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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年函審第48号
件名

漁船第21亀宝丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年2月25日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(古川隆一、安藤周二、工藤民雄)

理事官
千手末年

受審人
A 職名:第21亀宝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底外板に破口等の損傷、のち解撒

原因
針路確認不十分

主文

 本件乗揚は、針路の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年6月23日00時15分
 北海道庶野漁港

2 船舶の要目
船種船名 漁船第21亀宝丸
総トン数 9.7トン
登録長 14.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 354キロワット

3 事実の経過
 第21亀宝丸(以下「亀宝丸」という。)は、つぶかご漁業に従事する船首船橋型FRP製漁船で、A受審人ほか4人が乗り組み、つぶかご400個を積み、操業の目的で、船首0.6メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成14年6月23日00時10分北海道庶野漁港内の庶野港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から009度(真方位、以下同じ。)350メートルの岸壁を発し、同漁港北東方沖合の漁場に向かった。
 ところで、亀宝丸は、自動操舵の針路を設定する際、操舵スタンドの磁気コンパス(以下「コンパス」という。)下部に位置する縦1センチメートル横2センチメートルの方位目盛盤を見て、針路設定つまみを左右に回して同盤中央の黒色指針に方位目盛を合わせるようになっていた。
 離岸後、A受審人は、単独で船橋当直に就き、機関を半速力前進にかけ、9.0ノットの対地速力で手動操舵により同漁港内を南下し、庶野港外東防波堤南端を通過して東方に向け、00時13分少し過ぎ西防波堤灯台から149度500メートルの地点に達したとき、南からのうねりを認め、しばらくの間110度の針路で自動操舵として航行することにした。
 ところが、A受審人は、機関を全速力前進に上げ、針路設定つまみを右に回し110度の方位目盛に定めたつもりで自動操舵に切り替えた後、意図した針路に定まるものと思い、コンパスの船首方位を確認するなど、針路を確認しなかったので、290度の方位目盛の針路に合わせたことに気付かず、当日が6箇月ごとの漁場変更日に当たっていたことから、出港作業を終えて船員室に入る前の甲板員と急ぎ漁ろう作業の打合わせをすることとし、操舵室後方の窓を開けて後方を向き、同人と打合わせを始めた。
 亀宝丸は、増速しながら右回頭を続け、00時14分わずか前西防波堤灯台から161度490メートルの地点に達したとき、右回頭を終えて針路290度、対地速力11.5ノットに定まり、庶野漁港南西方の陸岸に向首する状況になった。
 こうして、亀宝丸は、A受審人が依然として甲板員と打合わせを続け、そのまま進行中、00時15分少し前船尾にいた甲板員の後進にするようにとの大声を聞いて振り返り、前方に陸岸の明かりを認め、機関を後進にかけ、右舵をとってうねりに船尾を立てたところ、00時15分西防波堤灯台から215度390メートルの地点において、船首が北方を向いた状態で、浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力2の北北西風が吹き、潮候は高潮時にあたり、付近海域には南からの波高5メートルのうねりがあり、視界は良好であった。
 乗揚の結果、亀宝丸は、うねりにより北西方の陸岸付近の浅礁域に移動して西防波堤灯台から235度460メートルの地点の岩場に擱座し、僚船に救助を求めて全員が救助され、船底外板に破口等の損傷を生じて離礁できないまま解撤された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、北海道庶野漁港を漁場に向け出航中、自動操舵に切替え後の針路の確認が不十分で、同漁港南西方の陸岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、北海道庶野漁港を漁場に向け出航中、自動操舵に切り替えて航行する場合、意図した針路に定められるよう、切替え後のコンパスの船首方位を確認するなど、針路の確認を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、意図した針路に定まるものと思い、漁ろう作業の打合わせを続け、針路の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同漁港南西方の陸岸に向く針路に定めたことに気付かず、そのまま進行して陸岸近くの浅礁に乗り揚げる事態を招き、船底外板に破口等の損傷を生じて離礁できないまま解撤するに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。





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