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私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/01/13 朝日新聞朝刊
公的行為の攻防 憲法に規定なく拡大(政治の中の天皇:6)
 
 国民主権絡み常に論争
 「わが党は護憲の党だ。憲法に規定された、象徴天皇としての国事行為の範囲内のことに対応するのは当然だ。ただ、国事行為と私的な皇室行事の間にあいまいな公的行為がある。この点はきちっと区別して対応するつもりだ」
 故陛下のご病状急変直後の昨年9月26日の朝。社会党の山口鶴男書記長は総評の単産代表者会議で「天皇が亡くなられた時、社会党や総評が右往左往しないように方針を示してほしい」との質問に答えた。
○枠組み逸脱を警戒
 書記長発言は、天皇の行為が「公的行為」の名目で現行憲法の枠組みを乗り越えて広がらないよう、厳しく点検する考えを強調したものだ。これまで社会党は(1)憲法4条は「天皇は、この憲法の定める国事行為のみ」を行う、と明記しており、国事行為以外は慎むべきだ(2)政府は、公的行為の名のもとに、天皇の行為を拡大させ、天皇の権威強化、政治利用を図るべきでない――と主張してきた。
 政府は天皇の行為について(1)憲法上の国事行為(2)象徴としての地位を反映しての公的行為(3)全く純然たる私的行為、に分類して説明してきた。公的行為については憲法に明文規定がなく、そうした天皇の行為を認めるかどうか、認める場合に何を根拠とするか、など論議を呼んできた。
 公的行為といわれるものをあげてみると、地方視察(1946年=昭和21年=から)、国会開会式への出席(47年から)、新年一般参賀(48年から)、国民体育大会出席(49年から)、全国植樹祭出席(50年から)、全国戦没者追悼式出席(52年から)、園遊会開催(53年から)・・・。東京五輪開会宣言(64年)、万国博覧会出席(70年)、欧州訪問(71年)、札幌冬季五輪開会宣言(72年)、米国訪問(75年)なども含まれる。
○外交でも疑問指摘
 国会でしばしば問題となったのが天皇の外交的活動。元首のように外国元首を接待したり、外国を訪問したりすることが「天皇は国政に関する権能を有しない」とする憲法とのかねあいで許されるのか、という疑問だ。
 84年9月6日、全斗煥韓国大統領を皇居に招いた晩さん会で、故陛下は「今世紀の一時期において両国の間に不幸な過去が存したことは誠に遺憾であり、再び繰り返されてはならないと思います」と「おことば」を述べられた。戦争責任に触れたものとして注目を浴びたが、一方ではどのような権限によるものか疑問が指摘された。
 閣僚らの内外情勢の報告(内奏)では、73年5月、天皇とのやりとりを明らかにした増原恵吉防衛庁長官が「天皇の政治利用だ」との批判を浴びて辞任した例があるが、内外情勢報告をお聞きになることも公的行為といわれている。
 公的行為の範囲や限界がはっきりしないことも、論争が続く原因のひとつ。政府答弁では、国政に関する権能や政治的意味を含まないこと、象徴天皇の性格に反しないこと、などを公的行為の限界にあげている。国会ではひとつひとつの具体的行為について、公的行為かどうかが論議され、例えば天皇の靖国神社参拝については、75年11月20日の参院内閣委で「私人がお参りをするのと実質においては何ら異なるところがない」という政府見解も示されている。
○世論の監視不可欠
 新天皇陛下もすでに、公的行為をめぐる論議の渦中に巻き込まれている。皇太子時代の87年9月、米国特派員団の質問に文書(英文)で「天皇には、憲法で国事行為として規定されたもの以外にも、国家の象徴としておこなうべき行為があります」と回答された。
 従来の政府見解を追認されたものだが、共産党はさっそく「皇太子が象徴としての行為は当然であるかのような憲法解釈をしたことは、それ自体が重大な政治関与であり、違憲行為の承認を迫るもので断じて容認できない」と批判した。
 公的行為について樋口陽一東大教授は「注釈・日本国憲法」(上巻)で次のように解説している。
 「象徴としての公的行為は内閣の直接、間接の補佐と責任のもとで行われるが、内閣の関与が天皇の非政治化のための十分な歯止めにならないことは十分注意しなければならない。天皇の政治化は決して天皇親政的なものばかりでなく、内閣による天皇の政治的利用に外ならない。世論の監視が不可欠だ。天皇を象徴の地位においていることは国民主権を根本原理とする憲法にとって微妙な緊張関係をもたらすものだという自覚を国民はもち続けなければならない」
 
《メモ》天皇の国事行為
 憲法4条は「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」としている。6条は、首相と最高裁長官の任命を明示し、7条は(1)憲法改正、法律などの公布(2)国会召集(3)衆院解散(4)総選挙の公示(5)閣僚らの任免や全権委任状、大公使の信任状の認証(6)大赦などの認証(7)栄典授与(8)批准書などの認証(9)外国大公使の接受(10)儀式を行うこと、の10項目をあげている。
 
 
 
 
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