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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年長審第18号
件名

漁船第二十一長盛丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年6月24日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(清重隆彦)

理事官
金城 隆支

受審人
A 職名:第二十一長盛丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
球状船首に破口、左舷船首外板に凹傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年8月26日01時00分
 長崎県三重式見港
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十一長盛丸
総トン数 19トン
登録長 18.56メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 529キロワット

3 事実の経過
 第二十一長盛丸(以下「長盛丸」という。)は、FRP製漁船で、一級小型船舶操縦士免許を有するA受審人ほか4人が乗り組み、はえ縄漁を行う目的で、船首0.7メートル船尾1.7メートルの喫水をもって、平成14年8月21日00時30分長崎県三重式見港を発し、04時ごろ北三宝曽根北方に至って操業を開始し、越えて25日20時00分赤むつなど約1トンを獲って操業を終え、漁場を発進して帰途についた。
 ところで、A受審人は、漁場に到着後、夜間投錨して休息をとりながら、操業を繰り返していたものの、同月24日20時半ごろ操業を終えて休息をとろうとしたところ、雨と落雷が激しくなったので、計器類の電源を落として船橋当直を続け、翌25日03時ごろから1時間ばかりの休息しかとれないまま、04時ごろから操業を開始し、その後帰途についたので、睡眠不足の状態となっていた。
 発進後、A受審人は、単独で船橋当直に就き、機関を全速力前進にかけて8.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、三重式見港に向けて自動操舵で進行し、途中2時間ばかり甲板員に同当直を任せて休息をとり、23時ごろ伊王島灯台の西南西14海里ばかりの地点で、再度、単独で同当直に就いた。
 A受審人は、翌26日00時44分肥前平瀬灯標から270度(真方位、以下同じ。)1,670メートルの地点で、自動操舵のまま、針路を044度に定め、同じ速力で、操舵室右舷後方のいすに腰を掛けて見張りに当たりながら進行した。
 定針後、A受審人は、眠気を感じるようになったが、まさか居眠りすることはあるまいと思い、手動操舵に切り替えて立って操縦するなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった。
 長盛丸は、A受審人がいつしか居眠りに陥って三重式見港南防波堤に向首接近していることに気付かないまま、同じ針路及び速力で続航中、01時00分三重式見港南防波堤西灯台から115度830メートルの同防波堤の消波ブロックに乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、球状船首に破口を、左舷船首外板に凹傷を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、三重式見港に入航する際、居眠り運航の防止措置が不十分で、三重式見港南防波堤の消波ブロックに向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独で船橋当直に就き、三重式見港に入航中、強い眠気を感じた場合、居眠り運航とならないよう、手動操舵に切り替えて立って操縦するなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、まさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、三重式見港南防波堤の消波ブロックに向首進行して乗揚を招き、球状船首に破口を、左舷船首外板に凹傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同人を戒告する。





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