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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年横審第8号
件名

プレジャーボートロイヤル21乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年4月25日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(阿部能正)

理事官
井上 卓
副理事官
入船のぞみ

受審人
A 職名:ロイヤル21船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底部に亀裂、両舷機のプロペラ軸、プロペラ、軸ブラケット等に曲損

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号  

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年7月20日15時30分
 静岡県下田港南東方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートロイヤル21
総トン数 19トン
全長 14.38メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,095キロワット

3 事実の経過
 ロイヤル21(以下「ロイヤル」という。)は、2機2軸のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、同乗者6人を乗せ、遊覧の目的で、船首尾とも1.0メートルの喫水をもって、平成14年7月20日10時00分静岡県下田港を発し、伊豆諸島新島の新島港に向かい、同港に到着したのち、観光などを行い、14時00分同港を発進し、帰途についた。
 A受審人は、15時11分少し前神子元島灯台から085度(真方位、以下同じ。)4.8海里の地点において、須崎半島南岸に近づいたら下田港に向けることとし、針路を321度に定め、機関を全速力前進にかけ、17.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で、フライングブリッジのいすに座って手動操舵により進行した。
 ところで、須崎半島南岸沖合には、恵比須島の南方350メートルばかりのところに、基本水準面からの高さ1.5メートルの干出岩であるショウガ根が存在していた。
 A受審人は、下田港発航時、下田灯台沖合から直接新島に向けたもので、須崎半島南岸沖合を航行するのが初めてであったが、同南岸至近の海域まで航行可能と思い、浅礁に乗り揚げないよう、備え付けの海図第51号を精査して、その所在を確認するなど、水路調査を十分に行わなかったので、ショウガ根の存在に気付かなかった。
 こうして、A受審人は、15時29分少し前須崎恵比須島指向灯(以下、「恵比須島指向灯」という。)から116度870メートルの地点に達したとき、機関を13.9ノットの半速力に減じ、下田港口に向け、針路を270度に転じてショウガ根に向首続航中、15時30分少し前前方至近の海面下に浅礁を認めたが、どうすることもできず、ロイヤルは、15時30分恵比須島指向灯から145度470メートルの地点において、原針路原速力のまま、同根に乗り揚げ擦過した。
 当時、天候は晴で風力1の西南西風が吹き、潮候はほぼ高潮時であった。
 その結果、船底部に亀裂、両舷機のプロペラ軸、プロペラ、軸ブラケット及び舵板にそれぞれ曲損を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件乗揚は、静岡県下田港南東方沖合を航行中、水路調査が不十分で、ショウガ根に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、静岡県下田港入航の目的で、須崎半島南岸沖合を初めて航行する場合、浅礁に乗り揚げないよう、備え付けの海図第51号を精査して、その所在を確認するなど、水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同南岸至近の海域まで航行可能と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、ショウガ根の存在に気付かず、同根に向首進行して乗揚を招き、船底部に亀裂、両舷機のプロペラ軸などにそれぞれ曲損を生じさせるに至った。





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