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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年広審第113号
件名

漁船第二十一冨美丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年4月23日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(関 隆彰)

理事官
亀井龍雄
副理事官
園田 薫

受審人
A 職名:第二十一冨美丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底全般に損傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年5月5日07時30分
 島根県地蔵埼西方

2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十一冨美丸
総トン数 19トン
全長 26.000メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 603キロワット

3 事実の経過
 第二十一冨美丸(以下「冨美丸」という。)は、いか一本釣り漁に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.9メートル船尾2.2メートルの喫水をもって、平成14年5月4日12時00分島根県恵曇漁港を発し、隠岐諸島西ノ島北方の漁場に向かった。
 A受審人は、17時30分西ノ島北西方沖に到達して探索を開始し、18時30分小森島灯台から332度(真方位、以下同じ。)8.6海里の地点において、パラシュートアンカーを投入して漂泊し、折からの南東方向に流れる潮に圧流されながら操業を続けた。
 ところで、冨美丸には、通常3人が乗船し、A受審人は、往復航の操船に当たり、漁場に着いてからは甲板作業を行わずに休息をとっていたが、当時1週間前から1人が下船していたため、自身も作業に従事し、帰航時の操船に備えて、翌5日00時から睡眠をとったものの、十分な休息がとれず、疲れが溜まっていた。
 A受審人は、03時に起床し、同時15分小森島灯台から339度6.1海里の地点で操業を終え、境港に向け帰航の途につき、発航時から霧で視程が0.5海里ばかりに制限される状況下を、2台のレーダーを作動させ、自動操舵装置を使用して、二股島の東方に向け、甲板作業を行いながら微速力で進行し、04時07分小森島灯台から346度4.0海里の地点で甲板作業を終えると、舵輪の後ろにある2段式の棚に座って単独で当直に当たり、機関回転数を毎分1,100に上げ11.5ノットの速力で航行した。
 A受審人は、04時22分二股島から0.5海里隔たる小森島灯台から022度1.6海里の地点に達したとき、中ノ島と松島の間を通って地蔵埼に向かう165度に針路を定め、その後南東方へ流れる潮による偏位を修正するため適宜右に針路を調整しながら続航していたところ、眠気を感じ、時折立ち上がったり体を動かしたりしていたが、まさか居眠ることはあるまいと思い、立ったまま当直に当たるなどして、居眠り運航の防止措置をとることなく、座ってレーダーを見ながら進行しているうちに、07時15分ころ美保関灯台から340度3.1海里の地点付近で居眠りに陥った。
 冨美丸は、そのまま進行し、07時30分美保関灯台から294度700メートルの地点において、原針路、原速力で、地蔵埼西方の陸岸に乗り揚げた。
 当時、天候は霧で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、舵柱、推進器を含め、船底全般に損傷を生じたが、僚船により引き下ろされ、のち曳航され、修理された。

(原因)
 本件乗揚は、自動操舵として島根県地蔵埼付近に向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同埼西方の陸岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、自動操舵として島根県地蔵埼付近に向けて航行中、眠気を催した場合、居眠りに陥ることのないよう、立ったまま当直に当たるなどして、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同人は、まさか居眠ることはあるまいと思い、座ったまま航行して居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥ったまま進行して地蔵埼西方の陸岸への乗揚を招き、舵柱、推進器を含め、船底全般に損傷を生じさせるに至った。





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