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 海難審判庁採決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年那審第64号
件名

漁船第三大信丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年11月18日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(坂爪 靖)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:第三大信丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
舵が脱落、船尾船底外板に破口、推進器翼、同軸に曲損及び主機に濡損等

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年9月11日03時20分
 沖縄県津堅島南方ウフビシ
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第三大信丸
総トン数 4.9トン
登録長 11.98メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 242キロワット

3 事実の経過
 第三大信丸(以下「大信丸」という。)は、船体後部に操舵室を設けたまぐろ一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、昭和58年2月1日に一級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人が平成11年8月に中古の大信丸を購入し、沖縄県金武中城港内の泡瀬漁港を基地とし、同漁港東南東方沖合に設置されている浮魚礁付近の漁場で、しけの日を除き毎日夕方出漁し、夜間操業したのち翌朝帰港して漁獲物を水揚げするという操業形態を繰り返していたところ、同人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.65メートル船尾1.10メートルの喫水をもって、同14年9月10日16時00分泡瀬漁港を発し、同漁港東南東方約20海里の漁場に向かった。
 ところで、泡瀬漁港は、中城湾の北部に位置し、同湾東方には津堅島とその南方の干出さんご礁帯ウフビシで挟まれた可航幅約1.8海里の二ツ口と呼ばれる同湾への出入口があり、二ツ口出入口の航路標識として安全水域標識の中城湾口灯浮標が設けられていた。A受審人は、泡瀬漁港への出入航にはいつも二ツ口を通航していて、同灯浮標や同出入口付近のウフビシなどの干出さんご礁帯の存在について十分に承知していた。
 18時00分ごろA受審人は、漁場に至り、まぐろの餌に使用するいかの一本釣り漁を2時間ほど行ったのち、21時15分ごろその東方約19海里に設置されている浮魚礁付近の漁場に移動した。そして、同時30分ごろからまぐろの一本釣り漁を行ったものの、漁模様が悪かったので、まぐろなど約44キログラムを獲たところでいつもより3時間ほど早い、翌11日01時00分ごろ漁を打ち切り、同時30分津堅島灯台から102度(真方位、以下同じ。)32.0海里の地点を発進して帰途についた。
 発進したとき、A受審人は、針路を中城湾口灯浮標に向首する279度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて16.0ノットの対水速力で進行した。
 A受審人は、発進して間もなく操舵室右舷側の背もたれ付きのいすに腰掛けて操舵操船に当たっていたところ、天気が良く海上も平穏で、1隻の大型タンカーに出会ったあとは周囲に他船を見かけなかったことから気が緩んだうえ、ほとんど連日夜間操業を行い疲れが蓄積していたことから、眠気を催すようになったが、朝までの操業予定を早めに打ち切って漁場を発進し、いつもより楽だから、まさか居眠りすることはあるまいと思い、手動操舵に切り換えて立った姿勢で操舵を行ったり、外気に当たったりするなどの居眠り運航の防止措置をとらないで続航するうち、いつしか居眠りに陥った。
 A受審人は、折からの風潮流により3度左方に圧流されながら実効針路が276度となって16.7ノットの対地速力で、ウフビシ北端の浅礁に向首接近する状況であったが、居眠りをしていてこのことに気付かずに進行中、03時20分津堅島灯台から168度3.0海里の地点において、大信丸は、原針路、原速力のまま、同浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北北東風が吹き、潮候はほぼ低潮時で、付近海域には1.1ノットの南西流があった。
 乗揚の結果、舵が脱落したほか、船尾船底外板に破口、推進器翼、同軸に曲損及び主機に濡損等を生じたが、救助船により引き下ろされ、のち修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、沖縄県津堅島東方沖合を漁場から同県泡瀬漁港に向けて帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、風潮流により圧流され、同島南方の干出さんご礁帯ウフビシ北端の浅礁に向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、沖縄県津堅島東方沖合を1人で操舵操船に当たり、漁場から同県泡瀬漁港に向けて西行中、気の緩みとほとんど連日の夜間操業による疲れとから眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、手動操舵に切り換えて立った姿勢で操舵を行ったり、外気に当たったりするなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、朝までの操業予定を早めに打ち切って漁場を発進し、いつもより楽だから、まさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、風潮流に圧流されていることに気付かないまま、干出さんご礁帯ウフビシ北端の浅礁に向首進行して乗揚を招き、大信丸の舵を脱落させたほか、船尾船底外板に破口、推進器翼、同軸に曲損及び主機に濡損等を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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