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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年仙審第49号
件名

漁船第十八泉宝丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年1月15日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(上中拓治)

理事官
熊谷孝徳

受審人
A 職名:第十八泉宝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底外板及びキールに破口を伴う損傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年6月2日07時05分
 山形県鼠ヶ関港外

2 船舶の要目
船種船名 漁船第十八泉宝丸
総トン数 19トン
全長 22.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 508キロワット

3 事実の経過
 第十八泉宝丸は、FRP製漁船で、A受審人が弟と2人で乗り組み、いか釣り漁の目的で、船首0.9メートル船尾2.5メートルの喫水をもって、平成14年6月1日07時00分山形県鼠ヶ関港を発し、同港の北西方約50海里の鎌礁漁場で操業し、するめいか約3トンを漁獲したのち、翌02日02時00分鼠ヶ関灯台から309度(真方位、以下同じ。)50海里の地点で、帰途に就いた。
 ところで、A受審人は、同年5月6日に根拠地の青森県大間町を出港して以来、日本海側の港を基地として操業を続け、同月26日ごろからは鼠ヶ関港を水揚げ港とし、同港の西北西方の漁場へ片道約5時間かけて往復して操業を行っていたもので、連日弟と二人だけで、朝出港して夕方から深夜にかけて漁ろうに従事し、翌朝帰港する形の操業を繰り返していたことから、同月31日に1日だけ休業したものの、疲労が蓄積して睡眠不足気味であった。
 帰航開始後、A受審人は、船橋当直を弟と交替で行うこととし、先ず自ら当直にあたり、針路を鼠ヶ関港口のやや北側に向首する128度に定め、10.0ノットの対地速力で自動操舵により進行し、04時40分ごろ弟に当直を引き継ぎ、鼠ヶ関港に近くなったところで起こすように指示して、船橋後部の寝台で仮眠をとった。
 06時40分A受審人は、鼠ヶ関灯台から318度4.2海里の地点で、入港まで約30分である旨を告げられて起こされ、弟と交代して再び船橋当直を開始し、同じ針路及び速力で続航した。
 当直を引き継いだあと、A受審人は、普段のとおり弟に朝食の準備をさせることにして同人を降橋させ、自分は起きたばかりでまだ眠気を感じていたが、弟を船橋に呼び戻して見張りを手伝わせるなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった。
 A受審人は、しばらく僚船と無線交信を行ったあと、椅子に腰掛けて当直に従事していたところ、やがて居眠りに陥った。
 本船は、陸岸に向首したまま進行し、07時05分鼠ヶ関灯台から040度0.75海里の地点において、原針路、原速力のまま、鼠ヶ関港の入口近くに設置されている離岸堤に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力3の南西風が吹き、視界は良好であった。
 乗揚の結果、本船は球状船首の下部が脱落したほか、船底外板及びキールに破口を伴う損傷を生じ、機関室に浸水して主機ほか機器類の濡れ損を生じた。

(原因)
 本件乗揚は、鼠ヶ関港に入港すべく接近中、居眠り運航の防止措置が不十分で、当直者が居眠りに陥り、同港の入口近くに設置されている離岸堤に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、短時間の仮眠をとっただけで船橋当直に従事し、鼠ヶ関港に入港すべく接近中、連日の夜間操業により睡眠不足気味であったうえ、仮眠から覚めたばかりでまだ眠気を感じていた場合、30分後に入港の予定であったから、居眠り運航とならないよう、弟を昇橋させて2人で当直にあたるなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかし、同人は、弟には普段のとおり朝食の準備をさせようと思い、同人を昇橋させて2人で当直にあたるなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、椅子に腰掛けて自動操舵で当直中、居眠りに陥り、同港の入口近くに設置されている離岸堤に向首したまま進行して乗揚を招き、球状船首の下部を脱落させたほか、船底外板及びキールに破口を伴う損傷を生じさせ、機関室に浸水して主機ほか機器類の濡れ損を生じさせるに至った。





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