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2001/02/22 朝日新聞朝刊
河川行政問う好機に 脱ダム宣言(社説)
ボールは突然、投げられた。長野県の田中康夫知事が、県の計画でまだ本体工事に入っていない七カ所のダム建設を原則中止する方針を打ち出したのである。
「脱ダム宣言」。発表文の表題は大胆だ。
「できる限り、ダムを造るべきではない」という基本理念を示し、すでに現地を踏んでいる一カ所について中止を明言し、他の六カ所については「現場を見て、理念に基づいて判断する」という。
昨年十月の知事選のときから公共事業の見直しを公約に掲げてきた。ダムの中止はその一環だ。近年は各地でダム事業が止まっているが、多くは時間の経過をものさしにした第三者機関などの「時のアセスメント(評価)」による。今回のようなトップダウンは異例のことである。
事前に相談されなかった市町村には驚きや戸惑いがある。事業費の半分を補助する政府側は、扇千景国土交通相が「何でもやめればいいというものではない」と反論した。
確かに一つひとつの事業について、きめ細かく検討することが必要だ。ダム建設の代わりに新たな治水、利水策を模索するというが、どんな代替案があるか関係部局で十分に練り、具体的な選択肢を提示する。それが知事の責任というものだろう。
県土木部長は発表の中身を直前まで知らなかったというが、本当ならいただけない。そんな「田中流」は反発やわだかまりを生むだけだ。論議の舞台はこれから県議会に移る。提案の是非、代替策の有無など論戦を挑んでもらいたい。
だがボールの投げ方はともかく、その問題提起は軽んじるべきではないと思う。
治水や利水で、私たちはダムの恩恵を受けてきた。けれど、ダムは多額の税金を使い、自然を大きく傷つける。それだけに、ダム事業は利益と損失をはかりにかけ、必要度を十分に吟味しなければならない。
ダム推進派は治水効果を強調するが、最近はその限界を指摘する声も少なくない。昨年末の河川審議会の答申は、代替案の積極的採用を求めた。森林保全や流域の緑地、田畑に洪水をあふれさせる方法などだ。
環境を大事にする意識は格段に高まった。世界銀行が非政府組織(NGO)と一緒につくった「世界ダム委員会」は、昨秋の報告書で環境保全を前面に出し、ダム建設に慎重な姿勢を示した。
「巨大ダム建設の時代は終わる」
米国のダム建設機関、開拓局の総裁だったダニエル・ビアード氏が東京でそう講演してから六年がたつ。その米国では、ダムを壊す動きまである。
日本はといえば、いったん手をつけた公共事業は止まらないという体質がなかなか変わらない。熊本県の川辺川ダムは、農業用水確保の目的が薄らぎ、治水にも疑問が出ていながら、着工されようとしている。
「脱ダム宣言」をとっぴな考えとせず、日本の河川行政を問い直す好機ととらえたい。長野に限らず、全国で治水、利水のよりよい方策を探ることこそ大事だ。
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