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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年長審第31号
件名

漁船第十七長運丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年9月2日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(清重隆彦)

理事官
金城隆支

受審人
A 職名:第十七長運丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)

損害
右舷船首船底外板に凹損等

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年1月20日07時15分
 長崎県長崎港香焼島北岸
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第十七長運丸
総トン数 154トン
全長 40.02メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 698キロワット

3 事実の経過
 第十七長運丸(以下「長運丸」という。)は、専ら東シナ海の漁場と長崎県三重式見港間の漁獲物運搬に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか3人が乗り組み、空倉のまま、回航の目的で、船首1.7メートル船尾2.6メートルの喫水をもって、平成15年1月20日06時05分同港を発し、長崎港に向かった。
 A受審人は、出港操船に引き続いて単独で船橋当直に就き、06時25分肥前平瀬灯標から225度(真方位、以下同じ。)500メートルの地点で、大中瀬戸北灯台から039度1,400メートルばかりの地点で錨泊する他船に向け、針路を151度に定め、機関を毎分回転数300にかけて7.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、手動操舵により南下し、同時52分福田埼沖に達したとき、操業日誌に記事を記載していなかったことを思い出し、船橋左舷側後部の海図台で、身体を半身にして左前方に向き、時々、周囲の見張りを行いながら同日誌への記入を始めた。
 07時03分半A受審人は、大中瀬戸北灯台から008度1.2海里の地点に達したとき、左舷前方に長崎港から航路に沿って出航する船を認め、同船を避航してから入航することとし、針路を208度として進行した。
 A受審人は、出航船の前路を無難に航過し、前示錨泊船と香焼島との間を通過して長崎港に入航するつもりで、07時06分半大中瀬戸北灯台から000度1,580メートルの地点で、針路を160度に転じ、次の転針まで数分間の余裕があったので、再度、操業日誌の記入に取り掛かったが、その後、同日誌に記入することに気をとられ、周囲の物標を目視するなどして船位の確認を行うことなく続航した。
 長運丸は、A受審人が転針時機を失したまま、同じ針路及び速力で続航中、07時15分大中瀬戸北灯台から103度620メートルの香焼島北岸に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力2の北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、右舷船首船底外板に凹損等を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、長崎港に入航する際、船位の確認が不十分で、転針時機を失し、香焼島北岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、単独で船橋当直に就き、長崎港に入航する場合、転針時機を失しないよう、周囲の物標を目視するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、操業日誌に記事を記入することに気をとられ、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、転針時機を失し、香焼島北岸に向首進行して乗揚を招き、右舷船首船底外板に凹損等を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同人を戒告する。





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