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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年神審第29号
件名

押船大福丸被押はしけD-2705乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年7月16日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(田邉行夫)

副理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:大福丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)

損害
大福丸・・・・損傷ない
D-2705・・・船首部に亀裂を伴う凹損

原因
大福丸・・・・船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年8月26日02時55分
 播磨灘北西部院下島
 
2 船舶の要目
船種船名 押船大福丸 はしけD-2705
総トン数 98トン  
全長 27.60メートル 70.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 551キロワット  

3 事実の経過
 大福丸は、鋼製押船兼引船で、A受審人ほか3人が乗り組み、船首2.20メートル船尾3.00メートルの喫水をもって、自船の船首に、山土4,300トンを積載して船首4.93メートル船尾5.03メートルの喫水となった、鋼製はしけD-2705の船尾をかん合して押船列とし、平成14年8月25日10時55分岡山県宇野港を発し、同港沖合で仮泊したのち、同日22時30分抜錨して神戸沖空港島埋立地に向かった。
 A受審人は、単独で船橋当直にあたって香川県小豆島北方沖合を東行し、翌26日01時半ごろから船橋で当直にあたりながらビデオで映画を見始めた。
 02時15分A受審人は、院下島灯台から245度(真方位、以下同じ。)4.5海里の地点に達したとき、機関を全速力前進にかけ、院下島の北方沖合200メートルばかりに向首する063度に針路を定め、折からの北東風と東方に流れる微弱な潮流を受け、6.6ノットの対地速力で、右方に1度圧流されながら自動操舵によって進行した。
 A受審人は、院下島まで1海里に接近したとき、左転して同島の北方沖を航過する予定であった。
 A受審人は、02時25分ごろから映画に見入っていて、船位の確認を行わなかったので、1度右方に圧流されて院下島に向首進行していることも、同時45分同島まで1海里に接近したことにも気付かないまま同じ針路で続航した。
 02時54分半A受審人は、船首方に院下島の島影を視認し、機関を後進として左舵一杯としたものの及ばず、02時55分院下島灯台から274度220メートルの地点において、3.5ノットに減速したD-2705が、北東に向首して同島北岸に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、微弱な東流があり、視界は良好であった。
 乗揚の結果、大福丸には損傷がなく、D-2705の船首部に亀裂を伴う凹損を生じたが、積荷を瀬取りしたところ自力離礁し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、播磨灘北西部を東行中、船位の確認が不十分で、院下島に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、播磨灘北西部を航行する場合、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、船橋当直に当たりながらビデオで映画に見入っていて、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、院下島に向首接近していることに気付かずに進行し、同島への乗揚を招き、D-2705の船首部に亀裂を伴う凹損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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