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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年神審第105号
件名

プレジャーボートあらた3号乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年1月24日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(大本直宏)

理事官
加藤昌平

受審人
A 職名:あらた3号船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
船底中央部等に軽損、ケーソン上部の鉄筋に曲損

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年7月23日02時30分
 京都府舞鶴港

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートあらた3号
総トン数 2.8トン
全長 7.64メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 102キロワット

3 事実の経過
 あらた3号は、船外機推進のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人1人を乗せ、魚釣りの目的で、船首尾0.4メートルの等喫水をもって、平成14年7月22日17時ごろ、京都府舞鶴港第2区の定係地点を発し、同港北東方の冠島付近の釣場に至り、18時ごろから釣りを行い、たいなど15キログラムの釣果を獲て、翌23日01時30分ごろ帰途に就いた。
 ところで、舞鶴港第2区は、同港の南東部に位置し、同区南西部に海上自衛隊桟橋があって、同桟橋東方が桟橋延長の工事中で、同工事区域北東端の標識として、舞鶴港ミヨ埼灯台から172度(真方位、以下同じ。)2,650メートルの地点に、舞鶴港海上自衛隊桟橋A灯浮標(以下「舞鶴港海上自衛隊桟橋」を冠する灯浮標の冠称は略す。)が設置され、A灯浮標から262度200メートルにB灯浮標、A灯浮標から同方位400メートルにC灯浮標が設けられていた。
 また、海上自衛隊桟橋北東端から082度方向への桟橋延長線上約230メートルのうち、長さ約150メートルの東方部分には、ケーソンが設置済であった。
 これまでにA受審人は、定係地点へ向け100回を超える夜間の舞鶴港内航行経験を有し、海上自衛隊桟橋が工事中で、A、B及びC各灯浮標が設置されていること、いずれも緑色閃光を4秒間隔で発することなど、水路事情に精通しており、定係地点に向け左転する転針地点をA灯浮標から344度420メートル付近とし、船首目標にA灯浮標と市役所の明かりを用いて帰港していた。
 舞鶴港内を南下したA受審人は、その後東進中、02時24分半A灯浮標から336度1,950メートルの地点に達したとき、右舵少しをとりわずかな右回頭惰力をつけ、38キロメートル毎時の速力(対地速力、以下同じ。)となる機関回転数毎分4,500を少し落とし、31キロメートル毎時の速力で、手動操舵により進行した。
 その後、A受審人は、念仏鼻の離岸距離が約200メートルとなる右回頭模様で南下して定係地点に向かったが、慣れているので一見すれば大丈夫と思い、B、C両灯浮標と対比してA灯浮標を確かめるなど、船位の確認を十分に行わなかったので、02時28分少し過ぎ前示の転針地点を通過したことに気付かなかった。
 こうして、A受審人が、左舷船首方近くに一見したB灯浮標の緑色閃光をA灯浮標と思い左舵をとり、同閃光と重視した明かりを市役所の明かりと見違え、02時29分少し過ぎA灯浮標から322度310メートルの地点で、針路を179度として20キロメートル毎時の速力に減じて間もなく、あらた3号は、02時30分A灯浮標から234度230メートルの地点において、原針路原速力のまま、ケーソンに乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の末期で、視界は良好であった。
 乗揚の結果、船底中央部等に軽損を、ケーソン上部の鉄筋に曲損を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、京都府舞鶴港第2区において、定係地点に向け航行中、船位の確認が不十分で、桟橋延長工事中のケーソンに向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、京都府舞鶴港第2区において、南下して定係地点に向かう場合、左転する転針時機を失しないよう、B、C両灯浮標と対比してA灯浮標を確かめるなど、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、慣れているので一見すれば大丈夫と思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、転針地点を通過したことに気付かず、左舷船首方近くに一見したB灯浮標の緑色閃光をA灯浮標と思い左舵をとり、同閃光と重視した明かりを市役所の明かりと見違え、桟橋延長工事中のケーソンに向首進行して乗揚を招き、船底中央部等に軽損を、ケーソン上部の鉄筋に曲損を生じさせるに至った。





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