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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年那審第56号
件名

遊漁船幸福丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年3月13日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:幸福丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船尾船底に小亀裂、推進器翼及び同軸に曲損

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年7月22日03時55分
 沖縄県伊江島西方沖

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船幸福丸
総トン数 4.9トン
登録長 11.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 264キロワット

3 事実の経過
 幸福丸は、FRP製遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、釣客3人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.5メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成14年7月21日14時45分沖縄県渡久地港を発し、同県伊江島北西方沖の北の曽根に至って夜釣りを行い、翌22日03時37分伊江島灯台から302度(真方位、以下同じ。)3.6海里の地点を発進し、帰途に就いた。
 A受審人は、発進直後、針路をGPSに入力した伊江島灯台南方1.7海里に設定したポイントに向く143度に定め、機関を全速力前進にかけ、12.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 03時46分半A受審人は、伊江島灯台から280度2.0海里の地点に達したとき、ほぼ正船首方1.1海里のところに操業中の遊漁船を認め、同船を避けるため針路を105度に転じたところ、伊江島西岸から西方に張り出しているさんご礁帯に向くこととなった。
 A受審人は、2ないし3分後前示ポイントに向けるつもりで続航しているうち、03時52分前示さんご礁帯まで1,100メートルに接近する状況となったが、操舵室内で釣客と雑談していて、このことに気付かず、その後GPSを活用して船位の確認を十分に行うことなく進行した。
 03時55分幸福丸は、伊江島灯台から254度600メートルの地点において、原針路、原速力のまま、さんご礁帯に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力3の北北東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、幸福丸は、船尾船底に小亀裂を、推進器翼及び同軸に曲損を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、伊江島西方沖において、渡久地港に向けて帰航中、漁船を避けるため転針してさんご礁帯に向けた際、船位の確認が不十分で、さんご礁帯に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、伊江島西方沖において、渡久地港に向けて帰航中、漁船を避けるため転針してさんご礁帯に向けた場合、GPSを活用して船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、釣客との雑談に気をとられ、GPSを活用して船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、さんご礁帯に接近する状況となっていることに気付かないまま進行して乗揚を招き、船尾船底に小亀裂を、推進器翼及び同軸に曲損を生じさせた。





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