駆り立てられた」とより表現を強めたものの「戦争責任」という表現自体は使わなかった。
 土井委員長は7日午前、中央執行委員会の了承を得て、弔問の記帳をした。昨年9月の病気見舞いの記帳の際には、女性支持者らから批判を浴びたが「社会党が天皇制否定ではないことを印象づけるために、やむをえない選択」(党幹部)という判断も働いたようだ。
 天皇をめぐる社会党内の空気はこの十余年で大きく変わった。天皇在位50年式典には「天皇の戦争責任を不問に付した反動的軍国主義思想に貫かれたもの」と強く反対したが、60年式典では批判がトーンダウン。戦前の天皇制のシンボルと批判されていた生存者叙勲でも、1970年(昭和45年)春を境に続々受章している。党内では「国民感情と遊離して、戦争責任ばかり言うと選挙に響く」といった議論も聞かれた。
 ただ、天皇の元首化や、靖国神社国家護持などを求める改憲勢力の復古的な動きには強く警戒し、中央執行委員会声明で大喪の礼を神道儀式と切り離すよう求めたほか、来年に予定される大嘗祭(だいじょうさい)も、国家行事として行われることには強く反対している。
 公明、民社両党は一連の儀式への参加を明らかにしているが、哀悼の意を示した両党の「謹話」ではニュアンスの違いも目立つ。
○戦前への言及に差
 民社党が「戦前の統治権の総攬(そうらん)者から象徴天皇へと変わられたが、陛下は常に日本国民の心のよりどころだった」として、戦前と戦後を一体としてとらえているのに対し、公明党は「長きにわたり、日本国および日本国民統合の象徴としてわが国の平和と繁栄に心を砕かれた」と「戦前」には一切言及していない。
 公明党は天皇在位50年式典には「政治色の強い式典には賛成しがたい」と反対したものの、60年式典では「天皇に対する国民感情は変わった」と賛成に回った。しかし、支持母体である創価学会の牧口常三郎初代会長が戦前、治安維持法、不敬罪で検挙され獄死した歴史が、公明党の「謹話」にも微妙に投影されているようだ。
○弔詞議決も不参加
 共産党は10日付の党機関紙「赤旗」で、宮本議長は故陛下を「日本歴史上最大の惨禍をもたらした人物」と断じ、その戦争責任を追及した。故陛下が大正天皇の摂政になったのは1921年。その翌年、共産党が創立された。その歴史は「天皇制反対で最初から徹底的に弾圧され、たくさんの人が迫害され、殺された。時代的には(天皇と共産党は)対極の関係」(宮本議長)でもある。
 戦後の象徴天皇制に対しても「主権在民と矛盾する」との立場をとり、天皇が国会の開会式に出席することに反対している。9日の国会での弔詞の議決に対しても一切加わらなかった。
 共産党が昨年9月以来、「赤旗」で続けている反天皇キャンペーンは党の“原点”にかかわる問題だが、同時に、最近の党勢頭打ちの状況の中で、支持層を拡大する格好の“武器”になるとの計算も働いている。「この3カ月間で『赤旗』の部数は約4万3000部伸びており、予想以上の手ごたえだ」(金子書記局長)という。他の野党は「国民の反発を受けずに支持層が広げられるのだろうか」(社会党幹部)と冷ややかだ。
 故陛下のご逝去に対する野党の対応は大きく分かれたが、その違いには、各党の歴史がそれぞれにじみ出ているようだ。
 
《メモ》叙勲
 毎年春秋2回行われている生存者叙勲は1964年(昭和39年)に復活した。天皇の名による叙勲は戦後、連合国軍総司令部(GHQ)の指令で中止されていた。現行憲法には天皇の国事行為として「栄典を授与すること」との規定がある。勲章は最高位の大勲位菊花章頚飾(けいしょく)から勲8等瑞宝章まで28段階。政治家は閣僚経験や議員勤続年数など、財界人は公的団体役員などの経験の有無が考慮されるが、基準はあいまいで“官高民低”といわれる。
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。








サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
32位
(28,901成果物中)

成果物アクセス数
231,735

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年6月10日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【北朝鮮について】
2.私はこう考える【中国について】
3.私はこう考える【ダム建設について】
4.私はこう考える【死刑廃止について】
5.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
6.私はこう考える【国連について】
7.私はこう考える【自衛隊について】
8.私はこう考える【憲法改正について】
9.私はこう考える【教育問題について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から