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私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1987/10/25 朝日新聞朝刊
天皇陛下の「おことば」に揺れた沖縄県民の心
 
 沖縄戦に触れた天皇陛下のおことばが24日、南部戦跡にある平和祈念堂で皇太子さまによって代読された。いたわりと励ましのこもったおことばだったが、同県民への謝罪はなかった。これを聞いた県民各層からは「陛下の真心」「自らの責任を語っていない」「おことばの内容だけで判断すべきではない」などとさまざまな意見が出て、揺れ動く沖縄の心を示した。
 「おあずかりしてまいりました」と皇太子さまは切り出し、おことばを代読された。独特の高い声が、「世界の7つの海」を象徴した7角形の沖縄平和祈念堂のドームに響いた。
 元沖縄県知事、屋良朝苗さん(84)は最前列でつえをついて聞いた。「戦争に悲しみ、苦しんだ県民に対するねぎらいに満ちていた。海洋博の時と同じような内容だったと思うが、今度は陛下のおことばだけに重みもある。沖縄戦についても十分触れられていた」と静かに話した。さらに「おことばの内容だけで判断すべきではない」。皇太子ご夫妻が、まず沖縄戦の激戦地だった南部戦跡を訪れ、平和祈念堂が、おことば伝達の場に選ばれたことは「沖縄戦のことを陛下が強く思って下さった結果」という。
 おことばを代読する皇太子さまの背後には、祈念像が合掌し、平和の願いを込めた無数の折りづるがある。説明板には「去る大戦で最も悲惨な戦場となった沖縄県」と書かれていた。
 「真心がこもっていた」と、沖縄県女師一高女ひめゆり同窓副会長の嶺井百合子さん(76)は、受けとめた。「陛下が『沖縄戦は悲惨だったね。たいへんだったんでしょう』とおっしゃってくださったんです。あとはご自身で、ご参拝いただけたら・・・」と話した。
 沖縄平和祈念堂のある地元糸満市の代表の1人として、特別奉送迎者に選ばれた大田寛(みのる)摩文仁区長(47)は「一般住民を含む数多(あまた)の尊い犠牲者を出し・・・のくだりが胸にしみました」。大田さんは終戦の時は5歳。沖縄戦で死亡した沖縄師範学校の職員、生徒304人を慰霊する「健児の塔」のすぐそばの壕(ごう)にひそんだ。「泣き声がうるさいからと、乳児を母親が外に連れ出し、捨ててきた。その悲しい姿が忘れられない。きょうのことばで、慰めになります」
 戦後生まれの糸満市内の主婦(37)は「たまにしか沖縄に来られない人たちだから、行って見ようという軽い気持ち。親類や家族に戦争の犠牲者はいますが、それは考えないことにしています。君が代だって歌えばいいですよ。沖縄も日本だから」と屈託なく話した。
 厳しい批判の声もあった。この日、沖縄本島中部・読谷村での「天皇の戦争・戦後責任を告発する集会」に参加していた源河朝徳・沖縄県高教組委員長は「ひと言でいえば、自らの戦争責任を回避した内容だ。『数多の尊い犠牲者を出した』というが、天皇の名において犠牲者を出したのではなかったのか。『戦後も長らく多大の苦労を余儀なくされてきた』とあるが、戦後、本土と沖縄の切り離しに合意したのは天皇ではないか」と怒る。
 新崎盛暉・沖縄大学長も同じ意見だ。「あまりにも陳腐というか、無味乾燥なことばだと思う。どんな立場にせよ、沖縄の民衆が聞きたかったことは、すでに日本の敗北がだれの目にも明らかな段階で沖縄戦に突入したのはなぜか、戦後アメリカが沖縄を支配することが望ましいとした、いわゆる天皇メッセージは何であったか、ということだ。これだけのことばを述べるのに、42年の歳月とこれだけ大仰なおぜん立てを必要とした天皇制とは何か、を考えずにはいられない」
 沖縄大学4年生でジャーナリズム研究会部長の長峰哲さん(21)は「沖縄戦を起こした天皇の責任は消えない。ただ、戦争責任論議ばかりだと、問題意識は今の天皇の代で終わってしまう恐れがある。僕たちの世代は、根本的に、民主主義と天皇制が両立するものかどうか、改めて考えてみる必要があると思う。沖縄だけの問題じゃない」と言った。
 口をつぐむ人も。沖縄戦で妻子6人を亡くした糸満市名城、無職伊敷義光さん(80)。「私たちの時代は戦争と一緒に終わりました。簡単に戦争の話はできません。感想を言えるのは、働いている若い人たちでは」
 
 
 
 
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