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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年那審第42号
件名

漁船幸福丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年2月20日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:幸福丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
シューピースを折損

原因
針路保持不十分

裁決主文

 本件乗揚は、針路の保持が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年4月24日11時30分
 沖縄県渡久地港北西方沖

2 船舶の要目
船種船名 漁船幸福丸
総トン数 4.9トン
登録長 11.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 264キロワット

3 事実の経過
 幸福丸は、FRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、シイラ引き縄漁の目的で、船首0.5メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成14年4月23日19時40分沖縄県渡久地港を発し、同県伊平屋島北西方沖の浮魚礁に至って操業し、翌24日07時00分帰途に就いた。
 ところで、備瀬埼灯台から182度(真方位、以下同じ。)1.75海里のところに、長さ約25メートル幅10メートルの潜堤式消波堤(以下「消波堤」という。)がほぼ北東方向に設置されており、消波堤の南西端には簡易標識灯(以下「標識灯」という。)が設置されていた。
 11時20分A受審人は、備瀬埼灯台から271度1.25海里の地点に達したとき、針路を151度に定め、機関を全速力前進にかけ、12.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 A受審人は、操舵室内右舷側で腰掛けて見張りにあたって続航し、11時29分半標識灯を船首少し左200メートルばかりに認めたとき、接岸時の潮汐を調べておこうと思い、両手を舵輪から離し、潮汐が記載されているカレンダーを見るため立ち上がった。そのとき、ズボンの左ポケットが舵輪に触れ、舵輪が左回転して左舵をとった状態となり、船首が左回頭を始めたが、潮汐を調べることに気を取られ、このことに気付かず、標識灯を目視して針路の保持を十分に行うことなく進行した。
 11時30分幸福丸は、備瀬埼灯台から189度1.75海里の地点において、船首が090度に向いたとき、原速力のまま、船尾が消波堤に乗り揚げた。
 当時、天候は雨で風力3の南西風が吹き、潮候はほぼ低潮時であった。
 乗揚の結果、シューピースに折損を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、渡久地港北西方沖において、同港に向けて航行する際、針路の保持が不十分で、消波堤に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、渡久地港北西方沖において、同港に向けて航行する場合、標識灯を目視して針路の保持を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、潮汐を調べることに気を取られ、針路の保持を十分に行わなかった職務上の過失により、潮汐が記載されているカレンダーを見るため立ち上がったとき、ズボンの左ポケットが舵輪に触れ、舵輪が左回転して左舵をとった状態となり、船首が左回頭を始めたことに気付かないまま消波堤に向けて進行し、乗揚を招き、シューピースに折損を生じさせた。





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