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私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1986/04/30 朝日新聞朝刊
これからの天皇を考える(社説)
 
 天皇陛下85歳のお誕生日におこなわれた政府主催の「天皇ご在位60年記念式典」は、6000人の参列者が見守るなか、無事に終わった。
 式典を祝って少年少女が歌う「箱根八里」など日本のメロディーの数々に、身をのりだすようにして耳をかたむけ、曲が終わるごとにだれよりも懸命に拍手を送られる天皇の姿は、とても印象的であった。
 天皇のご長寿は国民の大多数が願っていることである。ただ同時に、こんどの式典に最初からつきまとった一種の政治色に、不安の気持ちをいだく人も少なくなかった。社会、共産両党が党として式典の開催そのものに反対し、参加を拒んだのは、そうしたことの反映と思われる。
 この60年を振りかえるとき、国民ひとりひとりにそれぞれの感慨がある。特に前半の20年間は、昭和という元号に込められた平和の願いもむなしく、わが国は内外の多くの人びとに多大の苦しみを与えた。
 天皇はこんどの式典で「昭和の60年の歳月を顧み、先の戦争による国民の犠牲を思うとき、なお胸が痛み、改めて平和の尊さを痛感します」と述べられた。
 10年前の在位50年式典の際のお言葉とほぼ同じだが、こうした反省と平和への熱望は、国民すべてに共通するものであり、今後も10年たとうが20年たとうが、決して変わるものではあるまい。
 ご在位60年という1つの節目にあたって考えたいことがある。
 第1は、象徴天皇制の再確認である。朝日新聞社の世論調査によれば、「天皇は今と同じ象徴でよい」とする人が、常に80%を超えており、新憲法が定めたこの方向は国民の間で定着した、と見ることができよう。国民の圧倒的多数が象徴天皇制を支持している、というこの事実を大切にしたい。国民から遊離して天皇制は成り立たない。
 最近、天皇制のあり方について、さまざまな意見が出されている。議論は大いに結構だが、注意を要するのは、象徴天皇制についての憲法の規定と国民の圧倒的支持という事実に目をつぶり、天皇の地位をもっと強化しようとする兆しが見え始めたことである。
 国家秘密法の必要を説くのに天皇制を持ちだしたり、あるいは皇室を露骨に政治的に利用しようとしたりすることは、国民の多くはもちろん、天皇ご自身も望まれるところではあるまい。
 象徴という言葉があいまいなだけに、私たちは常に憲法の精神にのっとって、象徴の性格がゆがめられないようにしていきたい。
 第2は、天皇のご健康の問題である。ご壮健な様子は今回の式典でもうかがわれたが、なんといっても高齢である。これからも長くお元気でいていただくため、なんらかの対応、気配りが必要ではないだろうか。ご自分のことについては言いだしにくいお立場だけに、政府や国会の配慮が望ましい。
 憲法は「天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる」と規定しており、国事行為の臨時代行に関する法律も、すでにできている。
 憲法で定められた天皇の国事行為の多さを思うとき、また国際化の波と同時にふえ続ける外国からの賓客の多さを思うとき、こうした激務を、85歳の天皇お1人にゆだねていいものかどうか。
 お仕事の一部を、憲法の規定に従って、皇太子に委任することはできないか、といった問題を、そろそろ国民みんなで考えてよいのではなかろうか。
 
 
 
 
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