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私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/01/11 朝日新聞朝刊
世界の弔意と厳しい目と(社説)
 
 「エンペラー・ヒロヒト逝去」のニュースは、全世界をかけ回った。かつて干戈(かんか)を交えた国、わが国が侵略した国、併合した国、同盟を結んだ国・・・それぞれ歴史的背景は違うが、ほとんどの国が公式には深い哀悼を表明している。数日間、喪に服した国もある。
 これは亡くなられた天皇ご自身が戦後、欧米を訪問し、また来日した各国首脳との会見を通じて、戦争の傷跡をいやすべく努力された結果でもある。と同時にわが国が戦後、平和外交に徹し、各国との友好に努めてきたことや、わが国の経済力が国際社会で大きな比重を占めるに至ったことの反映でもあろう。
 しかし、ご逝去に関する世界の主な新聞論調をみると、戦争とその責任の問題に言及し、厳しい指摘をしているものも少なくない。それは天皇制に対するだけでなく、歴史認識を含めたいわば昭和期の日本、および日本人に対して世界が厳しい目を向けていることを示している。
 ニューヨーク・タイムズの社説は「(天皇の)至高の地位からすれば、世界が際限のない悲劇から免れるのに寄与できたかもしれない」と書き、「彼は、日本が太平洋の隣人にもたらした荒廃に対し、一定の責任を負っている」としている。
 捕虜虐待問題が繰り返し語られる英国では、タイムズが「世界の多くの人々はヒロヒトを、彼の名の下で侵略戦争が行われたことによってのみ記憶していくだろう」と書いている。
 こうした指摘がすべて正しいかどうかはともかく、戦後40余年を経て戦争の傷跡はなお深く、それがいやされるまでにはさらに長い時間が必要なのだと改めて思う。歴史的事実や現実は、たとえつらいことであっても認めるべきは認め、この傷をいやしていく努力を今後も続けていかなければならない。
 とくに一方的な日本の侵略を受けたアジアの国々の見方は、いっそう厳しいものがある。肉親を殺されたり、言葉や名前を奪われたりした人々からすれば、その暗い思い出が忘れられないのは当然だろう。
 韓国各紙の論調は予想通り厳しいものだった。東亜日報は「アジア諸国に対する日本の支配が『天皇』の名で行われたことは厳然たる事実である」としたうえで、「わが国に残した傷跡はまだ深い。にもかかわらず、彼の戦争責任は峻厳(しゅんげん)に問われてはいない」と指摘した。そして「平成時代」には「その過ちの前轍(ぜんてつ)を断つ新しい進路の再定立を」と求めている。
 中国の報道は地味だったが、戦争責任問題について中国の態度が変わったわけではない。むしろ日中関係を配慮して自制していると受け止めた方がよいだろう。
 東南アジアの国々もそれぞれに複雑な思いを抱きながら、友好関係の発展の期待を表明している。だが、各紙の論調の底に流れているものは、いまわしい戦争である。
 それを表だって言うかどうかは別にして、アジアの国々から寄せられた公式の弔意の裏に、こうした気持ちが込められていることをわれわれは忘れてはならない。
 西ドイツのワイツゼッカー大統領は敗戦40周年にあたり、ナチスの戦争犯罪についてこう演説した。「若い人たちには、当時起きたことに責任はありません。しかし、彼らも歴史から生じたものには責任があります」
 新天皇が即位され、戦争に直接かかわった世代は少なくなった。しかし歴史の残した責任は、戦争を知らない世代にも引き継がれて行くべきものではなかろうか。
 
 
 
 
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