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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年広審第134号
件名

貨物船第一平成丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年3月12日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(勝又三郎)

副理事官
神南逸馬

受審人
A 職名:第一平成丸船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
船首から船体中央の船底に損傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年4月7日02時10分
 山口県 下荷内島東岸

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第一平成丸
総トン数 187トン
全長 50.335メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 441キロワット

3 事実の経過
 第一平成丸(以下「平成丸」という。)は、福岡県北九州市及び大分県大分港と阪神との各港間を、専ら鋼材輸送に従事する船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人と機関長の2人が乗り組み、空倉のまま、船首0.6メートル船尾3.0メートルの喫水をもって、平成14年4月6日10時00分大阪港を発し、大分県大分港に向かった。
 ところで、A受審人は、船橋当直を機関長との2人で単独4時間の輪番制にして当たっており、平素、揚地において荷役中に休息をとっていたが、今回の大阪港では荷役状況を監視したりしていたことから、いつもより休息時間が少なかった。
 発航後、A受審人は、明石海峡から安芸灘に至る瀬戸内海を西行し、翌7日01時10分ごろ船橋内後部に据付けられたベッドから起き、同時16分沖家室島長瀬灯標から166度(真方位、以下同じ。)1,000メートルの地点で、機関長から船首方1,000メートルのところに自船より遅い同航船がいる旨の報告を受けて船橋当直を引き継ぐとともに、針路を推薦航路線に沿う267度に定めて自動操舵とし、機関を回転数毎分360の全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で進行した。
 定針後、A受審人は、降雨だったので窓や扉を閉め切り、椅子に腰掛けて操船に当たり、01時23分沖家室島長瀬灯標から241度1.2海里の地点に達したとき、前路を航行していた同航船に近づいたのでこれを替わすため、自動操舵のまま針路設定用ツマミを右に回して針路を274度に転じて続航した。その後同船を十分に替わせたことから安心して気が緩み、眠気を催してきたが、努めて立って船橋内を動くなどして居眠り運航防止の措置をとることなく船橋当直を続け、間もなく居眠りに陥った。
 こうして、A受審人は、山口県下荷内島の東岸に向首したまま進行し、平成丸は、02時10分下荷内島灯台から124度400メートルの同島東岸に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は雨で風力2の北風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 A受審人は、乗揚の衝撃で目覚め、事後の措置にあたった。
 乗揚の結果、船首から船体中央にかけての船底に損傷を生じ、その後満潮期を待ってサルベージ船により引き降ろされ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、山口県屋代島南方沖合を西行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同県下荷内島東岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、山口県屋代島南方沖合を西行中、眠気を催した場合、居眠りに陥ることのないよう、努めて立って船橋内を動くなどして居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同人は、同航船を替わしたことから安心して気が緩み、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥ったまま進行して下荷内島東岸への乗揚を招き、船首から船体中央部にかけての船底に損傷を生じさせるに至った。





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