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ムラサキイガイの生態研究
社団法人 国際海洋科学技術協会
山下 恵美子
 
 海の幸ムラサキイガイ、イタリア料理のムール貝といえばご存じの方も多いはず、もともとヨーロッパ産の貝だが、船に連れられて日本沿岸にも入り込んだ。
 水面に漂う微生物をエサにしているので、富栄養化の進んだ海域がムラサキイガイの好む場所です、近年海の幸であるムラサキイガイが汚染のため食べられなくなりつつあるとの見方もあり、水質のバロメーター的役割もになっていることから、広域にわたり調査・研究をしてみようと思います。
 とりあえず現時点でわかっていることを少々明記したいと思います。
1. ムラサキイガイの特徴
植物プランクトンをエサとして、余剰塩類を吸収する生物
*特徴を生かした例
 養殖場とその周辺の環境は、常に清浄でなければいけない、魚が食い残した餌や排泄物は海を汚染し、海底に沈殿した残りのエサなどは、やがて微生物に分解されて無機化するわけで、海はきれいに見えるが無機塩の多い(富栄養化)した状態になる、これは植物プランクトンや赤潮の原因にもなる微小藻類が増えてしまうのです。
 そこで養魚場環境保全の役目に、ムラサキイガイが候補にあげられるのではないかと思われます。
2. カキ養殖業者への対応
 ムラサキイガイの足から分泌する足糸と呼ばれる糸でカキに着き、蛎殻の開閉を妨げてしまい、カキのエサになるプランクトンを食べてしまう。
*養魚には利点でもカキ養殖には問題がある、
3. 食用としては?
 日本では、アサリ、カキのようにムラサキイガイを食卓にのせる家庭は依然としてすくないが、東京の百貨店の食品売場でも少しずつ姿を見かけるようになった、目本は食料自給率の低い国であるからして将来的に可食生物資源確保の為にも、研究は必要であると思われる。
4. 飼育法の研究
 稚貝を付着させたロープか綱を生け簀の間に吊り下げておくと、貝はプランクトンをエサとし、成長する。
 ムラサキイガイの生態は付着、汚染防止と考えられているが、食糧資源の確保と海の環境保全という観点から研究するかちはあると思われる。
5. 瀬戸内海におけるムラサキイガイ
 人間活動の盛んな沿岸域では、多くの場合海面に薄い油の膜ができ、陸地から流れ込む様々な物質が海面の油膜に吸着される、農薬の中で乳化剤を使って散布されるものは油に溶ける性質のものでこれが油膜に吸着し微生物を経てムラサキイガイに取り込まれる、それは高い農薬濃度になるのがムラサキイガイの特徴である、このため20年余り前からムラサキイガイを食用に出荷しないように指導されている、ちなみに日本海側は食用が認められている、日本海の水質が瀬戸内海に比べて良いという事なのだろう、しかし高い生物濃縮能力を持っている貝であることから、環境ホルモンなど新しい汚染にも注意が必要であると思われる。
プロローグ
 本来、海の栄養をしっかり蓄えてくれる、すばらしい優等生的貝が人間の為に不要になることのないよう、しっかりとした早急な研究が望まれるところです、また協会の会員のアイデア等をふまえ、よりよい方向に研究に着手したいと思っております。
 
日時 平成15年2月21日 PM4:00〜
場所 日本財団ビル2F 第6会議室
参加委員
梶原 武 (農学博士)
坂口 勇 (農学博士・(財)電力中央研究所)
高田 秀重 (理学博士・農工大学 助教授)
石井 晴人 (農学博士・東京水産大学助手)
渋谷 正信 ((株)渋谷潜水工業)
鬼頭 誠 (工学博士・緑と水の協会)
牧原 康 (朝日丸建設(株))
寺本 俊彦 (理学博士・(社)国際海洋科学技術協会会長)
猪口 茂樹 ((社)国際海洋科学技術協会事務局長)
山下 恵美子 ((社)国際海洋科学技術協会研究部)
 
