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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年那審第47号
件名

漁船第三金栄丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年3月6日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支)

理事官
中谷啓二

受審人
A 職名:第三金栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
プロペラ及び同軸に曲損、舵に破損

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年5月6日16時45分
 沖縄県糸満漁港西方沖

2 船舶の要目
船種船名 漁船第三金栄丸
総トン数 4.90トン
登録長 9.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 220キロワット

3 事実の経過
 第三金栄丸(以下「金栄丸」という。)は、FRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、漁場の下見の目的で、船首0.27メートル船尾1.20メートルの喫水をもって、平成14年5月5日07時00分沖縄県糸満漁港を発し、同県久米島の兼城港に向かい、13時30分同港に至り、翌6日08時15分同港を発して帰途に就いた。
 ところで、A受審人は、平成9年から糸満漁港を基地にして、総トン数11トンの漁船で、同漁港西方100海里付近でまぐろ漁などに従事していたが、同13年7月同漁船を売却した。そして、同14年4月金栄丸を購入し、久米島、慶良間列島周辺で操業することとし、漁場の下見の目的で糸満漁港を発航したものであった。A受審人は、糸満漁港付近の水路状況は承知しており、前示漁船は喫水が深いことから、いつも糸満港西水路第1号灯浮標と同第6号灯浮標間の水路(以下「西水路」という。)を航行し、同漁港西方に拡散する干出さんご礁帯を航行したことはなかった。干出さんご礁帯には、灯浮標等が設置されていなかった。
 A受審人は、同年5月6日兼城港を発航後、渡名喜島を一周し、慶良間列島の前島北方から、西水路入口に向けて南下した。
 16時28分半A受審人は、ムーキ灯標から225度(真方位、以下同じ。)1,600メートルの地点に達したとき、金栄丸の喫水が浅いことから、前示干出さんご礁帯を航行しても大丈夫と思い、灯浮標が設置されている西水路入口に向かう針路で続航することなく、針路を095度に定め、機関を半速力前進にかけ、7.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 16時41分A受審人は、左方の岡波島が近すぎるので、何となく不安になり機関を中立とした。そのとき、ビルジポンプが不調であることを思い出し、機関室に赴いて点検しているうち、金栄丸は、左転しながら惰力で進行し、16時45分ムーキ灯標から125度2,000メートルの地点において、船首を000度に向けて浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の南南東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、プロペラ及び同軸に曲損を、舵に破損を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、糸満漁港西方沖において、北方から同漁港に入航する際、針路の選定が不適切で、灯浮標が設置されている西水路入口に向かう針路とせず、浅礁に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、糸満漁港西方沖において、北方から同漁港に入航する場合、灯浮標が設置されている西水路入口に向かう針路を選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、金栄丸の喫水が浅いことから、干出さんご礁帯を航行しても大丈夫と思い、灯浮標が設置されている西水路入口に向かう針路を選定しなかった職務上の過失により、浅礁に向けて進行して乗揚を招き、プロペラ及び同軸に曲損を、舵に破損を生じさせた。





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