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1-2-2 大湊の造船
(1)歴史に残る軍船の建造
 
 大湊は、造船所としても繁栄したが、この中でも古くから軍船の建造をおこない、日本の戦乱史において、造船所として重要な役割を果たしていた。
 
表 大湊の軍船建造の歴史
年代 概要
神話年代 ■神功皇后の新羅遠征時における兵船の建造
鎌倉時代 ■源頼朝による軍船の建造
南北朝時代 ■北畠親房と熊野水軍の連合による軍船20余隻の建造
織豊時代 ■九鬼嘉隆による鉄甲船の建造
■朝鮮出兵時における日本丸の建造
 
(2)商船等の建造
 
 軍船だけでなく多くの商船も大湊において建造されており、それとともに鉄工業の発達もみられた。江戸時代には、家釘、船釘、錠を製作する業者が大湊に100戸以上も集積していたといわれている。
 歴史に残る主な商船等の建造の記録は、下表のとおりである。
 
表 大湊の主な商船等の建造の歴史
年代 概要
江戸時代
(初期)
■角屋七郎次郎による大湊での建造船での安南(ベトナム)への渡航
■徳川家光の伊豆伊東での大船安宅船建造の際の大湊出身棟梁、内田三郎右衛門による技術指導と、大湊からの船大工の出向
江戸時代
(中期)
■伊能忠敬の北海道、北陸道の測量の際の測量船の建造
江戸時代
(末期)
■幕末における幕府の船舶建造奨励による造船業の活況期
 
 
 伊勢船の構造上の特徴を、石井謙治著「和船史話」より、整理すると以下のとおりである。
(1)船首に「戸立水押」が採用されている。
(2)船底構造は、敷構造が採用されている。
(3)船体構造は、棚板構造即ち棚(外板)と敷による船体縦強度を担い、横強度は、横梁にて棚板を支える仕様となっている(和船構造に共通の構造)。
 
図 和船船型の例
 
伊勢の歴史ある木造船の図面としてわが国で唯一残る「伊勢船型安宅船図」(長崎県立図書館蔵書)

(資料)「和船史話」石井謙治著より







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