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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年長審第7号
件名

油送船第八栄福丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年5月15日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(清重隆彦、原 清澄、寺戸和夫)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:第八栄福丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)

損害
船首船底に破口を伴う凹損

原因
船位確認不十分

主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年5月12日10時30分
 長崎県松島南西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 油送船第八栄福丸
総トン数 199トン
登録長 44.08メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 625キロワット

3 事実の経過
 第八栄福丸(以下「栄福丸」という。)は、船尾船橋型の鋼製引火性液体物質ばら積兼油タンカーで、A受審人ほか2人が乗り組み、メチルアルコール500トンを積載し、船首2.8メートル船尾3.6メートルの喫水で、平成14年5月11日10時20分広島県木江港を発し、正午過ぎ、同県下蒲刈港に寄せて甲板員1人を増員した後、熊本県八代港に向かった。
 A受審人は、翌12日09時00分黒島の南方約3海里のところで単独の船橋当直に就いて南下し、同時36分御床島灯台から245度(真方位、以下同じ。)1.0海里の地点で、針路を155度に定め、機関を全速力前進にかけ、9.5ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 10時22分A受審人は、大蟇島大瀬灯台から053度2.0海里の地点に達したとき、右舷船首25度1.6海里のところで停留していた漁船が前路を左方に横切るように発進したのを認め、針路を185度に転じたところ、栄福丸は、正船首1.25海里のところに存在する合ノ曽根の暗岩に向首進行することとなった。
 ところが、A受審人は、合ノ曽根まで十分な距離があると思い、その後、同漁船の動向を注視していて、レーダーを有効に活用するなどして、船位の確認を十分に行わなかった。
 栄福丸は、A受審人が合ノ曽根の暗岩に著しく接近していることに気付かないまま、同じ針路及び速力で続航中、10時30分大蟇島大瀬灯台から090度1.5海里の合ノ曽根の暗岩に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、船首船底に破口を伴う凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、長崎県松島南西方沖合を南下中、前路を左方に横切る漁船を認め、転針進行する際、船位の確認が不十分で、合ノ曽根の暗岩に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、長崎県松島南西方沖合を南下中、前路を左方に横切る漁船を認め、転針進行する場合、合ノ曽根の暗岩があることを知っていたのであるから、同暗岩に著しく接近しないよう、レーダーを有効に活用するなどして、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、合ノ曽根まで十分な距離があると思い、同漁船の動向を注視していて、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、合ノ曽根の暗岩に著しく接近していることに気付かないまま進行して乗揚を招き、船首船底に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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