1. 会長挨拶・寺本会長
 これからは海の環境改善等、協会としても取り組んで行きたい希望があり、今回のテーマであるムラサキイガイは、まだ解明されていない分野もあり、これからの研究によって、廃棄物にされている東京湾でのムラサキイガイの利用法等、妙案を期待したい。
 委員の方々の率直なご意見をお聞かせいただき、今年度は調査研究として取り組んで行きたい。
2. 委員紹介
自己紹介・今年度の抱負
3. 本年度1年間の研究目的
* 水質浄化に役立てられるであろうか。
* 食料としての貝にあてはめられるであろうか。
渋谷:採集場所として東京湾でもかなり広いので、3地点であれば、どの場所に決めたらよいでしょうか?
梶原:川崎近辺・東京湾の中心あたりで風の塔・千葉の木更津あたりはいかがでしょうか、ほんとうはミドリイガイの研究も含めなくてはいけないと思いますよ。
寺本:そのミドリイガイってどのようなものでしょうか?
梶原:ムラサキイガイに似ていますが、けっこうきれいなみどり色の貝です、最近は東京湾でも多く見られます。暖かい海水でしか生息できませんが。
渋谷:そうですね、みどり色の貝もいますね。最近増えていますよ。
山下:坂口先生の研究所で拝見いたしましたが、ほんとにきれいなみどり色でしたね。
坂口:そうですね、ミドリイガイが多くみうけられるようになりましたね。
高田:採集するサンプルはブイに付いている貝などはどうでしょう、岸から離れていたほうがデーターは安定していると思いますが。
山下:風の塔はいいですか?
高田:風の塔はぼくも採集したい場所でした、ちょうど良い場所だと思います。
渋谷:それでは、海図がありますから、検討しましょう。
寺本:先ほどのミドリイガイの件ですが、食べられますか?
山下:私はハワイで食べましたよ、カキとならんでいました、おいしかったですよ。
梶原:どのように食するか、というのも研究する必要がありますね、フランスあたりでは2週間ばかり、きれいな海水で浄化してから出荷しているようですが、日本ではまだまだ普及していませんね。
山下:さっそく4月には採集開始ですが、
梶原:東京湾は春夏秋冬の4回、地方に関しては数回程度で本年度はようすを見ましょう、ミドリイガイもできれば調査して・・・。
寺本:そんなに沢山ミドリがいますかね。
梶原:冬には小さいでしょうが、夏はきっとかなり出てくるでしょう。
寺本:貝の寿命ってどのぐらいですか?
梶原:ほんとは1年半ぐらいでしょうが、東京湾のような富栄養価の海水では1年ぐらいでしょうね。赤潮で死んでしまうこともあるでしょう。
山下:赤潮の阻止に九州の洞海湾でムラサキイガイを使った研究が行われたようですが、成功でしたでしょうか。東京湾でもその実験はいかがでしょうか。
梶原:東京湾と洞海湾では規模がちがいますが、なにか装置を設定すればいいかもしれません、その後の貝の使用法ですね問題は。
山下:飼料などにはいかがでしょうか?
坂口:電力研では養殖のひらめに飼料として与えていますが、作る機械の関係で少量しかできませんね。
高田:ダイオキシン等環境ホルモンの数値を調べてみていますが、東京湾もだんだん改善はされていますね、しかし川が入り込んでいる海水はかなり数値が高いと思いますが。
渋谷:東京湾のムラサキイガイはみんなで食べました、環境ホルモンが蓄積されていますかね。
高田:東京湾の貝はあるでしょうね、貝毒とちがってすぐには影響はでませんが・・・
山下:でもさきほど梶原先生がおっしゃられたように、フランスあたりでは浄化して食するとのことで、東京湾の貝でも浄化してみたらどうでしょうね、せっかく山ほどすてているのですから、何か使わなくてはもったいないですよね。
寺本:養殖には適しませんかね。
梶原:そんなことはないですが、するとしたら、千葉のほうでしょうかね、付着生物ですからなにかひものような物でつるすような状態ですね、かってに大きくなるでしょうから。
山下:食べられるようになったら、すごいですね、いいことですね。
寺本:とりあえず、各地との比較をしつつ検討しましょう。
渋谷:採集場所の魚組(漁業組合)には連絡をとっておきます。
山下:よろしくお願い致します。
 
4. 本年度の課題
別紙参照(※1)







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