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3)水環境
(1)水質
 十和田湖の透明度は、昭和初期には20mあったともいわれているが、1985年(昭和60年)の観測では12.3m、1995年(平成7年)には8.0mにまで低下した(図2-3-1)。また、CODは1987年以降、環境基準値(1.0mg/l以下)を達成できない状況が続いている(図2-3-2)。この原因を究明するため、青森県と環境庁国立環境研究所(当時)が共同で、1995年(平成7年)から3年間に渡って「十和田湖水質汚濁機構解明調査」を実施し、その結果、1985年(昭和60年)頃から、ヒメマス、ワカサギ、さらには、これらの餌であるプランクトン等が構成する生態系に変化が生じ、この現象が水質に影響を及ぼしている可能性が認められた※17 7)
 また、1998年(平成10年)度からは、水質改善及びヒメマス資源量回復のための具体策を提言することを目的とした「十和田湖水質・生態系調査」を環境庁国立環境研究所(当時)、水産庁さけ・ます資源管理センター(当時)、青森県、秋田県が共同で実施し、2000年(平成12年)度にこの調査による「十和田湖の水質・生態系管理に向けた提言」が提出された。この提言をもとに、青森県及び秋田県は、水質改善及びヒメマスの資源量回復のための具体的な方策を示すため「十和田湖水質・生態系改善行動指針」を策定した7)
 
注)
上図は青森県の公共用水域水質測定結果(st.5)の1980〜2001年までのデータをもとにした。
 
注)
上図は青森県の公共用水域水質測定結果(st.5、st.9)の1978〜2001年までのデータをもとにした。
 
−st.5(中央)、st.9(子ノ口)−
(この地図の作成にあたっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(行政界・海岸線)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用した。承認番号−平15総使、第579号)
 

※17高村8)によれば、「1980年代半ばに意図せずに導入されたワカサギが、餌(大型の動物プランクトン)をめぐってヒメマスと強い競争関係を惹き起こした。その結果、動物プランクトン群集への捕食圧が上がり、動物プランクトンが大型のハリナガミジンコとヤマヒゲナガケンミジンコから小型のゾウミジンコとワムシにシフトした。そして、この動物プランクトン群集の小型化が透明度の低下をもたらしたと考えられた」としている。







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