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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年広審第109号
件名

押船第二十二七福丸被押バージ七福丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年4月10日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(高橋昭雄)

理事官
村松雅史

受審人
A 職名:第二十二七福丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
七福丸・・・推進器翼に曲損
バージ・・・左舷船首外板に亀裂を伴う凹損

原因
七福丸・・・水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、土砂投棄のため予定埋立区域内の指定投棄地点に接近する際、水深の調査が十分に行われなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年4月26日09時50分
 広島県呉港広区
 
2 船舶の要目
船種船名 押船第二十二七福丸 バージ七福丸
総トン数 19トン 711トン
全長 13.45メートル 56.00メートル
6.00メートル 14.00メートル
深さ 1.99メートル 3.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,640キロワット  

3 事実の経過
 第二十二七福丸(以下「七福丸」という。)は、2機2軸の船首船橋型鋼製押船で、A受審人ほか実父及び叔父の2人が乗り組み、土砂埋立作業に従事する目的で、バウスラスターを有するバージ七福丸(以下「バージ」という。)の船尾部に押船の船首部を嵌合した全長63メートルの押船列とし、船首1.5メートル船尾1.6メートルの喫水をもって、平成14年4月26日06時20分広島県呉港広区新王子製紙呉港広導灯(後灯)の北東約300メートルにあたる寿埠頭岸壁を発し、同区西部に築造中の阿賀マリノポリス埋立区域に向かった。
 ところで、阿賀マリノポリスは、広島県呉市が沿岸部開発を目指して同市阿賀地区に築造予定の内貨コンテナターミナル及び海洋性レクリエーション等を含む施設で、平成6年に着工して同17年に完成予定で埋立工事が行われていた。
 一方、A受審人は、七福丸の船長兼作業指揮者として約3年前から同埋立工事に従事していた。同工事における土砂投棄作業は、予定埋立区域内でガット船から土砂を瀬取り、同時に投棄場所を指示する現場作業員(以下、単に「現場作業員」という。)を同乗させて指定投棄地点に移動し、既投棄域の前面に至って押船列を回頭させて同域に対して船横状態とし、その後機関と舵及びバージ側バウスラスターを併用しながら同状態のまま指定投棄地点に接近して土砂投棄が行われるものであった。なお、指定投棄地点には、前日陸上側から現場作業員が干潮時に露出した既土砂投棄域際の目安に竹竿を立てていたが、その後に数隻の運搬船によって繰り返し土砂投棄が行われ、目安の竹竿があっても同付近の水深は変化しているおそれがあったので、同地点に接近する際には改めて測深により水深の調査を十分に行う必要があった。
 埠頭を離れた後、A受審人は、空倉のバージを押航して呉港阿賀沖防波堤灯台(以下「阿賀沖灯台」という。)から217度(真方位、以下同じ。)1,100メートルの地点にあたる予定埋立区域内に至り、同域内でガット船から土砂850立方メートルを瀬取り、その後船首部にスパッド投入要員として父をまた船尾部に投錨要員として叔父を更に左舷中央部に測深のため現場作業員をそれぞれ配して、09時35分船首1.6メートル船尾1.5メートルの喫水となったバージを押航し、予定埋立区域内北方奥にあたる指定投棄地点に向かった。
 ところが、09時49分過ぎA受審人は、竹竿を目安に指定投棄地点沖に至り、押船列を右回頭させて既土砂投棄域前面から約20メートル沖に船首を030度に向け同域前面に対してほぼ船横状態とし、そのまま目安の竹竿付近の投棄地点に平行移動して接近しようとしたが、その際水深状況を調査するにあたって停船して測深すると時間の浪費となり、当時高潮時でもあったので、目安の竹竿付近まで水深に余裕があるものと思い、適宜停船して船首部から船尾部にかけて測深し水深の調査を十分に行うことなく、予定の回頭を終わると左舷側中央部での現場作業員の測深結果を得て移動を開始し、09時50分阿賀沖灯台から240度630メートルの地点において、七福丸バージは、バージの左舷船首部を既投棄土砂に乗り揚げ、続いて七福丸の推進器翼に衝撃を受けた。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候はほぼ高潮時にあたりその潮高が約350センチメートルであった。
 乗揚の結果、七福丸は推進器翼に曲損及びバージは左舷船首外板に亀裂を伴った凹損を生じた。

(原因)
 本件乗揚は、呉港広区において、瀬取りした土砂投棄のため築造中のコンテナバース等を含む阿賀マリノポリス予定埋立区域内の指定投棄地点に接近する際、水深の調査が不十分で、既土砂投棄域に接近し過ぎたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、呉港広区において、瀬取りした土砂投棄のため築造中の阿賀マリノポリス予定埋立区域内の指定投棄地点に接近する場合、目安として竹竿が前日干潮時に立てられた指定投棄地点付近にはすでに他の運搬船により投棄が行われて水深が浅くなっているおそれがあったから、既投棄土砂に乗り揚げることのないよう、適宜停船して船首部から船尾部にかけて測深し水深の調査を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、当時高潮時でもあったので、目安の竹竿付近まで水深に余裕があるものと思い、適宜停船して船首部から船尾部にかけて水深の調査を十分に行わなかった職務上の過失により、予定投棄地点の前面水域で予定の回頭を終わるとそのまま平行移動を始め、既投棄土砂への乗揚を招き、バージの左舷船首部船底外板に亀裂を伴った凹損及びバウスラスター推進翼の損壊、並びに七福丸の両舷推進器翼の曲損を生じさせるに至った。





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