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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年神審第96号
件名

プレジャーボート青空丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年1月9日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(阿部能正)

副理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:青空丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
船底外板全般に擦過傷等

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年8月14日22時45分
 和歌山県田辺港南西岸沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート青空丸
全長 6.00メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 44キロワット

3 事実の経過
 青空丸は、船外機装備のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、同乗者1人を乗せ、魚釣りの目的で、船首1.2メートル船尾1.4メートルの喫水をもって、平成14年8月14日16時30分和歌山県田辺港の船着場を発し、同港南西方沖合の釣り場に向かった。
 A受審人は、四双島北岸沖合で釣りを行ったのち、これまで何回となく行ったことのある同島南岸沖合の釣り場でいさき釣りをすることとし、番所鼻と四双島間の狭い水道(以下「狭い水道」という。)を通航して、21時00分四双島灯台から176度(真方位、以下同じ。)450メートルの地点に到着し、錨泊して釣りを始めた。
 ところで、狭い水道は、東側の番所鼻から水道中央部に向かって250メートルばかりの険礁域が、同中央部付近には中瀬と呼ばれる浅礁域があり、また、西側の四双島は四双島灯台が設置されている北島(仮称)とその南島(仮称)とに分かれるが、両島の高さは北島の最高2.3メートル以外、約1.5メートルの平坦な岩場で、両島東側から水道中央部に向かって50ないし100メートルの浅礁域があり、可航幅が約180メートルであった。
 A受審人は、釣りを続けていたところ、小雨模様となったので、帰航することとし、22時43分半揚錨を終えたところ、雨の影響もあって南島の南岸付近を視認することができなかったが、釣り場に来るときも狭い水道を無難に通航できたし、接近すれば同島南岸を視認でき、南島東岸を接航すれば大丈夫と思い、浅礁に乗り揚げないよう、四双島の西側沖合に向け、安全な針路を適切に選定することなく、狭い水道に向けて発進した。
 こうして、A受審人は、発進時、船首が245度に向いていたので、少し右舵とし、機関を半速力前進にかけ、5.4ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で、ゆるやかに大きく右回頭中、22時45分わずか前四双島灯台から190度320メートルの地点で、左舷船首方に四双島灯台の灯光を認め、機関を全速力前進とし、8.1ノットに増速して間もなく、22時45分四双島灯台から187度290メートルの地点において、青空丸は、030度に向首して、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は小雨で風力1の北寄りの風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、船底外板全般に擦過傷を生じたほか、推進器翼に欠損及び曲損を生じ、来援した漁船に引き下ろされて発航地に曳航され、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、和歌山県四双島南岸沖合の釣り場から北上して田辺港に帰航する際、針路の選定が不適切で、安全な同島の西側沖合を航行しなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、和歌山県四双島南岸沖合の釣り場から北上して田辺港に帰航する場合、雨の影響もあって南島の南岸付近を視認することができなかったから、浅礁に乗り揚げないよう、四双島の西側沖合に向け、安全な針路を適切に選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、釣り場に来るときも狭い水道を無難に通航できたし、接近すれば南島南岸を視認でき、同島東岸を接航すれば大丈夫と思い、安全な針路を適切に選定しなかった職務上の過失により、狭い水道に向け進行して乗揚を招き、船底外板全般に擦過傷を、推進器翼に欠損及び曲損を生じさせるに至った。





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