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 海難審判庁採決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年那審第42号
件名

旅客船サザンクロス8号乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年10月23日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(坂爪 靖)

副理事官
神南逸馬

受審人
A 職名:サザンクロス8号船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
両舷推進器翼に曲損及び左舷推進器軸ブラケットに亀裂

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年3月23日16時20分
 沖縄県小浜島東方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 旅客船サザンクロス8号
総トン数 19トン
全長 24.65メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,338キロワット

3 事実の経過
 サザンクロス8号は、沖縄県石垣港を基地として同県八重山列島諸港間の旅客輸送に従事する、レーダーを備えない2機2軸の軽合金製旅客船で、平成8年4月9日に一級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人ほか1人が乗り組み、旅客32人を乗せ、船首0.8メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、同15年3月23日15時50分西表島南東岸の仲間港を発し、小浜島小浜港に向かった。
 仲間港から小浜港に至る多数のさんご礁が散在する海域を航行するには、屈曲した狭い水路の要所要所に立標が設置されている大原航路(通称)を東行し、大原航路第15号立標を右舷側に並航したところで左転して同航路外に出て、小浜島南東岸のウカン埼南方約1.8海里の地点に向かい、同地点から北東進して同埼南東方約1.9海里のところにあるウカン埼東方立標の東側至近に至り、そこから北西進して小浜港の出入口水路にあたる、小浜港第3号立標(以下、小浜港各立標については「小浜港」の冠称を省略する。)と第6号立標間の狭い水路を通航して目的地に至るものであった。
 ところで、第3号立標から第6号立標に至るまでのさんご礁で挟まれた長さ約1,400メートルの可航幅の狭い水路には、小浜島北端の海岸線と第6号立標とを結ぶ重視線上で、第3号立標の北西方約400メートルのところに浅礁が存在するので、A受審人は、同立標を右舷側に見て通過後、いつも海面の水色の変化により浅礁を識別し、それを避けて前示重視線の南側近くを通航するようにして無難に目的地に到達していた。
 発航後、A受審人は、甲板員を操舵室での見張りに就け、自ら同室前部中央で手動操舵に当たり、機関を微速力前進にかけ、その後徐々に増速して全速力前進とし、30.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、大原航路の各立標を船首目標として順次たどって東行し、大原航路第15号立標を右舷側に見たところで同航路外に出て北東進した。
 16時16分少し前A受審人は、ウカン埼東方立標から075度400メートルの地点に達したとき、針路を第3号立標に向首する322度(真方位、以下同じ。)に定め、同一速力で進行した。
 16時19分少し過ぎA受審人は、第3号立標の手前300メートルの地点に達したとき、同立標を正船首少し右に見るよう針路を310度に転じて続航し、同時19分半同立標を右舷側40メートルに見る地点で、第3号立標から第6号立標に至る間の狭い水路に入った。
 その後、A受審人は、いつものとおり船首方の浅礁を目視で確認したのち、その手前で左転して小浜島北端の海岸線と第6号立標とを結ぶ284度の重視線に平行する針路にするつもりで進行した。
 そのころ、A受審人は、太陽光線の海面反射のため、船首方の浅礁を視認できなくなったが、接近すれば同礁は見えてくるものと思い、速力を大幅に減じ、作動中のGPSを活用したり、小浜島北端の海岸線と第6号立標の見え具合や第3号立標からの経過時間、周囲の地形を利用したりするなどして船位の確認を十分に行わないで、船首方の浅礁を探すことに気をとられ、転針の時機が遅れ、目見当で16時20分わずか前左舵をとり、浅礁に向首接近していることに気付かないまま左転を続け、16時20分第3号立標から305度400メートルの地点において、サザンクロス8号は、船首が284度に向いたとき、原速力のまま、浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力4の東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、両舷推進器翼に曲損及び左舷推進器軸ブラケットに亀裂(きれつ)を生じ、のち修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、沖縄県小浜島小浜港東方沖合において、さんご礁で挟まれた狭い水路を同港に向けて航行中、太陽光線の海面反射のため、船首方の浅礁を視認できなくなった際、船位の確認が不十分で、転針の時機が遅れ、左転して第3号立標北西方の浅礁に向かって進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、沖縄県小浜島小浜港東方沖合において、さんご礁で挟まれた狭い水路を同港に向けて航行中、太陽光線の海面反射のため、船首方の浅礁を視認できなくなった場合、同礁に乗り揚げることのないよう、速力を大幅に減じ、作動中のGPSを活用したり、小浜島北端の海岸線と第6号立標の見え具合や第3号立標からの経過時間、周囲の地形を利用したりするなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、接近すれば船首方の浅礁は見えてくるものと思い、同礁を探すことに気をとられ、転針の時機が遅れ、目見当で左舵をとり、浅礁に向首していることに気付かないまま進行して乗揚を招き、サザンクロス8号の両舷推進器翼に曲損及び左舷推進器軸ブラケットに亀裂を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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